【雇用保険法】労働政策審議会での審議~雇用保険料率、助成金等の動向~

税金・社会保険・労働関係

こんばんは、kanariyaです。

本日は、雇用保険法における保険料率及び助成金について少しだけ触れていきたいと思います。

まず助成金というのは、雇用保険法の中でどのような扱いだったかというと、雇用保険二事業という位置づけでしたね。まだご覧になっていない方はこちらからご覧ください。

そして、現在、厚生労働省は新型コロナウイルスの影響による失業率の増加を抑止するため、雇用調整助成金の特例を延長しているのが現状です。

しかし、財源というものは限りがあるものでして、なくなった分はどうするの?というところで雇用保険料率が増加する可能性があることは過去の記事で触れました。

厚生労働省は9月8日、労働政策審議会安定分科会雇用保険部会を開き、雇用保険制度等の見直しに向けた審議をしました。主な論点は、制度の財政運営や、新型コロナウイルス感染症への対応、令和3年度末で期限を迎える暫定措置のあり方などです。厚生労働省は年末を目途に審議をまとめ、来年の通常国会に雇用保険法等の改正法案を提出する方針です。

ここで労使が一致して強く要請しているのが国庫負担の見直しです。雇用保険における国庫負担は平成19年度から暫定的に法律の規定の100分の55の水準まで引き下げられており、加えて平成29年度から令和3年度までの間は、時限的に同100分の10まで引き下げられています。

ご存じの通り、現在もコロナ禍による影響で雇用を支えてきた雇用調整助成金等の支給が増加していることで雇用保険財政が厳しくなる中、労使ともに暫定措置の廃止を求めています。

また、雇用調整助成金の特例の延長が続く中で財源の確保も課題とされています。主たる財源であった雇用保険二事業の資金は令和2年度で枯渇し、雇用保険本体の積立金から1.6兆円を借り入れしている状況です。その積立金も最大6.4兆円近くあった残高が令和3年度に推定4,039億円まで減少する見通しです。労使ともに保険料で対応する範囲を超えているとして、全額国庫負担での対応を求めています。

また、雇用保険料率は、これまで財政状況による弾力条項が適用され、失業等給付及び雇用保険二事業の料率が引き下げられていましたが、現状の財政状況では弾力条項による引き下げは適用されません。加えて、失業等給付の料率を時限的に引き下げていた暫定措置も令和3年度で終了するので、令和4年度の保険料率は法改正がない限り、一般の事業で1.55%(事業主負担0.95%、被保険者負担0.6%)となる見通しです。使用者側は、弾力条項による引き上げ以外は認めないと強く要望しています。労働者側も国庫負担割合引き上げによる財源確保が先決であり、そうした対応をせずに保険料率を引き上げることは容認できないと主張しています。

他方、給付に関する暫定措置に関しては、有期労働契約が更新されなかったことによる離職者の所定給付日数を手厚くする措置や、職場で新型コロナの感染者が発生したこと等を理由とする離職者を特定受給資格者として扱う措置などが令和3年度で終了する予定です。意見交換では、コロナ禍で引き続き雇用情勢が厳しいことから、延長を容認する意見も出されています。

このような労働政策審議会で雇用保険について大きな動きがありそうなのですが、キャリアアップ助成金にも影響が出そうな状況なのです。令和4年度の厚生労働省予算の概算要求では、キャリアアップ助成金は令和3年度の予算から約170億円減額の569億円を要求し、助成対象の重点化を図る動きが見られます。主に、正社員コースは「有期」から「無期」に転換する場合を助成対象から廃止し、正社員待遇を受ける労働者に転換した場合に絞り込む予定です。有期雇用労働者等に対し、正社員と共通の諸手当制度を設けた事業主を助成する諸手当制度等共通化コースは、同一労働同一賃金に係る裁判例の動向を踏まえ、賞与及び退職金等に限定、名称も「賞与・退職金制度コース」(仮称)と変更する予定です。これは、昨年10月の最高裁の判例をもとに動いているはずですが、次回その内容を少し紹介したいと思います。

いずれにしても、雇用調整助成金やキャリアアップ助成金を資金源としてきた事業主にとっては向かい風になってきてはいますが、終身雇用制の廃止などで雇用環境が変化する中で、雇用保険分野も大きく変更していく流れになるでしょう。

次回以降、同一労働同一賃金について少し取扱いたいと思っています。

それでは本日もご覧いただきましてありがとうございました。

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