【判例】同一労働同一賃金の動向①~総論~

税金・社会保険・労働関係

こんばんは、kanariyaです。

今回は前回の記事で取り上げた同一労働同一賃金について解説していきます。同一労働同一賃金は近年、労働法の世界では大きく取り上げられている分野でもあります。ちょうど一年前ほどになるのですが、2020年10月に相次いで最高裁の判例が出ていることもあり、ニュース等で知っている方も多いと思います。

スポンサーリンク

同一労働同一賃金とは

まず、同一労働同一賃金の原則は、「同じ企業の中で、勤務内容や責任の範囲、負担などがまったく同じであれば、雇用形態に相違があっても同じ賃金や待遇としなければならない」ということです。
すなわち、正規雇用労働者と非正規雇用労働者(パート、アルバイト、派遣社員等)で不合理な待遇があってはならないということになります。

パートタイム労働者や有期雇用労働者の数は増加傾向にありますが、その原因は少子高齢化の進行にともない労働力人口が減少していることにあります。直近では、パートタイム労働者は雇用者全体の約3割、有期雇用労働者は雇用全体の4分の1程度を占めています。パートタイム労働者及び有期雇用労働者の内訳をみると、約6~7割を女性が占め、約2割を 65 歳以上の高齢者が占めています。一方で、若年者や就職氷河期世代のほか、世帯主のパートタイム労働者、有期雇用労働者もみられるなど、近年特に多様化しています。パートタイム労働や有期雇用労働は、育児や介護などの様々な事情により働く時間に制約のある労働者をはじめ多様なニーズや事情を抱えた労働者が従事しやすい一方、正社員として働く機会を得られずやむなくパートタイム労働者や有期雇用労働者として働いている方も一定程度おられます。また必ずしもパートタイム労働者や有期雇用労働者の働きや貢献に見合った待遇が確保されているとはいえない状況もあります。国は、パートタイム・有期雇用労働法(「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)は、こうした問題を解消し、パートタイム労働者や有期雇用労働者がその能力を一層有効に発揮することができる雇用環境を整備するとともに、多様な雇用形態・就業形態で働く人々がそれぞれの意欲や能力を十分に発揮し、その働きや貢献に応じた待遇を得ることのできる「公正な待遇の実現」を目指しています。
(※ちなみに2020年4月の改正法施行により法の対象となる労働者の範囲を拡大したことから、題名を短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律から短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律に変更しています。)

不合理な待遇の禁止

正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇差が不合理な待遇の禁止といえるか否かは、 以下の要素を考慮して判断することとされています(パートタイム・有期雇用労働法第8条)

  1. 業務内容及び当該業務に伴う責任の程度
  2. 職務の内容及び配置の変更の範囲
  3. その他の事情

    <パートタイム・有期雇用労働法 第8条>
    事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、 当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の 業務の内容及び 当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、 当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。
    なお、同8条は旧労働契約法20条を根拠に改正されました。
    <旧労働契約法 第20条>
    有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない 労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、 当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び 当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

なお、旧労働契約法第20条について、厚生労働省は平成24年12月時点では以下のような解釈をしていました。
・「労働条件」:賃金や労働時間等の狭義の労働条件のみならず、労働契約の内容となっている災害補償、服務規律、教育訓練、付随義務、福利厚生等労働者に対する一切の待遇を包含するものです。
・「同一の使用者」:労働契約を締結する法律上の主体が同一であることをいうものであり、したがって、事業場単位ではなく、労働契約締結の法律上の主体が法人であれば法人単位で、個人事業主であれば当該個人事業主単位で判断されるものです。
・「労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」:労働者が従事している業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度を、「当該職務の内容及び配置の変更の範囲」は、今後の見込みも含め、転勤、昇進といった人事異動や本人の役割の変化等(配置の変更を伴わない職務の内容の変更を含みます。)の有無や範囲を指すものです。
・「その他の事情」:合理的な労使の慣行などの諸事情が想定されるものです。例えば、定年後に有期労働契約で継続雇用された労働者の労働条件が定年前の他の無期契約労働者の労働条件と相違することについては、定年の前後で職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲等が変更されることが一般的であることを考慮すれば、特段の事情がない限り不合理と認められないと解されるものです。

同一労働同一賃金ガイドラインの概要

現在、厚生労働省は同一労働同一賃金ガイドライン(厚生労働省告示第430号)を公表しています。このガイドラインが、2020年4月1日から(中小事業主については、2021年4月1日から)適用されています。このガイドラインは、「正社員と非正規雇用労働者との間で、いかなる待遇差が不合理なものであり、 いかなる待遇差は不合理なものでないのか、原則となる考え方と具体例を示したもの」です。
厚生労働省が示したものは簡単に分類すると以下の通りになります。

  1. 基本給
  2. 賞与
  3. 各種手当
  4. 福利厚生・教育訓練

不合理と判断された場合は?

主にこのガイドラインをもとに裁判所も合理性の可否を判断しています。不合理と判断された労働条件についてはその部分については無効となり、不法行為として損害賠償請求の対象にもなり得ます。ですので、新しく労働者を非正規雇用として採用する場合には慎重に契約を締結するべきです。国は、非正規雇用労働者の待遇改善を行う事業主の方を対象とするキャリアアップ助成金を用意しています。

次回は、各裁判例について見ていきたいと思います。

それでは本日もご覧いただきましてありがとうございました。

参考

同一労働同一賃金ガイドライン同一労働同一賃金特集ページ

コメント

タイトルとURLをコピーしました