【働き方改革】改革の背景(フェーズⅠおさらい)

働き方改革

そもそも働き方改革とは何のための取り組みなのかを理解している人はどのくらいいるでしょうか。耳では聞いたことがあるけれど、うまく説明できる自信がないという方はご安心ください。今回は簡単な内容になっていますので最後まで是非ご覧ください。

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働き方改革とは(前提)

働き方改革とは、「働く人々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会」を実現するための改革のことで、「一億総活躍社会」に向けた取り組みでもあります。「一億総活躍社会」について政府は以下のような社会と位置付けています。

  • 若者も高齢者も、女性も男性も、障害や難病のある方々も、一度失敗を経験した人も、みんなが包摂され活躍できる社会
  • 一人ひとりが、個性と多様性を尊重され、家庭で、地域で、職場で、それぞれの希望がかない、それぞれの能力を発揮でき、それぞれが生きがいを感じることができる社会
  • 強い経済の実現に向けた取組を通じて得られる成長の果実によって、子育て支援や社会保障の基盤を強化し、それが更に経済を強くするという『成長と分配の好循環』を生み出していく新たな経済社会システム

参考:内閣官房内閣広報室ホームページ 一億総活躍社会の実現

政府によるこの改革案の背景には主に次の2つが深く関係しています。

少子高齢化による生産年齢人口の減少

これについてはかねてから日本だけでなく世界中の喫緊の課題でもあります。日本国内の生産年齢人口(15歳以上65歳未満の人口のこと)は、1995年の国勢調査における8,726万人をピークに、年々減少を続けています。2029年には生産年齢人口が7,000万人を下回り、2065年には4,500万人ほどにまで減少すると推測されています。日本の労働力の主力となる生産年齢人口が今後ますます減少するとの見通しから、日本全体の生産力および国力の低下が懸念され働き方改革の必要性が高まっているのです。

育児や介護との両立など働き方の多様化

今までの日本の家族構成は、男性は外で働きに出て女性は家庭を守るというのが一般的でした。わかりやすくいえばサザエさんの磯野家、フグ田家のような家庭環境でしょうか。
しかし、現在の日本では共働き世代や単身世帯が増加しています。1997年に共働き世帯の数が専業主婦世帯の数を逆転して以来、共働き世帯の数と専業主婦世帯の数は年々その差を広げています。女性の社会進出などの影響で共働きの世帯が増えました。結婚しても出産したらすぐに社会復帰する女性が増えたり、結婚しても子供を授からないで共に働き続けるスタイルが主流になっていきました。
また、自分の親と同居せずに世帯を分けるなどの家庭環境にも変化が見られました。今までは自分の親の老後の面倒は子供が看るものだという考え方の変化が顕著になっていった時代でもあります。その影響を受けて、1997年には介護保険法が施行されています。

働き方改革の背景は少子高齢化と家庭環境の変化が深く関係している

2016年9月に「働き方改革実現会議」が設置され、2017年3月には9分野における具体的な方向性を示した「働き方改革実行計画」がまとめられました。
そして、2018年6月には「働き方改革法案」が成立、2019年4月から「働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」が順次施行されています。
このように、働き方改革は政府主導による国全体の取り組みであり、企業や働く人々そして社会全体の今後に関わる重大な挑戦ともいえます。

働き方改革実行計画における9分野

「働き方改革実行計画」における9つの分野について簡単にピックアップすると以下の通りになります。

①長時間労働の是正
②正規労働者と非正規雇用労働者の格差・処遇の改善
③高年齢者の就業の促進
④賃金の引上げと労働生産性向上
⑤柔軟な働き方を可能とする職場環境の整備
⑥仕事と育児・介護との両立、障碍者の就労の促進
⑦外国人労働者の活用
⑧若者や女性が活躍しやすい就労環境の整備
⑨キャリアチェンジ・再就職支援・企業における人材育成、社内教育

この中で特に重要なもの3つ(①、②及び③)について見ていきたいと思います。

長時間労働の是正

労務管理上、わが国で一番問題視されていることが「労働時間」に関することです。日本も景気がいいころは労働者側も喜んで残業をしていました。しかも当時は完全週休二日制も浸透しておらず、土曜日も出勤したり、半日だけ出勤したりするいわゆる半ドンなどが当たり前ではありました。

ただそれは、働いた分だけ賃金として還元されてきたからこそ成り立っていたものです。今はどうでしょうか。時間外労働をしても賃金が支払われない状態です。「サービス残業」という言葉が生まれる始末です。これは決して時間管理にルーズな会社が増えたというわけではなく、労働者が退勤の打刻をした上で働かせているという慣行が横行しているためです。

ここで政府は、時間外・休日労働に関する協定(36協定)に関し一般条項の場合、月45時間、年360時間まで、特別条項の場合、月100時間未満、2~6ヵ月平均80時間以内、年720時間以内、月45時間を超える月は6回までと上限規制を設け、違反した場合、6ヵ月以内の懲役または30万円以下の罰金という罰則を設けました。

正規労働者と非正規雇用労働者の格差・処遇の改善

日本国内における正規労働者と非正規労働者の賃金格差は、欧米諸国の水準と比較し大きいと言われています。職務内容は同じなのに賃金は別々、年齢が上というだけで職務に違いがあるといった不合理な取扱いは、労働者の就労意欲や生産性の低下を引き起こします。

雇用形態や年齢等にかかわらず、一人ひとりの労働者の評価をきちんとしていかなければならない状況にきているということです。

わが国の雇用体系についてはこちらの記事について触れていますのでよろしければご参考ください。

高年齢者の就業の促進

世界的に見ても平均寿命は年々伸びの傾向にあります。これは医療の発展によるものが大きいとされていますが、わが国も例外ではありません。

男性、女性ともに平均寿命が80歳を超えており、2050年には団塊の世代が65歳を迎え、生産年齢人口の現在の定義から外れることになります。65歳を迎えてから約20年以上公的年金だけで生活していけるのかという問題と、現在の公的年金を支えている現役世代の負担を考慮すると、年齢だけで区別するのではなく働けるうちは働いていただきましょうというのが政府のスタンスです。

そのために雇用保険法において法改正が行われており、本年1月から施行しています。

この法改正は高年齢に限定していますが、副業・兼業者にも導入するかどうか、現在政府の間で検討が行われているところです。

ちゃんと説明しきれなていないところもありますが、「働き方改革」という言葉が誕生した背景が少しでも伝わっていただけたら何よりです。

この改革自体がかなり長期的な問題に取り組んでおり、現在はさらに次の段階へと議論が進んでいるところです。(フェーズⅡへと続いていきます。)

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