【働き方改革】フリーランスの法的保護について(政府が掲げる働き方③)

働き方改革
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フリーランスとは

フリーランスとは、会社や団体などに所属せず仕事に応じて自由に契約する人のことです。中世ヨーロッパで、契約により有力者に仕えた騎士をフリーランス(当時の武器は槍=lanceでした)と呼んだことからきているという説もあります。ここではフリーランス=個人事業主として話を進めていきます。

フリーランスの働き方における課題

フリーランスにはライターやカメラマン、デザイナー、プログラマーなどオフィスにいなくても(オフィスがなくても)仕事道具さえ整っていれば、場所や時間帯を問わず働くことができる職種の方が多く近年でも注目されている働き方になります。自分の才能や知恵などをうまく駆使して仕事をしている人に向いていると言えるでしょう。

しかし、法律での保護の観点からはまだ議題にあがったという段階にすぎず、今後の課題が山積している状態といえます。

フリーランスは他のテレワークや副業・兼業などとは違い、労働基準法をはじめ労働安全衛生法、労災保険法、労働組合法などの「労働者」にあたらず、また最低賃金法も適用されません。
そして原則として社会保険の対象外とされているため、健康保険法、厚生年金保険法上の「被保険者」にも該当しないため、国からのインフラは国民年金と国民健康保険によってカバーされているだけの状況です。

しかし、デジタル化が進み働き方の多様化から、業務委託契約ではあるけれども労働者としての働き方に近い人も増えています。
労働関係諸法令の観点からしても労働法を適用すべきフリーランスも出始めているのではないかという声もあがっています。
また完全なフリーランスの人においても、労働法のすべてとはいかないけれど○○の部分は適用するといういわゆる部分的な適用を認めるべきという動きもあり判例や労働法の改正も進み始めています。

そこで2021年3月、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の連名で「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を策定されました。

経済法の観点から

公正取引委員会が関わっているのが少しポイントになります。独占禁止法や下請法などの経済法の観点から、元請事業主の優越的地位の濫用として下請(フリーランス側)に対して不利な取扱いをしてはならないというものがガイドラインに含まれているためです。
優越的地位の濫用とは、取引事業者がフリーランスに書面を契約しないまたは不十分な契約書面を交付すること、不当に取引条件の一方的変更、報酬の未払い、支払遅延、減額等をいいます。
これらの行為は独占禁止法及び下請法上不適切であることをガイドライン上で明確化しています。

労働法の観点から

労働法についてはあまり進んでおらず、各法律上の「労働者」の定義にあたる場合にはその労働法を適用するよう改めて確認してくださいというだけに留まっています。
ただガイドラインには「労働者」という概念について残念ながら触れられていないのが現状です。「労働者」、「フリーランス」という名称だけでなく、労働契約関係にはないけれど実態として労働者性の有無を判断するという姿勢は変わっていないため、それぞれのケースにおいて対応せざるを得ず、判例法理などで今後対応していくということになるのだろうと思います。

労災保険法の観点から

労災保険は原則として労働基準法上の労働者と同じとされているためフリーランスに対しても適用はありません。ただ、労災保険法には特別加入制度というものがあり、労働者以外にも一定の条件を満たすことで労災保険に加入できることができます。

現在、フリーランスにも特別加入できるようにするべきとの動きがあります。ただ、労災保険は全額事業主の負担になっており労働者の負担はありませんが、特別加入制度の場合には給付基礎日額×労災保険料率(業種による)をかけた額となり、全額がフリーランスの自己負担となってしまいます。この部分については保険料の仕組みから改正の可能性がありそうです。

今後の見通し

フリーランスにおける労働法の保護については現段階において必ずしも十分に整っていないと言わざるを得ません。
現在、政府はフリーランス保護新法(仮)を制定しようという動きが国会等においても出てきており、
2021年11月8日「新しい資本主義実現会議」(第2回)において、岸田文雄首相は「フリーランスの方々が安心して働ける環境を整備するため、事業者がフリーランスと契約する際の契約の明確化など、フリーランス保護のための新法を制定いたします。」と明言しました。

しかし、一方で公正取引委員会サイトに掲載されている「令和3年11月17日付 事務総長定例会見記録」には、公正取引委員会事務総長は「フリーランス保護のための新法ということについては、今、内閣官房を中心に、関係省庁で検討が進められているというところと聞いておりまして、関係省庁の1つとして、公正取引委員会が入っているわけですけれども、まだ、現在検討中なので、その内容やスケジュールはまだ見通せるものがないというか申し上げられることは今のところないというふうに聞いております。」と発言しています。

2021年12月6日に行われた「岸田文雄首相所信表明演説全文」を見てみると、フリーランス保護新法どころかフリーランスのフの字も見当たりません。
現在は新型コロナウイルス対策や経済活動の活性化が喫緊の課題ですから仕方のないことなのかもしれませんが。

このような現状ですから、この新法に労働者保護保護の規定が盛り込まれるかどうかは不明です。

企業側としては政府の対応や法律改正を待ってから経営対策をしていっても手遅れになってしまうので、現在働き方改革がどのように進んでいっているのかを理解し、自社の経営方針に沿って体制をどのように整えていくべきか、またどのようなことが必要になっていくのかを考えることが今後の私たちにとっての課題になっていくのかと思います。

参考

フリーランスとして安心して働ける環境を 整備するためのガイドライン
新しい資本主義実現会議(第2回)資料2
令和3年11月17日付 事務総長定例会見記録(公正取引委員会ホームページ)
岸田文雄首相所信表明演説全文

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