【健康保険法】任意継続被保険者制度の見直し(2022.1~)

税金・社会保険・労働関係

こんばんは、Kanariyaです。

本日は、勤労感謝の日ということでお休みの方も多いかと思います。
今年は東京オリンピックの影響で10月にあったスポーツの日が8月にスライドしたため、10月は祝日はなかったんですよね。なので久しぶりに平日休みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ちなみに私の手帳は10月11日の月曜日がスポーツの日のままです。

ということで(?)本日は比較的軽めな法改正(健康保険法)を一つ紹介したいと思います。メインの傷病手当金の法改正はこちらをどうぞ。
※このブログで健康保険をテーマとして扱う場合、原則協会けんぽ(全国健康保険協会)を前提お話ししますのでよろしくお願いいたします。

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任意継続被保険者とは?

任意継続被保険者とは健康保険法第3条第4項に基づく制度で、被保険者が退職等によって被保険者の資格を喪失した後であっても任意的に被保険者の資格を継続することを例外的に認めている者のことを言います。健康保険法の話なので、国民年金、厚生年金保険は関係ありません。

わが国は国民皆保険ですので、資格を喪失した後はなんかしらの公的医療保険に加入する必要があります。
一般的なのは、お住まいの市区町村が保険者となっている国民健康保険に加入することが多いかなという印象です。あとは、配偶者がいて扶養に入る場合もあります。

任意継続被保険者になるための要件

仮に退職をして自動的に任意継続被保険者になれるのかというとそんなことはありません。あくまで「任意」ですからこちらから手続きをしなければなりません。そして以下の要件を全て満たしていることが条件となります。(第3条第4項各号)

  1. 適用事業所に使用されなくなったため、(略)資格を喪失した者。
  2. その喪失の日の前日まで継続して2月以上被保険者(日雇特例被保険者、任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)であった者。
  3. 船員保険の被保険者でない者。
  4. 後期高齢者医療保険の被保険者等でない者。

に加え、被保険者の資格を喪失した日から20日以内にしなければなりません。(法第37条第1項)

実務ではこの20日縛りが結構厳しくて、1日でも遅れるとアウトと言われることが多いです。なので、人事を担当されている方は早めに資格喪失の手続をすることをオススメします。一応、正当な理由があれば経過後も受理することができるとなっているのですが、法律の不知は正当な理由に当たらないとされている判例まであります。(最高裁判例昭和36年2月24日)

ちなみに、上記要件を満たした場合には被保険者の資格を喪失した日に任意継続被保険者の資格を取得します。(申出が受理された日ではないことに要注意。)

任意継続被保険者の資格喪失の要件


任意継続被保険者は次の1~3のいずれかに該当するに至ったときはその日の翌日から、4~6のいずれかに該当するに至ったときは、その日から被保険者の資格を喪失します。 (第38条)

  1. 任意継続被保険者となった日から起算して2年を経過したとき
  2. 死亡したとき
  3. 保険料(初めて納付すべき保険料を除く。)を納付期日までに納付しなかったとき。(納付の遅延について正当な理由があると認めたときを除く。)
  4. 被保険者となったとき
  5. 船員保険の被保険者となったとき
  6. 後期高齢者医療の被保険者となったとき

4~6は二重加入を防止するため、任意継続より優先すべきとの理由でその日喪失となっています。
4の被保険者となったときとは、再就職して協会けんぽや健保組合に加入した場合がこれにあたります。
また、3のカッコ書きは、初めて納付すべき保険料を納付しなかった場合は最初から任意継続被保険者にならなかったものとみなすためです。 (第37条第2項各号) ちなみに任意継続被保険者はすでに退職をしているわけですから保険料については会社との折半はなく、全額自己負担になります。(法第161条)

ここで注目してほしいのですが、上記の喪失の要件に「資格の喪失の申出をしたとき」とか「被扶養者となったとき(例えば任意継続被保険者の間に結婚して配偶者の被扶養者となったケース)」とかないですよね?

ここが法改正項目なのですが、任意継続被保険者は上記6項目のいずれかに該当しない限り任意に資格を喪失することができなかったのです。なので、どうしても資格を喪失したい場合は3の保険料を納付しなかったときの要件を利用してあえて保険料を納付しないことで喪失するしかありませんでした。(かなりグレーですが。)

そこで、今回の法改正で、任意継続被保険者の任意脱退を認めることになりました。
なお、任意脱退を希望する旨を保険者に申し出た場合、申出受理日の属する月の翌月1日にその資格を喪失するとされています。

そもそも任意継続被保険者って何のために必要なの?

これは実務でもよく聞かれることです。任意継続被保険者のメリットってなにってやつですね。
メリットというとなかなか言いにくいのですが、保険料の観点から任意継続被保険者の方が節税対策になる場合があります。

法第47条を見てみると、任意継続被保険者の標準報酬月額については、次の1または2に掲げる額のうちいずれか少ない額をもって、その者の標準報酬月額とすることとされているとあり、

  1. 任意継続被保険者が被保険者の資格を喪失したときの標準報酬月額
  2. 前年(1月から3月までの標準報酬月額については、前々年)の9月30日における当該任意継続被保険者の属する保険者が管掌する全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額(健康保険組合が当該平均した額の範囲内においてその規約で定めた額があるときは当該規約で定めた額)を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額

となっています。(2については表現がややこしいですが、9月30日時点の平均標準報酬月額と思ってください。ちなみに協会けんぽの場合、令和3年度は30万円です。)

ですので、退職時の標準報酬月額が98万円だった方は、上限が30万円ですので任意継続被保険者の方が保険料的にお得になるケースはあります。もちろん退職時の標準報酬月額が9万8000円の方はその等級の保険料でOKです。

任意継続被保険者の法改正は何度か行われているのですが、確か平成30年くらいの法改正でこの上限が設けられたんですよね。なので、標準報酬月額が高い人は任意継続被保険者になっても保険料が多く発生してしまうことになりました。健康保険の保険料は厚生年金保険と違って保険料に応じて受けられる給付内容は変わりません。標準報酬月額が高い人が低い人より効く薬をもらったり、ワクチン接種が優遇されることはありませんよね?そもそも保険医療機関、保険薬局を利用しなければ掛け捨てですし。
また、傷病手当金、出産手当金などは標準報酬月額に応じて1日に受け取れる額に影響しますが、任意継続被保険者はそもそもこの二つの給付を受けることができませんからね。

あとは、被扶養者がいる場合は保険料がお得になるケースがあったり、所属していた保険者(主に組合)のサービスを受けることができたりすることでしょうか。

終わりに

本日は任意継続被保険者の法改正について、そもそも任意継続被保険者ってなんなの?から説明しました。実務では任継っていうことが多いです。(今回はあえて最後まで言いませんでしたが、今日だけで何回「任意継続被保険者」って打ったんだろう^^;以後「任継」とします。)

あとは、社労士受験生は任継についてはしっかりと抑えた方がいいかなと思います。任継自体はそんなにボリュームは多くないのですが、今回は法改正もありますし、なんか毎年出題されているイメージがありますので。ただ法改正がその年の試験に出ることは少ないのがこの試験でもありますが。
上記では太字にしておきましたが、被保険者期間2か月以上20日以内に手続、最大2年間とやたら2が登場するのでここだけでも覚えてくださいね。ここの変更はありませんので。

それでは本日もご覧いただきましてありがとうございました。

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