【平均賃金】日本の賃金はなぜ上がらないのか?(後編)

税金・社会保険・労働関係

こんばんは、kanariyaです。

本日は、前回の続きになります。まだ読んでない方はこちらからご覧ください。
今回はすぐ本題に入りたいと思います。

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終戦後の雇用形態からの変化

前回でも少し触れましたが、わが国では戦争中から戦後にかけて終身雇用制、年功序列制、(+企業内労働組合)がありました。労働者にとってはある程度は雇用の確保がされており、それなりに安心して生活できるような仕組みが浸透していました。この体系がバブル崩壊後の1990年代から成果主義と採用する企業が増えたことにより少しずつ変化の兆しを見せ始めます。この成果主義によって企業で成果の出せなかった人が非正規労働者となり、わが国の雇用情勢を変化させました。また同時に労働組合の組織率も減少し始めました。
また、政界の経済を大きく混乱させたのが2000年代後半に発生したサブプライムローン問題やリーマンショックです。この出来事は日本にも大きな影響を及ぼしたのは記憶に新しいと思います。
消費・需要を減退させ、企業はモノが売れるように物価を下落させます。そうするとモノは売れるが収益は減少します。そのため、モノではなくヒトに着目して、賃金を下げたり、あるいは、労働者を解雇しようとします。労働者側は解雇されたときのために消費を抑え、貯蓄にまわすようになります。このような悪循環が日本経済どんどん縮小してしまうようになりました。
その結果、企業は必要最低限の正規労働者だけを残し、その他の人員をいつでも解雇できる非正規労働者として採用しながら会社を運営し、景気の変動に合わせて非正規労働者を増減させるようにさせました。

労働者派遣法の改正

労働者派遣法は1986年に施行されたもので幾度も改正が行われており、人事労務担当者を悩ませる法律としても有名です^^;
労働者派遣法は、もともとは労働基準法第6条で中間搾取(いわゆるピンハネ)の禁止が定められており、その規制を緩和する意味で制定されたのです。
労働者派遣法の制定当初は、あくまで専門的な知識や技能を有する13業務を限定とし(施行と同時に16業務へ変更)、直接雇用の労働者が派遣労働者に置き換えられることがないように非常に限定された業務が対象とされ派遣期間の上限も1年間でした。
しかし1999 年の改正では対象業務の範囲が、限定される業務をあらかじめ明記しておくこと(ポジティブリスト方式)から、労働者派遣が禁止された業務を明記すること(ネガティブリスト方式)に変わりました。つまり、禁止された業務を除いては原則として派遣を行うことができるようになり、労働者派遣できる業務が大きく広げる結果となったのです。
その後も紹介予定派遣制の導入や、派遣可能期間の延長などが改正され、上記リーマンショック時には「派遣切り」や「派遣村」といった言葉が話題となりました。

労働者派遣法は、派遣先(派遣を受け入れる企業)からしてみれば「労働者」ではなく「労働力」にすぎません。これは制定当時から自社で採用するほどではないけど、ピンポイントで専門業務を行ってほしいという場面を想定して制定されていたためです。
派遣先企業からしてみれば、社会保険料等の負担はありませんし労働者にかかる費用は派遣元(労働者を派遣先へ送り出す側)の負担となるため、都合がいい制度になりました。(あくまで労働者と労働契約を交わしているのではなく、派遣元と労働者派遣契約を交わしているためです。)

非正規労働者の動向

ここまでは、日本の雇用のシステムが変わり、非正規労働者が多くなっている背景を説明しました。次に2020年時点での就業者数を数字で確認してみましょう。就業者数は6,667万人であり、役員を除く雇用者5,620万人となっています。そのうち正規の職員・従業員は3,529万人、非正規の職員・従業員は2,090万人となっています。30年前の1990 年には正規の職員・従業員が3488万人で正規の職員・従業員が881万人でした。
雇用者に占める非正規労働者の割合は1990年では約20%に対し、2020年で約37%と雇用者の約3分の1が非正規労働者という結果になっています。
もちろん、働くことへの考え方も変わってきており、非正規労働者が現職の雇用形態に就いた主な理由のうち、一番多いのが「自分の都合のよい時間に働きたいから(619万人)」が一番多く、「家計の補助・学費等を得たいから(395万人)」、「家事・育児・介護等と両立しやすいから(239万人) 」と続くのですが、「正規の職員・従業員の仕事がないから(230万人)」という理由で非正規労働者となっている方(不本意非正規労働者)が多いのが現状です。

日本人は残業しすぎ?

よく言われているのが、日本人は残業多すぎじゃないという問題です。「サービス残業」や最近では「社畜」なんていう言葉もあるくらい、日本人は1日24時間のうちの大半を仕事に使っているように思いますよね。
では数字上はどうなのか、OECD(経済協力開発機構)が調査した「世界の労働時間国別ランキング」(年間)によると、日本の順位は1,713時間で、38ヵ国中なんと22位だそうです。意外と世界的に見て平均的な長さの労働時間なのです。
しかし、この統計には非正規労働者も対象者に含まれていたり、サービス残業はカウントされていなかったりするので、正規労働者の労働時間だけで見るとこの順位は変動しそうです。
ここからは、私の過去の経験といろいろな会社を見た体感なのですが、残業することが前提で仕事内容が決められている、タイムカードを退勤登録した後また仕事に取り掛かることが当たり前のような会社がめちゃくちゃ多いです。事実私も会社が休みの日に会社のPCで仕事をしていたことが当たり前のときがありました。そのときは繁忙期であったり、初めて扱うシステムなどの確認に充てていたのですがそれが普通なのかなとも思っていました。
わが国では、何故か残業をたくさんする人の方が仕事を頑張っているように見られ、定時で帰るとやる気がないと思われがちで、仮に定時で上がれるよう仕事を終わらせても上司が先輩が残っていると帰りづらい雰囲気もありますよね。これって今でも変わっていないように思うんです。景気がいいときは残業することで企業の利益も上がり、残業した結果が労働者の給料に反映されますし、(完全)週休2日制が浸透していなかったため、必ずしも残業=悪ではありませんでした。
今は(完全)週休2日制を採る企業が約半分を占めてはいますが、仕事を持ち帰ったり、金曜日は残業して結局土曜日が潰れちゃうみたいなことが結構ありますよね。この分が給料に反映されていないのが問題なのです。
あとは「名ばかり管理職」も問題です。管理職になれば時間外労働は適用されませんから違法ではないのですが、管理職だけれどもそれ相応の手当を支給していなかったりする企業は多いです。
周りに合わせるという意味では日本人って素晴らしいなと思うのですが、そこに労働が絡むとの残業するのが当たり前という風潮が生まれてしまうんですよね。

終わりに

この類の話は終わりがありません。賃金が上がらないのは各企業次第で変えられる部分もたくさんありますが、どうしても景気という不可抗力が原因になることもあるからです。新型コロナウイルスやリーマンショックのような出来事も当然に影響します。しかし、この記事では労働者派遣法をとりあげましたが、国内の政策だけで回避できる問題も多くあるのが事実です。その一例として最低賃金は上昇傾向になってはいますが、結果として労働者の懐に入ってくる賃金が上昇せず、GDPも上がらなければ国の労働政策として、果たしてそれだけで正当なのかというと疑問が残ります。
さて、これまでは収入の方を中心に見てきたので、次回以降はお金の支出の方に目を向けてみたいと思います。

それでは本日もご覧いただきましてありがとうございました。


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