【健康保険法】傷病手当金制度の見直しについて(2022年1月改正)

税金・社会保険・労働関係

こんばんは、kanariyaです。

本日は、傷病手当金の改正についてお伝えしたいと思います。

傷病手当金とは、健康保険法第99条を根拠とするもので、病気やケガなので仕事を休んだため、報酬を受けられない被保険者が受けられるための保障制度になります。よく似た名称で傷病手当というものがありますが、こちらは雇用保険法37条を根拠とするものであり、基本手当(よく言われるのが失業手当)の代わりになるものですので混同しないようにしてくださいね。

傷病手当金は、実務では多く携わった方もいると思いますが、令和4年(2022年)1月1日に改正が行われる予定です。

傷病手当金の支給要件を確認してきましょう。主に3つ取り上げます。

業務上外の療養のためであること

労務に服することができないこと

③待機期間が満了していること

です。

①の要件は業務上の場合、労災保険の給付が優先になりますので、そちらで請求してください。(実務では業務上の傷病なのに健康保険で通院するいわゆる労災隠しなんていうのもありますが・・・本来は労災保険で療養の給付等をうけることになります。)

また、健康保険法は疾病、負傷、死亡又は出産に関する保険給付ですので、障害を理由とした休業は傷病手当金の対象にはなりません。(健康保険法第1条)

②の要件ですが、実務でも複雑な事例が多く、通達でも様々なものが出ています。また、現在は身体的なももだけではなく、精神的な疾病も多くなっているため、普段から意識しておきたい重要な要件となっています。

③の要件ですが、傷病手当金の待機期間は3日となっていますが、これは連続して3日という意味になります。

例えば、「休、休、出、休」では待機期間は完成せず、また初日から起算となります。

「休、休、休(待機期間完成)、→受給」 という流れになります。

傷病手当金の支給期間ですが、「同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から起算して1年6か月を超えないもの」とされています。 (健康保険法第99条第4項) 太字にした意味は待機期間の満了後ではないということと後ほど述べる改正箇所に関わるからです。

現行法では、例えば、待機期間が完了した翌日(×1年4月1日とします)から1年間労務不能により休業しており、1年経過後(×2年4月1日)から仕事に復帰したものの、×2年8月1日から再び同一の私傷病により休業した場合、いつまで傷病手当金を受給できるでしょうか?

正解は、×2年9月30日までです。

理由は、1年6か月の起算日は×1年4月1日のため、その日から起算して1年6か月後はすなわち×2年9月30日となるからです。(起算日ベース)

しかし、今回の改正でこの1年6か月の考え方が少し変わります。(起算日ベースから通算ベースへ)

上記と同じ例でいえば、×2年8月1日から最大で6月間の受給が可能ということになります。(一時就労がなければ×3年1月末日)。

この改正の背景には、主にがん治療などのような入退院を繰り返す病気の場合、支給開始日が決まってしまうと、受給期間の終了日が自然と決まってしまうというデメリットがありました。

現行法は医療の発展などもあり、今の時代に合った柔軟な対応するために通算ベースで支給できるような仕組みとなったのです。

なお経過措置として、改正法が施行される前に傷病手当金を受給中の被保険者に対して、「第1条の規定による改正後の健康保険法第99条第4項の規定は、施行日の前日において、支給を始めた日から起算して1年6月を経過していない傷病手当金について適用し、施行日前に第1条の規定による改正前の健康保険法第99条第4項に規定する支給期間が満了した傷病手当金についてはなお従前の例とする」と改正法の附則に定められています。

すなわち、施行日前の前日(令和3年12月31日)時点で傷病手当金の支給開始日から1年6か月を経過していないケースでは、改正法に基づく支給期間通算の適用を受けられることになります。

人事労務でご活躍されているされている方は、この時期年末調整業務の繁忙期に入ることになるかと思いますが、クライアントや従業員の方に知らない方がいたらぜひ周知してあげてくださいね。

あと、社会保険労務士試験を受験される方も傷病手当金はほぼ毎年のように出題されていますから一度目を通しておいてくださいね。(社労士試験ってなぜか直近の法改正項目はあまり出ないんですよね・・・)。仮に私が試験問題を作成するとしたら択一で出題してみたいですねw

それでは本日もご覧いただきましてありがとうございました^^

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