【法改正】育児・介護休業法(前編)【2022.4.~】

税金・社会保険・労働関係

育児介護休業法が施行されたのが1992年4月1日なのですが、ちょうど30年目にあたる今年に改正が行われることが決定しています。

とはいうものの、改正は段階的に行われるものであり、2022年4月1日、同年10月1日及び2023年4月1日と3段階に分けて改正されることとなっています。

改正内容は主に以下の6項目となっています。

①有期雇用労働者の要件の緩和(2022年4月1日から)
②個別周知・意向確認の義務(2022年4月1日から)
③育児休業の取得をしやすい雇用環境整備の義務(2022年4月1日から)
④産後パパ育休制度の創設(2022年10月1日から)
⑤育児休業の分割取得等(2022年10月1日から)
⑥育児休業取得率の公表(2023年4月1日から)

今回は①~③について解説します。

今回の改正は主に育児休業に焦点を当てた改正となっていますが、育児・介護休業法はこれまでに細かいものも含めると過去に9回改正されている忙しない法律です。

育児・介護休業法の目的は、子の養育又は家族の介護を行う労働者等の雇用の継続及び再就職の促進を図り、もってこれらの者の職業生活と家庭生活との両立に寄与することを通じて、これらの者の福祉の増進図り、あわせて経済及び社会の発展に資することを目的としています。(法1条)
職業生活と家庭生活との両立とはワークライフバランスのことを指します。

この目的条文から経済及び社会の影響を受けながら、時代とともに変化していく法律であることが伺えます。

そして、これだけ改正があると、実務上は就業規則の整備がとても重要になってきます。

そこで今までの改正も交えながら今回の改正の解説していきたいと思います。

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①有期雇用労働者の要件の緩和(2022.4.~)

【現行法】(法第5条)
⑴当該事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者
⑵1歳6ヵ月に達するまでにその労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでない者

【改正法】
⑴当該事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者(削除)
⑵1歳6ヵ月に達するまでにその労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでない者

※無期雇用労働者と同様の取り扱い(引き続き雇用された期間が1年未満の労働者は労使協定の締結により除外が可能。)

ちなみに介護休業も⑴当該事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者が削除になります。⑵介護休業予定開始日から起算して93日を経過する日から6月を経過する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでない者は残りますのでご注意ください。

就業規則を変更する場合は育児休業の項目と併せて介護休業も同時に変更するといいでしょう。

ここで気になるのは、結局のところ雇用期間が1年未満の者への取り扱いについてどうしたらいいのかというところです。

それでは育児・介護休業法上、「申出ができる労働者」について考えてみましょう。

⑴「日々雇用される者」は除く(法第2条)
→法第1条の目的条文の「雇用の継続」に該当しないからと覚えましょう。
⑵「有期雇用労働者」は要件を満たす場合のみ申出をすることができる。(法第5条)
事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該育児休業の申出を拒むことはできない。ただし、労使協定で次の①及び②に掲げる労働者のうち育児休業をすることができないものとして定められた労働者に該当する労働者からの育児休業申出については拒むことができる。(法第6条)
①当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者
②育児休業をすることができないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの〔㋑育児休業申出があった日から起算して1年(1歳6ヵ月又は2歳までの育児休業申出にあっては6月)以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者、又は㋺1週間の所定労働日数が2日以下の労働者〕に該当するもの(則第8条)

つまり、労使協定で育児休業の対象外にできる労働者は
雇用された期間が1年未満の労働者
1年(1歳以降の休業の場合は6月)以内に雇用関係が終了する労働者
週の所定労働日数が2日以下の労働者
となります。

育児休業は比較的長い期間になりますので、入社してすぐに育児休業に入ったり、雇用関係が終了することが明らかな場合などは雇用の管理が煩雑になることも考慮して、労使協定で各々定めていいよという余白を残していることになります。そもそも育児休業を開始することが判明している労働者を新しく雇用したりするケースはあまりないとは思いますが。

実務上では上記申し上げた通り、2022年4月1日前までに就業規則の見直しが必要になりますが、必要に応じて労使協定を締結する状況が発生します。(例えば、有期雇用労働者にあっては、申出時点において子が1歳6ヵ月(法第2条第6項又は第7項の申出にあっては2歳)に達するまでに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないものに限り育児休業を取得することができる。)

②個別周知・意向確認の義務(2022.4.~)

本人又は配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、事業主は育児休業制度等に関する以下の事項の周知と休業の取得以降の確認を個別に行う必要があります。

【周知事項】
⑴育児休業・産後パパ育休に関する制度
⑵育児休業・産後パパ育休の申出先
⑶育児休業給付に関すること
⑷労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い

【個別周知・意向確認の方法】
⑴面談(オンライン面談も可)
⑵書面交付
⑶FAX
⑷電子メール等
のいずれか。

具体的には、申出先は人事部の○○さんが管理していますよとか、育児休業給付で賃金の約67%支給されますよ、非課税のため所得税はかかりません、翌年度の住民税の算定額にも含まれません、育児休業中の社会保険料は労使ともに免除される可能性があることなどなど・・・

注意すべき点は、育児休業の取得を妨げるような周知及び意向確認は法21条第1項の措置の実施とは認められないこと。(育児休業の制度の利用のしにくさを解消するために設けられた法21条に反するため。)また、事業主から労働者に対して、意向確認のための働きかけを行えば足りること。(育児休業を取得するか否かを伺えばいいとされ、取得するかしないかの結果を必ずしも聞く必要までは求められていません。)

③育児休業の取得をしやすい雇用環境整備の義務(2022.4.~)

育児休業と産後パパ育休の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下のいずれかの措置を講じなければなりません。(産後パパ育休の詳細は次回。)

⑴育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
⑵育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口等の設置)
⑶自社の労働者の育児休業・産後パ育休取得事例の収集・提供
⑷自社の労働者への育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

ポイントは、研修について、全労働者を対象とすることが望ましいが、少なくとも管理職については研修を受けたことがある状態にすることが必要になります。
これは、まず育児休業の取得も申出を行う予定の労働者が一番に相談するのは管理職が想定されるため、人員管理をする立場にある管理職にあたってはある程度の知識を持っていただきたいという趣旨になります。今後、育児休業をする労働者の業務が周りの労働者にしわ寄せがくる可能性があることをあらかじめ把握しておく意味でも必要な研修を設けることが求められると言えるでしょう。

上記の②個別周知・意向確認の義務及び③雇用環境の整備の義務について、実務上では実施方法の検討や準備が必要になります。4月まであと1ヵ月あまりしかありませんので、スケジュール的にはタイトだと思います。厚生労働省のホームページで育児・介護休業法に関する規則の規定例がありますのでひとまずそちらを参考にしていただければと思います。

④次回は2022.10.~改正(予定)

今回は4月1日改正をご説明しましたが、次回は10月1日改正について解説いたします。2023年4月1日改正もあるので次回で終わるか微妙ですが、次回の論点は過去の改正も少し補足が必要なので育児・介護休業法だけで3回分の記事になるかもしれませんがご了承ください。
育児・介護休業法は改正が多く、今の就業規則が古いままの可能性もあるのでこれを機会に就業規則の見直しをすることをオススメします。

また、次回は今回に比べて若干複雑なのでわかりやすく解説したいと思います。最後に改正の推移と問題点もご説明するつもりですのでお楽しみにしていてください。

それでは本日もご覧いただきましてありがとうございました。

参考:育児・介護休業法について(厚生労働省ホームページ)

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