【社会保険】2022年算定基礎届の書き方・注意点③

税金・社会保険・労働関係

前回の記事の最後に新型コロナウイルス感染症による標準報酬月額の変更について少しだけ触れましたが、実務上通常の算定基礎届や月額変更届と異なる点があるためご説明いたします。

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新型コロナウイルス感染症に伴う標準報酬月額の特例改定

新型コロナウイルス感染症が流行しだしてからおよそ2年半ほど経ちますが、日本年金機構で休業を余儀なくされた事業所に対して特別に標準報酬月額を下げることが出来る手続きを設けました。

当時は2020年7月までを想定していたのですが、幾度となく延長に延長がされており、2022年6月現在まで6回も延長されております。

急減月提出期限
2020年4月~から7月2021年2月1日
2020年8月から12月2021年3月1日
2021年1月から3月2021年5月31日
2021年4月から7月2021年9月30日
2021年8月から12月2022年2月28日
2022年1月から3月2022年5月31日
2022年4月から6月2022年8月31日
新型コロナウイルス感染症に伴う標準報酬月額の特例

現在では2022年4月から6月において標準報酬が2等級以上下がった場合において届出をすることができます。

注意点

さて、通常の定時決定や随時改定と比べて気をつけるべき点をご紹介します。

固定的賃金の変動以外の事由においても改定することができる

通常の月額変更の場合、固定的賃金の変動がある場合(基本給や通勤手当、家族手当などがある場合)において、その月を変動月とすることができましたが、特例改定においては固定的賃金等に限らずその月の報酬月額が2等級下がっていれば届出が可能となります。

変動月から連続して3ヵ月なくても改定することができる

通常の随時改定では、変動月から起算して3ヵ月連続した報酬月額の平均が2等級以上変動した場合において、その翌月(4ヵ月目)から変更の届出をしなければならないのに対して、特例改定では変動があった月の翌月から改定することができます。

実際の届書を見てみましょう。

新型コロナウイルス感染症に伴う標準報酬月額の特例改定(令和4年1月から6月を急減月とする場合)

本来であれば3ヵ月分記載が必要な箇所のうち、2月分がグレーで塗りつぶされており、「-」が入っているのがわかりますね。⑨の支給月とその報酬を記載すれば④の箇所にその翌月を記載することになります。

例えば⑨が4月となる場合、④は4年5月となります。

本特例による改定内容に被保険者本人が書面により同意していること

標準報酬月額(標準報酬等級)が改定されるということは、保険料の負担が減ることになるため事業主にとっても被保険者本人にとっても経済的にはありがたいことではあります。

ただし、標準報酬月額を基に算出される給付(傷病手当金、出産手当金及び受け取れる厚生年金の金額)が減ることになります。

そのため、被保険者による同意書(及び事業主による申立書)を同時に提出する必要があります。(下記画像参照)

被保険者による同意書
事業主による申立書

算定基礎届、月額変更届同様にこの書類も印鑑が不要なので、ごくまれに事業主が被保険者の同意を得たものとして署名してしまう場合もあるようですが、後にトラブルになるケースがありますので、提出する際は必ず被保険者本人の同意を得てから行うようにしてください。同意書を本人に直接見せながら説明した上で同意をいただくのが一番良いかと思います。

提出先が事務センターではなく所轄の年金事務所になること

算定基礎届や月額変更届と異なり、この届出は年金事務所に提出することになっています。詳細はよくわからないのですが、おそらくこの届出が事務センターに送られると事務処理がパンクすることになるからだと思います。要件不備の場合は返戻が必要になるため各年金事務所の窓口が事前に要件を満たしているかを審査するようにしています。

ちなみに、この届書に限ったことではないのですが、控えが欲しい旨を伝えると、受付日の入った写しを交付してもらえます。(郵送の場合は返信用封筒をつけて控えが欲しい旨を記載すれば対応してもらえます。)上記にも述べましたが、この書類は被保険者の同意がないといけないものなので他の届書よりは控えをもらっておく意味は多いと思っています。

算定基礎届と同時に提出する可能性があること

この記事でも書きましたが、定時決定の対象とならない人は。①6月1日から7月1日の間に被保険者資格を取得した人と②7月・8月・9月に月額変更の対象となる人の2パターンのどちらかに該当する方です。

例えば、6月に新型コロナウイルス感染症の影響により標準報酬月額が2等級以上下がる場合、翌月(7月)に変更になりますので、定時決定の対象にはなりません。

しかし、5月に新型コロナウイルス感染症の影響により標準報酬月額が2等級以上下がる場合、改定月は6月です。改定月が1月から6月の場合はその年の8月まで、7月から12月の場合は翌年の8月までその標準報酬等級となります。

ですので、特例による改定を提出していたとしても、算定基礎届の対象になることには注意が必要です。実際に2年前に特例改定の制度が始まった頃は、算定基礎届の未提出者が大量に発生し日本年金機構から10月から11月くらいに算定基礎届を提出するように求められた事業所はたくさんありました。

最後に

現在は、新型コロナウイルス感染症のピークも過ぎたことや、この改正がすでに3期目を迎えていることもあり、少しずつですが定時決定の相談も減ってきているように思います。

ただ、元の給与水準に戻った場合の月額変更(回復月変)をしていないケースは依然として多く、算定基礎届を提出していたとしても、遡って月額変更届の提出を求めるように年金事務所から指導が入ることもあります。この手続きが入ると翌月以降の給与から調整したりする必要が生じるなど手間が増えることにもなります。特に年金事務所の調査対象になっている事業所の方はくれぐれも注意してください。

参考

【事業主の皆さまへ】新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業により著しく報酬が下がった場合における標準報酬月額の特例改定のご案内(令和3年8月から令和4年6月までに報酬が急減した場合の特例措置が講じられました。)(日本年金機構ホームページ)

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