今後の人生において、予想外のことが起きたときに備えることは大事です。特に天災事変の多い日本においてに、または長寿大国日本において、生きていくうえで様々なリスクが伴います。そのリスクへの備えとして学習する章になります。
①生命保険、②損害保険、③第3分野の保険の順番で学びます。
生命保険会社、損害保険会社にお勤めされている方であれば比較的重要な項目になります。
注意
※合格に必要なところだけをピックアップ。とにかく試験に合格したい方向け。(主に学科対策。)
※2021年10月1日時点の法令を根拠とする。
契約者保護に関する制度(重要度★★★★☆)
保険業法
契約者の利益の保護や保険会社が健全に事業運営をすることを定めた法律。
保険を募集する際の禁止行為が列挙されている。代表的なものは、重要事項の説明義務違反、虚実の告知、告知の妨害・告知しないことを進める行為、特別利益の提供(募集人が契約者に対しキャッシュバックをする行為等)、不当な比較表示など。
保険の募集
代理
保険会社と委託契約を結んだ保険募集人が、保険会社に代わり顧客と契約する形態。保険募集人には代理人として保険契約を締結する権利が付与されている。
媒介
保険募集人が、顧客と保険会社の契約を仲介する形態。保険募集人には保険契約を締結する権限はない。
保険契約のクーリング・オフ制度
クーリング・オフとは消費者保護の観点から、消費者の一方的な意思表示による申込みの撤回、契約の解除を認める制度。必ず書面により行う必要がある。クーリング・オフの内容を記載した書面を受け取った場合、「その書面を受け取った日」または「申込日」のいずれは遅い日から起算して8日以内の意思表示をすれば申込みの撤回が可能。ただし、保険期間が1年以下の契約は適用除外。
ソルベンシー・マージン比率
保険会社が十分な保険金を支払う余力があるかを表す指標。200%以上が健全性の目安。
ソルベンシー・マージンときたら200くらいの覚え方でOK。
保険契約者の保護機構
保険会社が破綻した場合に契約者を保護する目的で設立された機構。生命保険契約者保護機構と損害保険契約者保護機構がある。
原則として、前者は責任準備金の90%が補償割合。
生命保険契約者保護機構は国内で事業を行うすべての生命保険会社が会員として加入している。
保険法
保険契約に関する一般的なルールを定めた法律。
告知制度
告知義務の内容を「保険会社が告知を求めた事項に応答する義務」として定めている。保険契約者等は告知義務違反があった場合、保険会社はその事実を知ったときから1ヵ月以内または契約締結から5年以内に保険契約を解除できる。なお、保険募集人が適切な告知を妨げていた場合は告知義務違反による契約の解除はできない。
被保険者の同意
契約者(保険料支払い義務者)と被保険者(保険契約対象者)が異なる場合は被保険者の同意が必要である。
その他(リスクマネジメント)
リスクの回避
リスクの原因を取り除き、リスクが発現する確率をゼロにすること。
リスクの低減
損害の発生確率または損害の程度を下げること。(例:消火器の設置等。)
リスクコントロール
組織内に内在するリスクに対して、その発生率や発生したときの損害額を抑制する対策を講じることでリスクを最適化する対策。
リスクファイナンス
リスク自体に対しては何も対策せず、発生したときの損失に対して金銭を準備しておく対策。(例:保険をかける等。)
生命保険の基本(重要度★★★☆☆)
生命保険のしくみ
生命保険とは、死亡や生存、高度障害や入院などの保険事故が一定の確率で起こることを想定してそれに対してお金を備えるもの。
①被保険者=保険をかける対象となる者
②契約者=保険料を支払う者
③受取人=保険金を受け取る者
の3者が保険契約に関わる。
保険料のしくみ
保険料算出の原則
大数の法則
個々の事象は偶然起きることであっても事象を数多く集めるほどその確率は一定の数字に近づいていくという法則。(例:サイコロを多く振るほど限りなく各目の出る確率は6分の1に近づいていくという意味。)
収支相等の原則
保険料は「保険料の総額とその予定運用益」の合計が「保険金額と予定経費」に合計に等しくなるように計算されるという原則。
利得禁止の原則
保険金の受取で利益を得ることを禁じるという原則。
給付・反対給付均等の原則(公平の原則)
契約者が支払う保険料と保険事故発生の際に支払われる保険金の数字的期待値(保険金額×発生確率)が等しくなるように保険料を決定するという原則。同じ保険金額でも発生確率の高低に合わせて保険料が異なるので、保険契約者の負担は公平となるようにしなければならない。
保険料計算のベースとなる3つの予定率
①予定死亡率:データを基に予想した年齢・性別ごとの死亡確率。
②予定利率:保険会社が預かった保険料を適用する予定運用率。予定利率を高く見積もるほど保険料は低くなる。
③予定事業費利率:保険料のうち事業運営の経費に充てる割合。
保険料の内訳
・純保険料(保険金の財源):予定死亡率と予定利率をベースに計算。
・付加保険料(保険会社の経費):予定事業費率をベースに計算。
生命保険の3利源
生命保険の保険料から生じる余剰金のこと。
・死差益:実際の死亡率が予定死亡率よりも低かったときに得られる利潤。
・利差益:実際の運用収入が予定していた運用収入よりも多かったときに得られる利潤。
・費差益:実際の事業費率が予定事業費率よりも低かったときに得られる利潤。
生命保険商品の種類と内容(重要度★★★★★)
保障機能を重視した保険
定期保険
定期保険は死亡保険のうち、保険期間が一定期間に限定されている保険。保険期間を定めてその期間内に死亡もしくは高度障害状態になった場合に受け取れる保険のため、保険期間満了時に被保険者が生存していても満期保険金は支払われない。(一般的に掛け捨て型であるため、保障内容が同一であれば他の死亡保険の終身保険や養老保険と比べて月々の保険料は安い。)
保険料は一定で保険金額が減少していく逓減型、増加していく逓増型などがある。
逓増型定期保険
保険契約期間の経過に伴い、補償額が徐々に増えていくタイプの保険。保障額は増加していくが、保険料はあらかじめそれを織り込んだ金額で設定されているため保険期間を通じて一定である。
逓減型定期保険
保険契約期間の経過に伴い、補償額が徐々に減っていくタイプの保険。保障額は減少していくが、保険料はあらかじめそれを織り込んだ金額で設定されているため保険期間を通じて一定である。
定期積金
積立期間を決めて定期的に掛金を払込み、進学、旅行、住宅購入などの目的貯蓄として、満期日にまとまった給付金を受取る商品。定期積金では掛金累計額と給付金額との差額が預金の利息に相当し、これを給付補填金という。掛金の決定方式には、満期日に受取る給付金額を優先的に決めて一定の金額を積立てる目標式と、一定の掛金額を決めて積立てる定額式がある。
定期保険特約付終身保険(ていきつきしゅうしん)
終身保険に定期保険を特約としてつけたもの。特約の期間中はより高額な死亡保障が得られ、その期間が終わった後も一生涯の死亡保障を受けられる。定期保険特約は全期型と更新型があるが、更新型を同額で自動更新すると、保険料は更新前より高くなる。更新時の告知は不要。
総合福祉団体定期保険
役員・従業員を被保険者とする1年更新の掛捨て型の定期保険。保険料は企業が全額負担し、契約に際し被保険者となることの同意が必要。また、加入時の医師の診査は不要だが告知は必要。
生存給付金付定期保険
生存していれば一定期間が経過するごとに給付金に受け取れる仕組みを定期保険にプラスした保険。
傷害特約
不慮の事故により180日以内に死亡したとき、所定の障害状態(所定の感染症も含む)により死亡したときのための特約。
長期平準定期保険
長期平準定期保険は、主に役員向けの生命保険商品として取扱われており、通常の平準定期保険よりも保険期間が長い保険。死亡時に支払われる保険金額が保険期間を通じて一定。
定期保険のように保険料負担を抑えながら、終身保険のような長期保障が得られるため、経営者等に万が一のことが起こった際や、会社が危機に陥った時のために資金準備を行うことが期待できる。
長期平準定期保険の保険期間は一般的に満了日が90歳代後半~100歳となる商品が多い。高い解約返戻率が設定されているが、ピークは20年~30年後に設定されており、ピークを過ぎると徐々に減っていき保険満了時はゼロになる。
保障と貯蓄の双方の機能がある保険
養老保険
満期前に死亡すれば死亡保険金、満期まで生存していれば死亡保険と同額の満期保険金を受け取ることができる保険。
ハーフタックス・プラン
契約者及び満期保険金受取人を法人、被保険者を役員及び従業員全員、死亡保険金受取人を被保険者の遺族とすることにより、支払保険料の2分の1を福利厚生費として損金扱いできる。
終身保険
保険期間が終身で一生涯の死亡保障が確保できる保険。長期的には貯蓄性の高い保険だが、短期で解約すると解約返戻金<払込保険金となるのが一般的。
一時払終身保険
契約時に一括で保険料を払い込むことで一生涯の保障を確保できる保険。一時払終身保険における解約返戻金の額は契約当初は一時保険料よりも低く、保険期間の経過に従って増加していき、やがて一時払保険料を超えるように推移していく。よって、早期に解約をすると解約返戻金額が払込保険料を下回る場合がある。
利率変動型積立終身保険(アカウント型保険)
毎回一定額の保険料を支払い、そのうちいくらかを定期保険や医療保険などで構成される保障部分に充て残りを積立金として貯蓄する保険。主契約の積立部分の適用利率が契約後一定期間ごとに見直され、最低保証利率が設定されている。積立部分は途中で引き出したり、まとまった金額を一時金として積み立てることも可能。
貯蓄機能のある保険
こども保険(学資保険)
子供の教育資金などを準備するために保険。契約者である親が死亡した場合はそれ以降の保険料は免除される。被保険者である子が死亡した場合、死亡保険金が支払われて契約が終了する。また、満期保険金と生存給付金(お祝い金)を受け取れる商品、出生前加入特則により出生前でも加入できる商品もある。
個人年金保険
保険料で積立貯蓄をしていき、貯まったお金を一定期間にわたって年金形式として受け取れる保険。受け取り方は以下3つのパターンがある。
終身(生存)年金
被保険者が生存している間は永続的に支払われる年金。
有期年金
被保険者が生存している間の一定期間にわたり支払われる年金。
確定年金
被保険者の生死に関わりなく一定期間にわたり支払われる年金。
投資機能のある保険
変動保険(変額保険)
特別勘定によって支払った保険料を株式や債券などを中心に運用し、その運用次第で保険金額や解約返戻金額が変動する保険。元本保証商品ではないが、死亡保険金は基本保険金額という最低保証が付いている。有期型と終身型の2タイプがある。
解約返戻金の最低保証はありません。
民間生命保険以外の保険商品
簡易保険(旧)
郵政民営化以前に契約した保険商品。
かんぽ生命
無審査(告知のみ)で加入できる。また、16歳以上は原則として1,000万円の加入限度額がある。
共済
協同組合が組合員に対して生命保険のような商品を扱うもの。民間の保険より掛金が小さい。(例:農協、生協など。)
少額短期保険(業)
保険金額が少額かつ保険期間が1年(損害保険は2年)以内の保険の引受けのみを行う保険(業)。少額短期保険業が1人の被保険者について引き受けるすべての保険契約にかかる保険金額の合計契約は原則として1,000万円が上限となっている。
規模が小さいため最低資本金等の条件が緩和されており、保険契約者保護機構への加入の義務もない。
災害割増特約
不慮の事故で180日以内に死亡、または特定感染症で死亡・高度障害状態になった場合に主契約の死亡保険金等災害割増保険金として上乗せで支払われる特約。
各保険商品の細かい論点が出題される可能性あり。まずは基本だけ覚えましょう。
生命保険の契約手続き(重要度★★★★☆)
契約の承諾と責任開始日
①保険の申込み、②告知(診査)、③第1回の保険料の支払いのすべてが完了した日から保険会社の責任が開始する。この日を責任開始日という。
保険料の支払方法と払込猶予期間
月払い、年払い、前納、一時払い等。月払いの場合の払込猶予期間は保険料払込期月の翌月初日から翌月末日まで。
保険料払込みが困難となった場合
自動振替貸付
払込猶予期間が満了するまでに保険料が払い込まれなかった場合、その保険料相当額の金額をその保険契約の解約返戻金の範囲内で保険会社が自動的に立て替え契約を有効に継続させる制度。自動振替制度によって立て替えられた金額には利息が発生する。
払済保険への移行
保険料の払込みを中止してその時点での解約返戻金をもとに、前の保険契約と同一の保険期間のまま主契約と同じ種類の保険に変更する方法。保障額は少なくなる。
延長保険への移行
保険朗の払込みを中止してその時点での解約返戻金をもとに、元の保険金額を変えず定期保険契約に変更する方法。保険期間は短くなる。
どちらも保険契約に附帯している各種特約は消滅する。
払済保険と延長保険の入れ替えは頻出。払済保険=保険期間、延長保険=保険額。
契約の失効と復活
払込猶予期間が満了した場合(自動振替貸付制度が適用されない限り)、その保険契約は失効となり効力を失う。ただし、契約によっては失効した場合でも一定の条件のもとに契約を元の状態に戻すこと(復活)ができる。その際の保険料は失効前の保険料率である。復活する場合は失効期間中の保険料については一括で支払わなければならない。
契約者貸付
貯蓄性のある保険において、契約で保険会社から解約返戻金の一定の範囲内で貸付けを受けることができる制度。
契約転換制度
契約中の保険契約の責任準備金や積立配当金を転換価格として下取りに出し、新規に契約する保険料の一部に充当する方式。全くの新規で契約するよりも転換価格の分だけ保険料が安くなるため、初期負担額が軽減される。
契約転換制度の条件
①同じ保険会社でなければならない。
②転換後の保険料は転換時の年齢、保険料率により計算される。
③予定利率は引継げないため修繕より予定利率が下がることがある
④改めて告知(診査)が必要となる。
保険契約の解約
保険契約者ははいつでも保険契約を解約することができる。その際、保険の種類や加入年数に応じて解約返戻金が支払われる。
生命保険に関する税金(重要度★★★☆☆)
保険料に関する税の優遇
生命保険料控除制度
一般生命保険料控除
死亡または生存に起因して保険金の給付が行われる保険契約。生命保険会社との保険契約、JAなどの生命共済が該当する。(例:定期保険特約など)
介護医療保険料控除
入院や通院などの医療保障または介護保障に起因して保険金の給付が行われる保険契約。(例:先進医療特約など)
個人年金保険料控除
個人年金保険料控除を受けるためには、年金受取人が契約者本人またはその配偶者でなければならない等、一定の要件を満たし、個人年金保険料税制適格特約を附帯する必要がある。一時払いの個人年金保険料は、一般の生命保険料控除の対象となる。
個人年金保険料控除を受けるための要件
- 年金受取人が契約者(保険料負担者)か、またはその配偶者であること
- 年金受取人が被保険者と同一人であること
- 保険料の払込期間が10年以上であること(一時払いは不可)
- 確定年金・有期年金の場合、年金受取開始日に被保険者の年齢が60歳以上であること、かつ受取期間が10年以上であること
傷害保険(特約)や災害割増特約は、身体の障害のみに起因して給付が行われる保険給付であるため、生命保険料控除の対象外となる。
一時払個人年金保険は「保険料の払込期間が10年以上であること」の要件を満たせないため生命保険料控除の対象にならない。
控除限度額
①一般生命保険料控除:所得税40,000円、住民税28,000円
②介護医療保険料控除:所得税40,000円、住民税28,000円
③個人年金保険料控除:所得税40,000円、住民税28,000円
生命保険料全体の控除限度額:所得税120,000円、住民税70,000円
保険金にかかる税金
死亡保険金にかかる税金
相続税、所得税、贈与税のいずれかが対象になる。
相続税の課税を受ける場合
契約者=被保険者の場合、遺族が受け取る死亡保険金は相続税の対象となる。相続人が受け取った保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠あり。(詳細は「第6章.相続・事業承継『相続税の課税財産・非課税財産』」を参照)
所得税の課税を受ける場合
契約者=受取人の場合一時所得として所得税及び住民税の対象となる。
一時所得の金額={(死亡保険金-正味払込保険料総額)-特別控除額(50万円)}×2分の1
贈与税の課税を受ける場合
契約者≠被保険者≠受取人の場合。その1年間に贈与された他の財産と合算されその合計額から110万円の基礎控除額を差し引いた部分が課税対象。
契約者 (保険料負担者) | 被保険者 | 保険金受取人 | 税金の種類 |
A | A | B | 相続税 |
A | B | A | 所得税・住民税 |
A | B | C | 贈与税 |
上記表は頻出項目のため必ず覚えること。
満期保険金・解約返戻金及び給付金にかかる税金
満期保険金・解約返戻金を受け取った場合
契約者=受取人の場合は一時所得として総合課税(ただし、一時払養老保険を加入後5年以内の満期や解約した際の差益は金融類似商品として20.315%の源泉分離課税)、異なる場合は贈与税の対象となる。
非課税財産の給付金・保険金
入院給付金・手術給付金・高度障害給付金など、ケガや病気等の出費を補填する意味合いの給付金は非課税。その受取人が被保険者自身でない家族の場合でも非課税。
損害保険のしくみ(重要度★★★☆☆)
損害保険のしくみ
損害保険とは、偶然の事故や災害に備えて、多くの人が保険料を出し合うことで万一の時の負担を軽減させるしくみ。損害保険の保険金は実損額を補填する実損填補が一般的であり、時価(保険の対象と同等のものを新たに建築・購入するために必要な金額から使用による消耗分を差し引いた金額)または再調達価額(保険の対象と同等のものを新たに建築・購入するために必要な金額)のどちらかをベースとして実際に生じた損害に応じた保険金が支払われる。
損害保険料のしくみ
生命保険と同じく、大数の原則、収支相等利得禁止の原則もある。
保険料算出の原則
大数の原則
個々の事象は偶然起きることであっても事象を数多く集めるほどその確率は一定の数字に近づいていくという法則。(例:サイコロを多く振るほど限りなく各目の出る確率は6分の1に近づいていくという意味。)
収支相等の原則
保険料は「保険料の総額とその予定運用益」の合計が「保険金額と予定経費」に合計に等しくなるように計算されるという原則。
利得禁止の原則
保険金の受取で利益を得ることを禁じるという原則。
給付・反対給付均等の原則(公平の原則)
契約者が支払う保険料と保険事故発生の際に支払われる保険金の数字的期待値(保険金額×発生確率)が等しくなるように保険料を決定するという原則。同じ保険金額でも発生確率の工程に合わせて保険料が異なるので、保険契約者の負担は公平となるようにしなければならない。
保険価額と保険金額
保険価額:保険の対象物の実際の価額(=損害額の最高見積額)
保険金額:契約金額。保険会社が支払う保険金の限度額。
・全部保険=保険価額=保険金額
・超過保険=保険価額<保険金額
・一部保険=保険価額>保険金額
一部保険の場合は、保険金額の保険価額に対する割合で保険金が支払われる。(比例填補)
超過保険の場合は保険価額を超えた部分は無効となる。
保険金額に対する保険料の割合(1,000円当たり○○円)を保険料率、保険料の総額に対する保険会社が支払った保険金の総額の割合を損害率という。
純保険料と付加保険料
生命保険のしくみと同じである。
受託者賠償責任保険
他人から預かった財物に対して保管・管理中の事故により損害を与えた場合、被保険者である企業等が負担する法律上の損害賠償責任を補償する保険。
(例:ホテルを運営する企業がクロークで預かる顧客の荷物の紛失・盗難リスクの補償、クリーニング店で顧客から預かったスーツを洗浄中に誤って薬液によるシミを作ってしまったことによる賠償責任。)
施設所有(管理)者賠償責任保険
保有・管理している施設内で、施設自体の構造上の欠陥、維持管理の不備、業務活動に起因する事故が発生した場合に、その損害賠償を補償する保険。
(例:遊園地の来園者が遊具から転落したことによるケガ、授業員が不注意により来客に負わせたケガなど。)
自動車保険・傷害保険(重要度★★★★☆)
自動車保険
自動車損害賠償責任保険(じばいせき)
通称自賠責。すべての自動車と原動機付自転車が対象となる強制保険。自動車事故の「被害者救済」と「加害者の賠償能力の確保」を目的としており、対人賠償事故のみに限定されている。
支払限度額は被害者一人当たり、死亡:3,000万円、後遺障害:4,000万円~75万円(第1等級から第14等級)、傷害:120万円。
任意加入の自動車保険
自賠責保険とは別に任意に加入する保険。現在は契約者の属性によってリスクを細分化して保険料に差をつけた「リスク細分型」が主流となっている。
①対人賠償保険:自賠責保険の支払額の超過部分の対人賠償を補償。運転者や家族等は対象外。
②対物賠償保険:自動車事故で他人の物を損壊した場合賠償責任を補償。
③車両保険:偶然の事故によって自動車が損害を受けた場合の補償。自損事故も対象。
④自損事故保険:自損事故で運転者・搭乗者などが死傷した場合の補償。
⑤無保険車傷害保険:無保険者との事故による死亡・後遺障害の補償。
⑥搭乗者傷害保険:乗車中の者が事故で死傷した場合の補償。相手方から支払われた自賠責保険による賠償金、過失割合にかかわらず定額で支払われる。
⑦人身傷害補償保険:自動車事故で死傷した場合などに、過失割合にかかわらず補償される保険。
車両保険と税金
自動車事故により、被保険自動車(非業務用のマイカー)に生じた損害に対して被保険者が自動車から受け取る車両保険金は非課税である。
傷害保険
傷害保険が支払われる場合
急激かつ偶然な外来の事故によって身体に傷害を負った場合に支払われる。
①急激:事故発生の直後に傷害を受けること(靴擦れは対象外)
②偶然:原因または結果の発生が予測できないこと
③外来:身体の外部から作用すること
※ウイルス性の食中毒、細菌性の食中毒、病気は補償の対象外。
※事故発生日からその日を含めて180日以内に所定の後遺障害が生じた場合、後遺障害保険金が支払われる。
傷害保険の種類
普通傷害保険
国内外を問わず傷害を補償。細菌性食中毒、日射病、地震、津波、噴火を原因としてケガをした場合は支払いの対象外。
家族傷害保険
普通傷害保険とほぼ同じ内容で、本人と家族(本人の配偶者、本人またはとその配偶者と生計を同じくする同居の親族、本人またはとその配偶者と生計を同じくする別居の子)が対象となる。傷害保険では加入される人の職業・職種により「職種級別A」、「職種級別B」に区分し保険料を決定しているが、家族傷害保険における職業区分が申込書等の被保険者本人欄記載の職業を基準としている。
国内旅行傷害保険
国内旅行のために、住居を出発してから帰宅するまでの間に被ったケガなど(地震・噴火・津波・細菌性食中毒による傷害を含まない)が補償される。
海外旅行傷害保険
海外旅行のために、住居を出発してから帰宅するまでの間に被ったケガなど(地震・噴火・津波・細菌性食中毒による傷害を含む)が補償される。
保険事由 | 普通傷害保険 | 国内傷害保険 | 海外旅行傷害保険 |
地震・噴火・津波以外のケガ | 〇 | 〇 | 〇 |
細菌性食中毒 | 〇 | 〇 | |
病気および地震・噴火・津波によるのケガ | 〇 |
傷害保険からの給付金
家族傷害保険契約に基づき、契約者と同居している子がケガで入院したことにより契約者が受け取る入院保険金は非課税とされる。
積立傷害保険
傷害保険に貯蓄機能を加えた商品のこと。契約満了時には満期保険金が支払われる。保険期間中に保険金の支払いが何度あっても保険金額及び満期保険金の額が減額されることはない。
個人賠償責任保険
支払いの対象となる場合
個人の日常生活や、住宅の使用・管理などを原因として第三者の身体や財物に損害を与えて法律上の損害賠償責任を負った場合。
支払いの対象外となる場合
他人から預った物や借りた物の賠償責任、自動車やバイクの運転に関する賠償責任、職遂遂行中の賠償責任など。
生産物責任賠償責任保険(PL法)
企業等が製造・販売した商品などによる事故で、他者への損害賠償責任が発生した場合に、被害者の治療費や慰謝料といった企業側の損害額を補償する保険。
火災保険と地震保険(重要度★★★★☆)
火災保険の種類と特徴
住宅火災保険
「住居のみに使われる建物」と「建物内の家財」に掛ける保険。火災に限らず、落雷や破裂・爆発、風災、雹災、雪災による損害などを補償。ただし、水災(水害)、盗難は対象外。
住宅総合保険
住宅火災保険と同じだが損害の補償の範囲が広く、水災(水害)、盗難も対象。
火災保険金は原則非課税
所得税において、個人事業主が自己の所有する店舗の火災によって建物に損害を受け、火災保険から損害を受け取った保険金が非課税である。
企業費用・利益総合保険
企業が営業・製造を行っている建物や設備・機械等が火災、爆発、風災、水濡れ、破損などの偶然な事故により損害を被った場合に営業・製造が休止・阻害されたために生じた喪失利益、また不測かつ突発的な事故により構外からの電気、ガス、水道等の供給が停止した場合の損害も補償する保険。
失火責任法
失火により他人(隣家等)に損害を与えた場合でも失火者に重大な過失がなければ損害賠償責任を負わない。ただし、賃貸住宅の賃借人が失火して住宅が延焼した場合(故意・過失の有無にかかわらず)家主に対しては損害賠償責任を負う。
地震保険
地震保険単独で加入することはできず、火災保険に附帯する。
地震保険の保険料は、保険会社による差異はなく、建物の構造区分と所在地によって決まるものである。
対象範囲
・地震・噴火・津波によって起きた火災、損壊、埋没、流出を補償。
・居住用の建物および収容されている家財が対象。
・1個または1組の価額が30万円超の宝石や美術品等は対象外。
損害の程度
損害の程度 | 保険金 |
全損 | 地震保険金額の100%(時価が限度) |
大半損 | 地震保険金額の60%(時価の60%が限度) |
小半損 | 地震保険金額の30%(時価の30%が限度) |
一部損害 | 地震保険金額の5%(時価の5%が限度) |
保険金額
火災保険の保険金額の30%から50%の範囲で定める。上限は建物5,000万円、家財1,000万円。
地震保険の保険料の割引制度
「建築年割引」「耐震等級割引」「免震建築物割引」「耐震診断割引」があり、割引率は「耐震等級割引(耐震等級3)」および「免震建築物割引」の50%が最大となる。なお、それぞれの割引制度の重複適用はできない。
割引制度の種類 | 概要 | 割引率 |
免震建築物割引 | 免震建築物の基準に適合する建物に対する割引 | 50% |
耐震等級割引 | 耐震等級を有している建物に対する割引 | 10%~50%(等級による) |
耐震診断割引 | 地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、改正建築基準法における耐震基準を満たす建物に対する割引 | 10% |
建築年割引 | 昭和56年(1981年)6月1日以降に新築された建物に対する割引 | 10% |
地震保険料控除
所得税:地震保険料の全額(最高5万円)
住民税:地震保険料の2分の1(最高2万5000円)
災害免除法による減免
個人の所有する住宅や家財が震災・風水害等により損害を受けた場合、納付すべき所得税額の一部または全部が減額される。適用対象となるのは住宅。家財に生じた損害金額(保険金・損害賠償金等により補填された金額を除く)が、住宅・家財の価額の2分の1以上の場合である。ただし、被害を受けた年分の合計所得金額が1,000万円超の場合は適用できない。
合計所得金額 | 免除対象額 |
合計所得金額が500万円以下である場合 | 納付すべき所得税額の全額 |
合計所得金額が750万円以下である場合 | 納付すべき所得税額の2分の1 |
合計所得金額が500万円超である場合 | 納付すべき所得税額の4分の1 |
第3分野の保険(重要度★★☆☆☆)
医療保険
ある程度まとまった貯蓄を取り崩す程度(入院や手術を必要とする)病気やケガに備える保険。入院特約などを附帯するケースが多い。
医療保険の180日ルール
退院日の翌日から180日以内に同一の疾病により再入院した場合、入院給付金支払日数は最初の入院日数と合算されて、1入院当たりの給付日数制限の適用を受ける。
リビング・ニーズ特約
余命6ヵ月以内と診断されたときに死亡保険金の一部または全額が生前給付される特約。特約保険料を別途負担する必要はない。リビング・ニーズ特約の生前保険金は所得税法上の非課税所得に該当する。
特定疾病保障保険(特約)
3大疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)によって所定の状態と診断された場合に支払われる。特定疾病保険金を受給すると消滅する。保険金を受け取らずに死亡した場合は死亡原因を問わず死亡保険金が支払われる。
がん保険・がん入院特約
がんと診断されたり、入院したり、手術を受けたりした場合に給付金が受け取れる保険。
がんで入院すると初日から入院保険金が支払われる。がん保険は医療保険と異なり、入院給付金の支払限度日数の制限はない。また、がん保険は90日の免責期間が設けられていることが多い。
先進医療特約
治療を受けた時点で厚生労働大臣が承認している先進医療が対象。
収入障害保険
被保険者が亡くなった際に、受取人に対して毎月定額が一定期間にわたり支払われる保険。所得を賄うことを目的としているため、原則として死亡・高度要害保険金は毎月に分けて支払われることになっているが、未払いの保険金の一部または全部を一時金として受け取ることも可能。ただし、この場合の支払金額は保険会社運用する期間が短くなる分、毎月年金として受け取る場合の総額より少なくなる。
所得補償保険
病気やケガが原因により就労不能となった場合に被保険者喪失する収入を補償する保険。
この章の復習
問題
国内銀行の支店において加入した一時払終身保険は生命保険契約者保護機構による補償の対象である。(2020年9月学科)
⇒〇(銀行の窓口で申込みをした生命保険契約も、保険会社の直販や代理店などで加入した場合と同様に生命保険契約者保護機構の対象となる。)
問題
生命保険の保険料の計算において、一般に予定利率を低く見積もるほど保険料は低くなる。(2019年9月学科)
⇒×(保険料は3つの予定率(死亡率・利率・事業費率)をもとにして計算しており、予定利率が低いほど(保険料を効率的に運用できない見込みなので)、純保険料は高くなり、保険料も高くなる。実際の運用利率予定利率よりも高いと利差益となる。)
問題
変動個人年金保険は( ① )の運用実績の基づいて将来受け取る年金額等が変動するが、一般に( ② )については最低保証がある。
1)①特別勘定 ②死亡給付金額
2)①一般勘定 ②死亡給付金額
3)①特別勘定 ②解約返戻金額 (2020年9月学科)
⇒1)(変動個人年金保険とは、株式や債券を中心に特別勘定で資産運用をし、運用実績によって将来受け取れる年金額、死亡給付金額、解約返戻金が変動する個人年金保険のこと。解約返戻金は最低保証のないものが多い。)
問題
定期保険は、被保険者が保険期間中に死亡または高度障害状態になった場合に保険金が支払われ、保険期間満了時に被保険者が生存していても満期保険金は支払われない。(2015年9月学科)
⇒〇(定期保険は保障機能を重視したものであり満期保険金は支払われない。満期保険金があるのは養老保険である。)
問題
個人が一時払養老保険(10年満期)の満期保険金を受け取った場合、金融類似商品として、満期保険金と正味払込保険料との差益が源泉分離課税の対象となる。(2013年1月学科)
⇒×(5年以内に満期金や解約返戻金を受け取ると金融類似商品として20.315%の源泉分離課税の扱い、5年超の場合一時所得として総合課税の対象となる。)
問題
普通傷害保険では、日本国外で発生した事故による傷害について、補償の対象とならない。(2015年9月学科)
⇒×(「急激かつ偶然な外来の事故」であれば日本国外で発生した傷害も対象となる。)
問題
地震保険の保険金額は、火災保険等の保険金額の一定範囲内で設定するが、居住用建物については( ① )万円、生活用動産については( ② )万円が上限となる。
1)①1,000 ②200
2)①3,000 ②500
3)①5,000 ②1,000 (2018年9月学科)
⇒3)(建物は5,000万円、家財は1,000万円を上限に火災保険の30%~50%の範囲と定められている。)
参考
FP3級ドットコム:ホームページ
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