悲しいお知らせとなります。
2022年度の公的年金の支給額が、昨年度より0.4%下がることが確定しました。
厚生労働省の公表によると、2022年度の新規裁定者(67歳以下の者)の年金額の例では、2021年度の国民年金(老齢基礎年金(満額):1人分)の受給額は月額6万5,075円、2022年度では月額6万4,816円と▲259円、厚生年金(夫婦二人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額は、2021年度は月額22万496円、2022年度は月額21万9,593円と▲903円となります。およそ月に1,000円ほど減額になるイメージです。
原因はなんとなくお分かりかと思いますが、経済状況の悪化とされています。
既に受給されている方、またはご両親や親戚の方が受給されている場合は6月15日の支給分から毎月(正確には2か月分が振り込まれるので2,000円余り)減るという認識でいいのですが、年金受給額の減少が単に経済状況の悪化だけ?と疑問に思った方、もう少し詳しい仕組みが知りたいという方は続きもご覧いただければと思います。
①公的年金受給について押さえておきたいこと
⑴公的年金の受給額は毎年変動する可能性がある
公的年金とはいえ「保険」なのだから、保険事由が発生すれば一定の金額をもらえるように思えるのですが、国民のみなさんからいただいた保険料を適正に運用して分配していくためにはどうしても調整が入ります。このあたりは共済のイメージがありますね。
最初の受給額と同じ額をずっと貰い続けることができると思うと少し危険です。ある日通帳を見てなんんで私の年金は減っているのだろうと思ったらこのことを思い出していただきたいです。
⑵支給額は主に「物価」と「賃金」によって影響を受ける
2021年は物価が0.2%下がりました。日本政府としては、物価が下がったのだから年金支給額を減らしても問題ないでしょうという考え方です。スーパーで販売されているにんじんの価格が0.2%下がったのであれば年金支給額も同じように0.2%下げますよという理屈です。
また、賃金の水準は過去3年で0.4%下落をしています。日本政府としては現役世代の賃金水準が0.4%下がっているのだから年金受給者の支給額も同じように下げるのが公平ですよねと言うことです。
「公的年金0.4%減」というのはまさにここからきている値になります。
では逆に物価や賃金が上がれば、年金受給額も上がるということでしょうか。
こう聞かれた場合、半分は正解ですとお答えします。
2004年の法改正よって保険料水準固定方式の導入が決定しました。過去に少しだけ触れているのでこちらをご覧ください。(年金法の改正(2022.4~)① 適用編)
簡単におさらいしますと、保険料水準固定方式とは最終的な厚生年金保険料の水準を1,000分の183(18.3%)の固定しますということです。しかし、保険料の水準を固定してしまうと少子高齢化の現在、保険料による収入より受給権者への支出の方が大きくなり、年金財政が維持できなくなる可能性があります。
そこで、保険料水準固定方式と同時にある制度を導入しました。これが「マクロ経済スライド」です。マクロ経済スライドとは少子化等の社会情勢、経済情勢の変動に応じて給付水準が自動的に調整される仕組みのことをいいます。
名前の響きだけ聞くとカッコいいのですが、保険料と給付のバランスをとるために導入されたものになりますので年金受給者からすると少しマイナスの印象になるのかなと思います。
ですので、仮に物価や賃金が5%上昇したからといって年金受給額も同じように5%増えるとは限らないということですね。この方法を採ってしまうと年金制度が維持できなくなるからです。
②簡単なまとめと現役世代の考え方
・物価や賃金が下がるとその分年金受給額も減る
・物価や賃金が上がってもその分が全て年金受給額増加に反映されるわけではない
ということです。
公的年金は物価や賃金に影響されることはおわかりいただけたと思います。ここで特に現役世代の方にはもう一歩考えていただきたいことがあります。
それはインフレ率や失業率、賃金水準などが今後のわれわれの実生活に影響する重要な指標になりうるということです。新聞やニュースなどで、来月から○○の値段が上がりますとか完全失業率が前年と比べて○○%減少しましたということを知る機会があると思います。その際に、単にまた○○の価格が上がるんだー、私は自営業だから完全失業率は関係ないわで終わるのではなく、将来受け取る年金にも影響が出てくる可能性があるという認識を持ってこれらのニュースを見ていただければなと思います。
それでは本日もご覧いただきましてありがとうございました。
コメント