2022年5月13日、楽天グループが2022年度第1四半期決算を発表しました。同社代表取締役会長兼社長 最高執行役員の三木谷浩史氏は、7月から料金プランが改定される楽天モバイルについて、「ぶっちゃけ、0円でずっと使われても困る」とコメントしたことでネット界隈ではプチ炎上しました。
楽天は2020年4月、楽天モバイルのキャリアサービスの開始が2020年4月に開始し、そこから1年間の無料お試し期間を、2021年4月に「月額0円」プランを発表。そこからさらに1年間の無料期間を設けるなど、楽天モバイルにはお世話になった方もいるのではないでしょうか。
2022年度決算の内容
下記画像をご覧ください。決算資料の一部を抜粋したものです。詳細は下記にリンク先を貼っておきます。
これを見てみわかるように、楽天モバイルがなぜ「月額0円」プランを廃止したかがお判りになると思います。
理由はシンプルに大赤字だからです。
楽天グループは他にも様々な事業を展開していますが、このモバイルセグメントでは1,350億円の損失を計上しています。(2022年1月~3月期)
これを見るとプランの継続は困難だとシロウトがみてもわかりますね。
大赤字の原因は?
ランニングコスト
まず主な要因は設備投資にあります。
楽天は携帯電話会社事業に参戦するということを決めたわけですが、今まではNTT、KDDI、Softbankといったこれら3社のほぼ独占状態にあったわけです。
経済用語では費用逓減産業などと言われたりもしますが、企業にとって最初に立ちはだかる壁として固定費が大きくかかることにあります。これをクリアできないことにより、資金力のある会社しか生き残れない企業だけが残りやがて独占状態になります。こうなれば、消費者はそのサービス以外に選択肢がないわけですから、生産量を増やすことで最初のマイナスを取り返していくという構造が出来上がるわけです。
そして、楽天は第4のキャリアとしての地位を築くべく莫大な設備投資を行った結果、通信に必要な基地局の建設を順調に進みネットワークの拡大とともに申込者も急激に加速しました。
モバイル事業という特殊性
楽天カードや証券は口座の開設をすれば手続き自体はそこまで面倒なものではありません。楽天カードは年会費も無料ですし、今まで持っていたけど全然使わずに年会費だけを支払っていたカードを解約して移行をした人は結構いると思います。
ただ、携帯電話のような固定費の移行って心理的にめんどくさいが先行してしまうんですよね。キャリアスマホから格安携帯に変更した人ならわかると思うのですが、実はそれほど面倒な手続きはなく、店頭に赴くこともほぼないのですが、初めての人にとってはハードルが高かったのかもしれません。
ユーザーのオプション利用傾向
ところが、一方で「0円」プランの影響で、今後「顧客」とならない層も同時に増加していきました。
あくまで試験的に「0円」プランを提供したわけですが、今後利益をもたらしそうにないタダ乗りのお客さん(フリーライダー)が楽天モバイルの設備投資の費用回収の足かせととなっているわけです。これが冒頭の三木谷氏の発言につながっているわけですね。
楽天は元々はインターネットサービスとフィンテック(楽天銀行、楽天カード、楽天証券などの金融情報サービス)を軸としており、そこにモバイルセグメントという形で新規事業を立ち上げました。
もともと、楽天のサービスを利用していたお客さんをターゲットとしつつ、新規顧客獲得を目指したわけですが、楽天モバイルにおいては予想以上にサービスを利用しお金を支払うユーザーが増えず、オプション契約も増えず、楽天ポイントを入手してその範囲内で利用するという状況になってしまったのが今回の決算の数字に表れた気がします。
予兆はあった?
2022年4月、楽天証券が改悪されたと話題になりました。楽天市場のポイント付与ルール変更に加え、楽天銀行の優遇プログラム「楽天銀行ハッピープログラム」の楽天証券で保有する投資信託にかかわる進呈ポイントも変更されたことに起因します。
そのことから、この変更は楽天モバイルへの膨大な投資の影響だろうという声が挙がっていました。
案の定その通りになったわけですが、これほど早く動くとは少し予想外でした。
今後の楽天の方向性と私見
以上のことから、楽天グループとしてもサービスを利用してくれるお客さんとそうでないお客さんとの差別化を図っていくものと思われます。その一環として発表されたのが今回の楽天モバイルの新料金プランになるわけです。
2022年7月から適用が開始され、今までの既存ユーザーも強制的にこのプランに移行になります。ただ、これについては猶予措置が設けられており、1GBまでは実質4ヵ月(2022年11月まで)無料とし、15分間通話かけ放題(3か月間)などのサービスも提供していますが、最低でも月1,078円かかる方のインパクトが大きすぎてこれらの特典がほとんど目立っていません。
料金プランは他社の格安携帯と変わりませんので、結局ahamoなどと対して変わらないようになってしまっています。
個人的には一時期楽天モバイルへの乗り換えは検討していましたが、結局乗り換えることはありませんでした。プライベート用はahamoで仕事用は楽天モバイルという未来図もあったのですが、給与はほとんど上がらないものの、ポイントをためる・使う活動いわゆる「ポイ活」で得られるポイント獲得数だけはうなぎのぼりという状況だったことを知っていたので0円プランはいつか変更になるだろうとは思っていました。そしてあまりも物を購入しない私にとって楽天ポイントがそこまで魅力にはならなかったのも要因のひとつです。
また、広告宣伝に関しても大物有名人を起用したり、宣伝頻度にかなり費用をかけていたようにも思います。楽天カードなどの影響もあり、すでに楽天モバイルに関しては周知はされていたと思うのでそこまでやります?と疑問には思いました。
ただ、そもそも「0円で携帯電話の番号を持つことができる」というサービス自体はすごいことだということはご認識いただきたいです。Lineなどの無料通話アプリは存在しますが、役所で手続きをしたり、何か契約をしたりするときに電話番号は必須になるケースはまだまだたくさんあります。通話にはお金がかかりますが、番号を所有できることで様々な恩恵を無意識に享受できていることは忘れてはいけませんし、楽天の企業努力の一環ではあるのかなと思います。
現状楽天モバイルはかなりの赤字を計上していますが、インターネットサービスやフィンテックは今のところだ大丈夫そうですし、現在楽天モバイルのユーザーの方も今年の11月までは猶予があるのでまだ安心していいと思います。ただ来年あたり、また改変がありそうな予感がします。杞憂に終わればいいのですが。
参考
・楽天モバイル三木谷氏「ぶっちゃけ、0円でずっと使われても困る」(Impress)
・楽天グループ株式会社2022年度第1四半期 決算ハイライトに関するお知らせ
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