【法改正】年金法の改正(2022.4~)③ 支給の繰下げ編(繰下げ支給の老齢厚生年金)

税金・社会保険・労働関係

こんばんは、Kanariyaです。

少しバタバタしていて更新が遅くなってしまいました。

今回は年金法改正シリーズ第3弾としてについて解説したいと思います。
今回扱う内容は今後みなさんのライフスタイルに大きな影響を与える比較的重要な改正項目になりますのでぜひ最後までお付き合いください。
それではさっそくいって見ましょう!

★過去掲載記事
年金法の改正(2022.4~)① 適用編
年金法の改正(2022.4~)② 在職老齢年金編

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支給の繰下げとは?

支給の繰下げとは老齢厚生年金の受給を本来の65歳から遅らせる手続きのことです。
厚生年金保険法では「老齢」、「障害」、「遺族」の3つの支給事由がありますが、繰下げの体操となるのは老齢のみです。

根拠条文は厚生年金保険法第44条3になります。
老齢厚生年金の受給権を有するものであってその受給権を取得した日から起算して1年を経過した日前に当該老齢厚生年金を請求していなかったものは、実施機関に当該老齢厚生年金の支給繰下げの申出をすることができる。ただし、その者が当該老齢厚生年金の受給権を取得したときに、他の年金たる給付(他の年金たる保険給付又は国民年金法による年金たる給付(老齢基礎年金及び付加年金並びに障害基礎年金を除く。)の受給権者であったとき、又は当該老齢厚生年金の受給権を取得したときから1年を経過した日までの間において他の年金たる給付の受給権者となったときは、この限りでない。

条文を見ているだけではわかりにくいので簡単に要件をまとめます。

  1. 老齢厚生年金の受給権を取得した日から起算して1年を経過した日前に老齢厚生年金を請求していないこと。
    →65歳に達した日から66歳に達した日までの間に請求していると繰下げできません。(65歳に達した人は65歳の誕生日の前日を意味します。)
  2. 老齢厚生年金の受給権を取得した日において、次のA又はBの他の受給権たる給付の受給権者でないこと。
    A.他の年金たる給付
    B.国民年金法による年金たる給付(老齢基礎年金及び付加年金並びに障害基礎年金を除く。)
    →この要件がかなりややこしいです。私はこのブログで年金についてはあまり取り扱ってこなかったので、軽く触れてみたいと思います。
    まず、厚生年金の支給事由には上記の通り、「老齢」、「障害」、「遺族」の3種類があり、それぞれ「老齢厚生年金」、「障害厚生年金」、「遺族厚生年金」があります。一方で国民年金にも同じ支給事由である3種類の年金があり、それぞれ、「老齢基礎年金」、「障害基礎年金」、「遺族基礎年金」と言います。
    つまりAは他の年金給付ですから「障害厚生年金」、「遺族厚生年金」ということになります。一方Bは国民年金法による年金たる給付(老齢基礎年金及び付加年金並びに障害基礎年金を除く。)となっていますから、この要件が意味するものは「遺族基礎年金」ということになります。
  3. 1年を経過した日までの間において、前期2のA又はBの年金たる給付の受給権者となっていないこと。

もう超簡単に申し上げますと、65歳にから66歳までの間に老齢厚生年金を請求しておらず、障害厚生年金、遺族厚生年金、遺族基礎年金の受給権者となっていないことです。
ちなみに1年を経過した後に、障害厚生年金、遺族厚生年金、遺族基礎年金の受給権者となった場合には老齢厚生年金の支給の繰下げの申出をすることはできます。

支給の繰下げの効果

では、年金の支給の繰下げを行うとどのようなメリットがあるのでしょうか。

年金の受給額は保険料と同じように1か月を単位として計算します。支給の繰下げは受給を敢えて遅らせるということを指します。
年金の受給を1か月遅らせると増額率(利息のようなものをイメージしていただければOKです。)が適用され、増額率は1か月あたり1000分の7(0.7%)ずつ増加されます。
改正前は70歳まで、つまり最大で60か月が限度でしたので、最大0.7×60か月=42%も増額した年金を受け取ることができました。
※正確な受け取り額は老齢厚生年金の額に繰下げ加算額(繰下げ対象額+経過的加算額)×増額率となりますが、今回はここの説明は省略させていただきます。

改正ポイント③ 繰下げ可能期間の最大が75歳まで延長

法改正後は最大5年であった繰下げ可能期間が10年に延長されました。つまり、年金の受給時期を75歳まで繰下げ可能となったわけです。

つまり、最大まで繰下げした場合、0.7%×120か月=84%もの増額率が適用されることになります。
簡単な数字で具体例をいうと、老齢厚生年金だけで100万円を受給できる方がいたとして、65歳で100万円を受け取るか、70歳で142万円受け取るか、75歳まで184万円受け取るか選択できるようなります。(実際はもっと複雑です。)

この法改正の背景は、高齢者の就労の拡大等を踏まえ、高齢者が自身の就労状況等に合わせて年金受給の方法を選択できるように柔軟で使いやすいものとするためのとするためのようです。この制度改正は令和4年4月1日以降に70歳に到達する方(昭和27年4月2日以降に生まれた方)が対象ですので、冒頭に申し上げた現役世代の方のライフスタイルを考えるきっかけとなるものになります。

私見と補足

年金の給付はかなりややこしいので少し補足します。まず、特別支給の老齢厚生年金の支給を受けたことがある方でも老齢厚生年金の支給の繰下げの申出をすることができます。特別支給の老齢厚生年金ってなに?という方は前回の記事を見ていただきたいのですが、簡単に言うと60歳以上65歳未満の方が受給できる年金のことです。(一般男子は昭和36年4月1日前生まれの方、女性は昭和41年4月1日前生まれの方)
また老齢厚生年金の支給繰下げの申出は老齢基礎年金の支給繰下げと同時に行う必要はありません。ですので、老齢基礎年金は65歳から受給、老齢厚生年金は75歳から受給する言うことの可能です。(ちなみに支給の繰下げとは別に支給の繰上げという制度もあるのですが、こちらは老齢基礎年金と老齢基礎年金を同時に繰上げすることになります。また減額率というものも適用されます。)

補足は以上になります。この改正について個人的な意見としては、選択肢が増えたのはいいことだと思います。平均寿命、健康寿命が延びてきているわが国では、高年齢者雇用安定法の改正をして高年齢者の就業の機会の確保を図るなど、社会保障と雇用分野ではかなり国は力を入れて動いています。

70歳になってもまだまだ元気に働くことができる方もいらっしゃいますし、生活資金がある方には今回の法改正は一考に値するものだと思います。私を含めまだまだ受給開始年齢には程遠い方でも、普段から健康に過ごしつつ、自己研鑽を怠らない方であれば、会社に頼らずとも稼働能力は身に着くものだと思っています。今回の改正は75歳まで働けということかと言われるとそうではなく、選択肢が増えたと考える方がいいです。70歳から受給できるという現存の規定は残りますので。むしろ上で少し取り上げた繰上げ支給が今後廃止の方向になっていくと予想しています。繰下げ支給は厚生年金保険法第44条3に規定があるのに対し、繰上げ支給の根拠は法附則であり、当面の間の措置のためだからです。

以上が今回の内容になります。前回、前々回とは違い、現役世代にも影響のある改正項目でした。今後は後期高齢者の割合も増えて、社会保障もまた不安定になることが予想されますので、別の部分が改正になる可能性は大いにあります。

私は今回の改正を通じて、健康には気を遣わないといけないなと改めて感じました。最近シャツ一枚で過ごすことがしんどくなったなあと感じますし、インフルエンザの予防接種もいまだに打てていません。サボり気味の筋トレも再開しないといけないなと自分を戒めるいいきっかけにしたいです。

それでは本日もご覧いただきましてありがとうございました。

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