【高齢者の医療の確保に関する法律】後期高齢者の医療保険に係る保険料負担について

税金・社会保険・労働関係

こんばんは、Kanariyaです。

最近は労働関係の記事が多かったため、本日は社会保険について見ていきたいと思います。

2021年6月4日、通常国会内で医療制度改革関連法が可決されました。内容は、一定の収入がある75歳以上の後期高齢者の医療費の自己負担額を1割から2割へ引き上げるというものです。新たに2割負担となる者の対象は、厚生労働省法令で定めるところにより算出した収入の額が単身世帯で200万円(課税所得28万円)以上、複数世帯で複数世帯では320万円以上の者になります。なお、現在の後期高齢者医療保険被保険者の全体約1,815万人のうち370万人が該当すると見込まれています。

現在の後期高齢者医療保険の被保険者の一部負担金は、年収520万円(単身世帯は383万円)(課税所得145万円)以上の者は3割、それ以外の者は1割負担が原則となっています。なので現在、75歳以上の方で2割負担の方は原則いません。ちなみに75歳以上の方は健康保険の被保険者になりません。(75歳未満の健康保険の被保険者が75歳に到達した場合は75歳の誕生日に資格を喪失し、同日後期高齢者医療保険の被保険者となります。被扶養者がいる場合は別途加入が必要。)

今回、なぜ75歳以上の医療費負担の改正が行われるかというと、一つ目は「団塊の世代」の存在です。「団塊の世代」については聞いたことはある方も多いとは思いますが、具体的には1947年(昭和22年)〜1949年(昭和24年)に生まれた者のことを指します。来年は2022年(昭和97年)ですので、後期高齢者の被保険者がドンと増えるわけですね。現在の後期高齢者の医療負担は、公費約5割(国:4、都道府県:1、市区町村:1)、後期高齢者負担金約4割(現役世代の保険料)、高齢者約1割となっており、高齢者の保険料は年金からの天引きされています。75歳以上の割合が確実な現在、公費と後期高齢者交付金だけでは医療費が賄いきれないということです。ちなみに、後期高齢者負担率は2年ごとに見直すことになっています。

もう一つは、それと対になるのですが、少子化の影響です。若年者の負担が大きくなることへの懸念が年金だけでなく医療にも影響していることは非常に重要です。支え手が不足している中で、現役世代の保険料をこれ以上大きくできないため、ある程度の所得がある高齢者に負担していただくことで折り合いをつけているわけです。

ところで、現在の後期高齢者医療保険制度っていつ制定されたかご存じでしょうか?
遡ること約58年前、わが国の高齢者医療対策は昭和38年に老人福祉法が制定されたことにより始まりを迎えます。この法律は老人健康診査制度を主に置いたものでした。主に、老人の疾病予防、病気の早期発見・早期治療を目的として、市区町村長が65歳以上の者に対して毎年健康診査を行うものでした。
そして10年後の昭和48年に破格な制度が誕生しました。昭和48年は福祉元年ともいわれており、健康保険法改正(7割給付(3割負担、高額療養費制度の開始)、年金制度改正(給付水準引上げ、物価・賃金スライドの導入)、労災保険法改正(通勤災害保護制度の創設、通勤災害による保険給付は健康保険法では行わないこととする)など医療・年金制度の改正が目まぐるしく変わった年なのですが、そのなかでも特に注目を浴びたのが老人医療費支給制度です。これは一定の所得制限は設けつつも、70歳以上の国民健康保険の被保険者及び被用者保険の被扶養者の支給を全て公費負担とし、窓口での負担をゼロとしたものでした。つまり医療費の無償化です。ただで病院に行けるということです。
この制度により、身体に異常のない方でも「とりあえず病院に行ってみよう」、「○○さんと××病院で待ち合わせね」など、病院が老人のサロン化とも喩えられることようにもなり、老人の健康に関する意識が希薄する結果となりました。(そりゃそうですよね、タダで治療してもらえるなら病院嫌いの私でも行きますよ。)
その結果、老人の受診率、医療費等の負担が急激に伸びたことによりあっという間に医療財源は逼迫することになりました。
そしてこれはマズいよねってことで昭和57年に老人保健法が制定、翌58年2月施行することになりました。患者の医療保険費負担や医療財政を勘案して公費負担の引上げぞ措置が講じられましたが、急速な高齢化が進展し、平成18年の医療保険の改革により「給付と負担の均衡」を図り、持続可能な高齢者医療制度も目指して、平成20年4月1日に高齢者の医療の確保に関する法律が施行されたと同時に高齢者医療制度が施行され現在に至るというわけです。

現在でも高齢者に優遇されている措置は多くありますが、わが国は超高齢社会い突入しており、65歳以上の方ひとりを20歳から64歳の方2.2人が支えているといわれています。2025年には、1.8人で支えなければならないことになると推計されています。

個人的には終身雇用制度の廃止や非正規雇用の増加により、年齢だけで負担率が変わるのは時代の流れに適していないと思っているので、応能負担は賛成派ではあります。今回の後期高齢者の医療費の負担も仕方のないことではあると思っています。ただ、根本にあるのは「少子高齢化」ですので、これを解決しない限り、所得制限の緩和等の細かい部分の法改正は免れないように思えます。

現在、18歳以下への10万円一律給付が問題となっていますが、こちらも所得制限を設けることで実現されるようですね。一部ではバラマキとも言われていますが、個人的には「給付」という形ではなく「減免」という形で、負担を軽減していただきたいなとは思いますが^^;

それでは本日もご覧いただきましてありがとうございました。

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