【法改正】年金法の改正(2022.4~)④ 確定拠出年金編

税金・社会保険・労働関係

こんばんは、Kanariyaです。

本日は年金法改正第4弾の確定拠出年金の改正についてご説明します。年金法改正もひとまずはいよいよラストとなりますが、前回までの分も併せてぜひ最後までご覧いただければと思います。
確定拠出年金と聞いてもピンとこない方も多いと思いますが、「iDeCo(イデコ)」と聞くとあーってなりませんか?今回は確定拠出年金(以後iDeCoとします。)についてです。それでは最後となりますが早速いってみましょう!

※今までの法改正については下記をご覧ください。
年金法の改正(2022.4~)① 適用編
年金法の改正(2022.4~)② 在職老齢年金編
年金法の改正(2022.4~)③ 支給の繰下げ編(繰下げ支給の老齢厚生年金)

スポンサーリンク

確定拠出年金とは?

私おなじみのなになにシリーズです。ご存じの方は飛ばしていただいて構わないのですが、法改正項目だけお伝えしてもそもそもの仕組みがわからないと話になりませんよね。なので、私のブログでは制度趣旨から説明することを原則としています。

さて、本題に戻ります。確定拠出年金(DC:Defined Contribution Plan)とは、平成13年6月に制定され同年10月から施行された制度で、拠出された掛金が加入者ごとに明確に区分され、加入者自らが運用指図を行い、掛け金とその運用収益との合計額をもとに給付額が決定されるという自己責任に基づく年金制度のことです。

ここで複数ある年金法改正の中でなぜ私が最後にこのトピックを持ってきたかというと、前回までの3つの改正は公的年金の改正になります。国民皆年金のわが国において対象者は全国民です。強制的に保険料を支払い、徴収され、支給事由が生じた場合に受給できる仕組みとなっています。
一方確定拠出年金は私的年金と呼ばれる部類になります。ですので、強制的に加入するということはありません。上記にも述べましたが、加入者自らが運用指図を行い、自己責任に基づく年金制度のことです。

確定拠出年金法は平成13年施行と比較的新しい法律になりますが、制定背景を見てみましょう。
「この法律は、少子高齢化の進展高齢期の生活の多様化等の社会経済情勢の変化にかんがみ、個人又は事業主が拠出した資金を個人が自己の責任において運用の指図を行い、高齢期においてその結果に基づいた給付を受けることができるようにするため、確定拠出年金について必要な事項を定め、国民の高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を支援し、もって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。」(確定拠出年金法第1条)

冒頭から「少子高齢化」というワードが来ています。年金法改正のブログでは何度か言及していますが、社会保障の基盤が崩れ始め、度重なる法改正が行われているのは紛れもなく少子高齢化の影響なのです。そして「公的年金の給付と相まって」とあるように、公的年金(国民年金と厚生年金保険)だけでは老後はしんどいですよ?というのを暗示しているかのような文言が含まれています。
つまり、労働可能な若い年齢のうちは、しっかり働いて保険料を積み立てるとともに、自ら掛金をを納めて老後に備えましょうというのが政府の今後のビジョンだということが伺えます。
そんなこといっても毎月の社会保険料だけでしんどいのにさらに支出が増えるのはしんどいですよね。この点は後ほど解説いたします。

さて、確定拠出年金のなかでもさらに企業型と個人型に分類されます。

確定拠出年金(企業型)

厚生年金適用事業所の事業主が単独または共同で実施する制度。掛金の拠出は原則事業主が行いますが、加入者は企業型年金規約で定めるところにより掛金を拠出することもできます。(マッチング拠出。)この企業型確定拠出年金の加入者の対象は60歳未満の第1号厚生年金被保険者(一般サラリーマンの認識でOKです)と第4号厚生年金被保険者(私立学校教職員共済制度の加入者たる厚生年金被保険者)です。つまり、60歳未満で国家公務員共済組合の組合員及び地方公務員共済組合の組合員以外の厚生年金保険の被保険者です。

確定拠出年金(個人型)

いわゆるこちらがiDeCoのことです。厚生労働大臣の承認を受けた国民年金基金連合会が個人型年金に係る規約を作成し実施する制度。 この個人型確定拠出年金の加入者の対象は国民年金第1号被保険者、国民年金第3号被保険者、60歳未満の厚生年金保険被保険者(国家公務員及び地方公務員もOK)です。

改正ポイント④ 要件の拡大と緩和

政府が私的年金を推奨していることにより、確定拠出年金の法改正も少し細かくなります。
今回は大きく3つご紹介いたします。

iDeCoの加入可能年齢の拡大(2022年5月~)

一番押さえておいてほしい点です。上記の加入者要件で60歳までと述べましたが、これが65歳になるまで加入できるようになるという点です。この5年間は大きいです。
この年齢要件が撤廃され、事実上国民年金被保険者ということだけが加入の主な要件となりました(ただし、すでにiDeCoの老齢給付金を受給した方、国民年金または厚生年金保険を繰上げ受給した方を除きます。)。
60代前半のサラリーマンの方がiDeCoに加入できるようになることが対象人数の面からも大きな改正点です。60代前半にもなると具体的な老後のビジョンを思い浮かべることが若いころに比べて容易になります。掛金の上限はありますが、選択肢が一つ増えることになりました。
もうひとつ、加入要件が60歳から65歳に緩和されたことで恩恵を受ける方がいます。国民年金の任意加入被保険者です。 国民年金の任意加入被保険者について、(おそらく)本ブログでは解説してないと思いますので簡単にご説明しますね。国民年金の任意加入被保険者とは、60歳到達時に老齢基礎年金の受給資格要件を満たしていない者、受給期間は満たしているが未納期間等があるため老齢基礎年金が少額となってしまう方が65歳まで任意に国民年金保険に加入する方のことです。(詳細は割愛します。)
とはいえ、任意加入被保険者はいままで納めてこなかった方々なので、私のブログをご覧いただいている方は少ないとは思いますが、政府としては生活保護受給者を少しでも減らす狙いがあります。

企業型確定拠出年金とiDeCoの同時加入要件の緩和(2022年10月~)

iDeCoは原則国民年金の被保険者が要件であるため、一定の条件を満たせば会社員でもiDeCoに加入することはできます。そして企業型に加入している方は原則個人型には加入できません。正直、できなくはないのですがその要件が結構キツイいんです。
「企業型年金加入者が掛金を拠出することができることを定めない場合であって、当該企業型年金加入者が個人型年金加入者となることができることを定めるときは、その旨」(確定拠出年金法第3条第3項第7号)とあります。そもそも企業型年金の導入は企業が確定拠出年金法第3条第1項に基づく方法で規約を作成し厚生労働大臣の承認を得なければなりません。この規約を作成するだけでも大変ですし、これを採用している企業はほとんどが大手企業でしょう。そこでさらにその規約に企業型と個人型の双方に加入できる旨が含まれていないといけないんです。なので、社長が「イヤ」と言ってしまえばもうそこで終了です。
これが、本人自らの意思でiDeCoの利用ができるようになります。こちらも掛金に限度額はある者の実質自身で積立てが可能になるので会社の判断を仰がずに動ける点でメリットと言えます。

iDeCoの受け取り開始可能年齢が75歳まで拡大(2022年4月~)

こちらは前回の繰下げ支給の老齢年金と併せて見ていただければわかりやすいと思います。現在iDeCoの受け取り開始時期は、通算加入者等期間によって異なりますが、原則60歳以降70歳になるまでの間で選ぶことが可能です。改正後は最大で75歳になるまで拡大されます。ご自身の健康状態とライフスタイル等を考慮して決めることができますので

まとめ(私見)

先ほど、社会保険料に加えてさらに出費が増えるのは正直しんどいと思う方もいらっしゃるというお話をしました。iDeCoは全額非課税で加入者が拠出した掛金は全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)扱いとなります。ですので、年末調整や確定申告で戻ってくるケースがありますので、計画的に無理なくできる範囲内で積み立てていけば老後のライフプランニングもしやすくなると思います。
ただ、公的年金と違い、繰下げによる増額率の適用はありませんのでご注意ください。
また今回取り扱いませんでしたが、iDeCoの脱退一時金の受給要件の見直しや、確定給付企業年金絡みの制度間の年金資産の移換(ポータビリティ)の改善の改正もあります。

公的年金だけに限らず、私的年金の改正も頻繁にされているので今後も法改正には注目していきたいと思います。

それでは本日もご覧いただきましてありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました