こんばんは、kanariyaです。
今回は年金法改正シリーズ第2弾として在職老齢年金について解説したいと思います。
はじめに、そもそも在職老齢年金って?について、次に改正内容について、最後にどのような影響を及ぼすのか、改正後の展望についても紹介したいと思いますので最後までお付き合いください。
前回:年金法の改正(2022.4~)① 適用編
そもそも在職老齢年金とは?
まず言葉の説明をする前に、「在職老齢年金」という言葉は厚生年金保険法のどこを探しても見つかりません。
もっと言うと「在職」という言葉すらないです。(ちゃんと調べたけど附則にはあるが本則にはないはず。)
そもそも「在職」と「年金」って言葉が相反していると思いませんか?
「年金」とは老後の所得保障だと前回申し上げました。(障害年金、遺族年金はひとまず置いておきます。)なので在職しているときは「報酬」という形で対価を得ているため、年金は退職した後に受給するのが一般的ですし、年金制度を作ったお偉いさま方もそのように想定していたはずです。
しかし、終戦後の法改正で老齢年金の支給開始年齢が5歳延長されました。一般男子は55歳から60歳に、女子・坑内員(炭鉱で働く労働者の方で、危険業務のため一般男子と比べて支給開始年齢を早くして保障)は50歳から55歳に改正されました。現在は昭和60年の改正により、原則65歳を支給開始年齢としています。
つまり、本来はもらえるはずだったのに5年も先延ばしにしやがってどうしてくれるんじゃーという事態が起きました。しかし、政府も対策はしていました。体が元気なうちは頑張って働いて会社から給料をもらってください、でも年金は法改正前と同様に支給しますよ(定年は引き上げるけどね)としました。
これにより、支給開始年齢を遅らせる→定年を延長する→働きながらも受給できる状態が発生する)という人が出てきます。
ただし、会社からもらえる報酬と年金額が一定の額を超える場合は年金の一部または全部を支給停止にしますよという制度も創設しました。すなわち「あなた会社からいっぱい報酬もらっているんだから年金なくても生活できるよね?」という、このちょっとした矛盾を解消するために在職老齢年金という制度が生まれたわけです。
整理すると、在職老齢年金とは「就労し、賃金と年金の合計額が一定以上になる60歳以上の老齢厚生年金受給者を対象として、全部または一部の年金支給を停止する仕組み」です。
勘の鋭い方はもうおわかりかと思いますが、私は先ほど年金の支給開始年齢は原則65歳と申しました。ただ、上記の在職老齢年金の定義は60歳以上の老齢年金受給者となっています。(ちなみに上記定義は厚生労働省のホームページの記載をそのまま引用しています。)
つまり、法改正によって65歳を支給開始年齢にしたけれども、65歳到達前に老齢年金を受給権がしている方がいて、その方たちの年金を一部支給停止にしましょうということです。
改正ポイント② 支給停止調整開始額の変更と在職定時改定
支給停止調整開始額の変更
60歳以上65歳未満の方が受給できる年金を特別支給の老齢厚生年金といいます。(ちなみに書籍によっては「60歳代前半の在職老齢年金」と表現しているものもあります。)
今回の法改正部分はこの特別支給の老齢厚生年金の受給権者の支給停止の額が改正になりました。(上記赤のアンダーラインの箇所。)
現在は基本月額(年金額)と総報酬月額相当額(会社からの報酬)が28万円を超える人は超えた部分の老齢厚生年金については支給停止されています。(この28万円を支給停止調整開始額と言います。)
今回この支給停止調整開始額が28万円から47万円になります。つまり、47万円までは年金とお給料をセットで受け取れるということです。
ちなみにこの47万円は65歳以上の方が受給できる年金額の上限です。(これを支給停止調整額と言います。ややこしいですね。)
在職定時改定
そしてもう一つ、「在職定時改定制度」です。この制度は新しく創設されたものになります。年金制度は文字通り「保険」ですから、納めた分だけ受給額に反映されるものです。しかし、現在は、在職中は原則として老齢年金の額を変更せず、退職して被保険者の資格を喪失した日から起算して1月を経過したときに年金額を再計算する仕組みをとっています。(厚生年金保険法第43条「退職時改定」)
その仕組みが今回の改正で、65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者について、年金額を毎年10月に改定し、それまでに納めた保険料を年金額に反映させることにしました。つまり、退職をしていなくても毎年10月以降は少しずつ再計算されて年金額が増えることになります。
まとめ(私見)
今回取り上げた改正は現役世代の方にはあまり影響のないことかもしれません。
しかし、改正の背景は、「年金を受給しながら働く在職受給権者の経済基盤の充実が図られます。」(厚生労働省のホームページより。)とのことですが、さらにその裏は財源が足りないから受給権者に少しでも働いてもらおうということです。
前回、年金制度の法改正が多い理由は少子高齢化が影響していると述べました。現在合計特殊出生率は約1.3とほぼ横ばいです。支え手となる世代が増えてこないということです。
つまり、今は直接は関係ないかもしれませんが、今後年金を受給される方々はこの改正がさらに改正されていく可能性は大いにあるということです。
私の勝手な予想ですが、将来的に老齢年金の支給開始年齢は75歳からになると思っています。
最後に、私のブログはいつも改正部分だけを解説せずに改正前と改正後、法改正に至った理由・背景を書くようにしているため、ダラダラと読みにくい文章だなと思うかもしれません。
ただ、厚生労働省のホームページ(下記にリンクあります)を見ていただくとわかると思うのですが、これだけだとよくわからなくないですか?
私は普段から法律に限らずですが、既存の制度や仕組みが変わったときは何故変わったんだろうと考えるようにしています。その習慣を身に着けることで、○○が××に変わったんだ、じゃあ今後どうしていけばいいんだろう、そうすれば損をしないのだろうと考え、自分なりに調べるクセみたいなものが出来上がります。
「知っていても得はしないかもしれないけど、知らないと損をするんじゃない?」という考え方なので、「あ、私も!」、「ワシもそうじゃ!」、「おいどんも!」っていう方には今後もぜひお付き合いいただけると幸いです。(わかりやすい表現や簡潔にする努力は今後もしていきますので。)
それでは本日もご覧いただきましてありがとうございました。
参考:厚生労働省のホームページ
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