ついに金融庁が動き出しました。
外貨建保険の解約時に発生する手数料の見直しを各生命保険会社が迫られています。
業界トップの三井住友海上プライマリー生命保険は4月の契約分から廃止し、日本生命保険などは料率を下げる方向です。
そもそも外貨建保険とは?
簡単に言えば払込みをした保険料が外貨で運用される保険商品のことを指します。
この商品は、外貨(主に米ドルやユーロなど)で保険料を払い込み、外貨で保険金や解約返戻金などを受け取る仕組みになっています。
例えば、受け取った外貨を円に換算する場合、為替変動の影響を受け、場合によっては日本円で受け取る保険金額などが円ベースでの払込保険料の総額を下回る可能性も十分にあります。
このように、為替相場の変動によって影響を受けることを「為替リスク(為替相場の変動リスク)」といい為替リスクは当然に契約者または受取人に帰属します。
仮に為替相場が10円変動したときに、
①1ドル90円のときに1万ドルを円に換金した場合⇒10,000×@90円=900,000円となり10万円の為替差損となり、
②1ドル110円のときに1万ドルを円に換金した場合⇒10,000×@110円=1,100,000円となり10万円の為替差益となります。
この外貨建保険が一部の投資家などではトレンドになっていました。
解約時の問題点、苦情の目立ち
保険会社と契約時すると、契約者が払い込んだ保険料は保険会社によって運用されています。公的年金における年金積立金管理運用独立法人(GPIF)のようなものだと思ってください。
ここで解約したいと思ったときに問題が生じます。契約者が解約の旨の意思表示をしてもすぐに返戻金が振り込まれるわけではありません。
保険会社は解約を申し出た契約者に支払う返戻金の金利を2週間ごとに決めるのが一般的とされています。これは解約手続きを終えるまでに金利が動き、時間差(タイムラグ)によって生じる損失などを避ける目的で手数料を設けているようなものです。ただし、約2週間もあれば株価、金利、債券価格が解約申出時と大きく変動してしまうことはみなさまもご存じのことだと思います。
さて、この2週間での危険負担を誰がどのように負担するのでしょうか。
誰がというところに関しては先に触れ通り、為替変動リスクを負う契約者となります。
次にどのようにという部分ですが、値下がりした場合は損失に備えて保険会社は一定率の手数料を確保しておきます。(保険商品によって手数料はさまざまです。)
一方値上がりした場合は、その分は保険会社の売却益として持っていかれてしまいます。ここで気を付けるポイントは、値下がりした場合は損失に備えて保険会社は一定率の手数料も解約時に引かれてしまいます。
この一定率の手数料を「タイムラグマージン」といいます。この仕組みだと保険会社はメリットしかなく、契約者のとってはデメリットしかないことが窺えます。
この仕組みは主に外貨建保険商品の保険料一括で支払う商品に組み込まれています。実際には契約年数や積立年数によってマージン率も変わります。
外貨建ての生命保険を契約する場合、商品の仕組み(為替の変動によって将来受け取る保険金などの額がどのように変動するのか等)について、生命保険会社は書面を用いて説明することになっています。(金融商品販売法第5条など)
知らないうちに失わないように
タイムラグマージンのような仕組みが導入されたのは2002年頃だと言われています。
金融庁は昨年8月に監督指針を改正し、契約者に不当な不利益とならないか監視を強める姿勢を示しいると同時に、外貨建保険を取り扱う金融機関に対し損益の状況を明らかにする指標の導入を求めています。生命保険協会も今年4月に資格制度を始め保険販売員に丁寧な説明を促すなど販売の適正化を目指すとしています。
と、ここまで外貨建保険の件を取り上げてきましたが、外貨建保険にご縁がない方も多いと思います。しかし、住宅費用、引越し費用、携帯電話利用料、電気料金などは如何でしょうか。こちらはみなさんをなにげなく関わりがあると思います。
こうしたものに係る費用も何に対していくらの費用が発生しているかきちんと説明を受け、契約者側も理解をする必要があります。
知らない間にムダな費用を払わないように気をつけたいところです。
※外貨建ての生命保険を契約する場合、商品の仕組み(為替の変動によって将来受け取る保険金などの額がどのように変動するのか等)について、生命保険会社は書面を用いて説明することになっています。
生命保険各社が外貨建て保険の解約時に発生する手数料を見直す。業界トップの三井住友海上プライマリー生命保険が4月の契約分から廃止し、日本生命保険などは料率を下げる。金利の変動リスクに備える保険会社が設定してきたが、契約者に負担を求める不透明さを金融庁が問題視していた。苦情が目立つ外貨建て保険の販売を適正化する動きが広がってきた。
外貨建て保険で3割弱のシェアを持つ三井住友海上プライマリー生命が定額の終身保険や年金保険など全19商品で0.3%の手数料を廃止し、住友生命保険も一時払い年金保険など4つの商品で0.1~0.2%の手数料をなくす方向で調整している。日本生命は0.3%から0.1%に引き下げる方針だ。
ニッセイ・ウェルス生命保険(旧マスミューチュアル生命保険)や第一フロンティア生命保険、明治安田生命保険、メットライフ生命保険も引き下げを検討している。いずれも4月以降に結ぶ新契約が対象で、既存の契約には適用しない。
この手数料は「タイムラグマージン」と呼ばれ、主に保険料を一括で払い込むタイプの外貨建て保険に組み込まれている。各社は解約を申し出た契約者に支払う返戻金の金利を2週間ごとに決めるのが一般的。解約手続きを終えるまでに金利が動き、時間差(タイムラグ)によって生じる損失などを避ける目的で手数料を設けている。
マージンをもとに算出された手数料は返戻金から差し引かれるため、マージンの有無や水準は契約者の受取額に直結する無視できない要素だ。実際にどれだけ引かれるかは、積立金や契約から何年で解約するかによって異なる。
たとえば保険料10万ドル(約1150万円)の定額年金保険で積立利率を1.50%、マージンの水準を0.35%などとした場合、5年が過ぎた時点で解約すると1838ドル(約21万円)引かれる計算だ。実際には解約控除などほかの要素も加わるため、差引額の合計はこれより膨らむ。
マージンは生命保険会社が金利の変動による売却損を吸収するためのしくみだが、逆に売却益が生じても契約者には還元されない。こうした慣行が始まったのは2002年ごろからとされる。金融庁は昨年8月に監督指針を改正し、契約者に不当な不利益とならないか監視を強める姿勢を示した。
日本生命など大手がマージンの水準を下げる0.1%という利率は、解約の申し出を受けてから米国債などを売却する際に証券会社へ支払う手数料率とほぼ同水準だ。契約者に求める負担は売買に伴う「実費」だけとなり、金利の変動リスクを転嫁するしくみはほぼなくなることになる。
比較的高い利回りを見込める外貨建て保険は、途中で解約しても運用の成果によっては元本を上回る返戻金を期待できるため、資産運用を目的に契約する場合が多い。それでも円高が進むと円換算後の受取額が目減りすることもあり、国民生活センターに寄せられる苦情は少なくない。
金融庁は外貨建て保険を取り扱う金融機関に対し、損益の状況を明らかにする指標の導入を求めている。生命保険協会も4月に資格制度を始め、販売員に丁寧な説明を促すなど販売の適正化をめざす。
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