【ウソ、ホント?】サラリーマンが天引きされる税・保険料負担が増加 2023年に負担率50%超へ?

お金・金融

こんばんは、kanariyaです。

本日は、一部Twitterにて話題になっていた「税・保険料負担が2023年に負担率50%超へ」という記事について触れていきたいと思います。

内容についてはこんな感じです。
2003年での負担率は39.38%
(厚生年金13.58%、健康保険8.2%、雇用保険1.75%、税金(所得税+住民税)15%、介護保険0.85%)
2013年での負担率は46.0%
(厚生年金18.3%、健康保険10%、雇用保険0.9%、税金(所得税+住民税)15%、介護保険1.80%)
2023年での負担率は50.05%
(厚生年金18.3%、健康保険12%、雇用保険1.95%、税金(所得税+住民税)15%、介護保険2.8%)

いかがでしょうか。今まで私のブログを見てくださっている方もそうでない方も、普段人事・労務のお仕事に携わっている方も、税金・保険料なんて知らないわよって方も一度考えてみてください。
今回は結論から申し上げて、どういう展望になりそうなのか解説していきますので最後までお付き合いください。

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結論

まず、給与所得者の方に質問です。
直近の給与明細を見てみてください。お給料から46%も控除されていますか?
中には組合費や前月分の社会保険料や所得税が引かれていたりして正確な数字はわからないと思いますが、少なくとも半分弱も引かれていますか?
月給30万円の方であれば46%の13万8000円引かれて16万2000円になるわけですが、そんなことないですよね?

ということでこの情報は誤りだということがわかります。ではどこがおかしいのか具体的に見ていきましょう。

①社会保険料の負担率の捉え方

今回取り上げられている社会保険は、①厚生年金保険、②健康保険、③雇用保険、④介護保険ですが(広義の)社会保険はこの4つに加えて⑤労働者災害補償保険(労災)の計5種類があります。
そして、それぞれ負担割合と負担者が異なることがポイントになります。

まず、比率の①多い厚生年金保険ですが、こちらは、2017年9月以後の月分から18.3%で固定する保険料水準固定方式が導入されたことで今後もこの割合は変わりません。(第4号厚生年金被保険者いわゆる日本私立学校振興共済事業団の被保険者の方は17.1%ぐらいのはずです。今後段階的に引き上げが行われ2027年に18.3%に固定されます。)
ということで正しいんだねーウンウン、と思ったそこのアナタ!!!!!
厚生年金保険の保険は労使折半のはずですよね。つまり、従業員分の負担率は9.15%になるはずです。しかし、上記記事は会社負担分も含まれて算出されています。よってここがまずおかしいです。
次に、②健康保険。協会けんぽの被保険者であればわかりやすいですが、厚生年金保険と健康保険は原則同時加入となっています。被保険者取得届のタイトルも「健康保険・厚生年金保険被保険者資格所得届」となっています。ということは、健康保険の保険料も労使折半の保険ということがわかります。(組合健保や国保組合の被保険者は適用除外を同時に提出します。)ということでこちらも会社負担分も含まれて算出されているので誤りだということがわかります。 2021年の健康保険料率が10%でシミュレーションされていますが、協会けんぽだと都道府県ごとに割合が違うのでここは深く突っ込まないようにします。(ちなみに東京都の場合、9.84%か11.64%の折半額4.92%か5.82%。)
ここで今なぜ9.84%か11.64%と分けたのかというと、 ③介護保険の関係があるからです。介護保険には第1号被保険者と第2号日保険者の2種類が存在し、前者は市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者、後者は市町村の区域内に住所を有する40歳以上65歳未満の医療保険加入者となっています。
介護保険料は所属している医療保険制度における医療保険に係る保険料とともに給与から控除されます。
つまり、40歳以上65歳未満の方は健康保険料と介護保険料の合計11.64%(9.84%+1.80%)それ以外の方は介護保険料はかからず健康保険料(9.84%)の負担になります。上記記事では全員に介護保険料がかかるような書き方に見えるのでこれも誤りです。(そもそも折半負担になっていない。)
次に④雇用保険料ですが、雇用保険料と⑤の労災保険料は根拠が労働保険徴収法という法律で定められています。雇用保険率はは業種によって異なりますが、今回は簡単に0.9%と考えていただいてOKです。(詳細はこの記事をご覧ください。)
ただ、雇用保険料も上記3種類の保険のように労使折半ではないものの、会社側の負担もあります。例えば0.9%の負担の会社は、会社負担0.6%、従業員負担0.3%となり、会社側の負担を多くしている仕組みになっています。ですの上記記事のように従業員の負担率が0.9%になることはありません。
最後に⑤労働者災害補償保険料ですが、こちらは全額会社負担の保険になりますのでここでは触れられていないですね(保険料率は業種によって異なります)。みなさんの給与明細を見ていただくとわかりやすいのですが、労災保険料の項目がないはずです。ということでこれは間違いないということになります。(そもそも触れられていないのですが・・・)

この記事のちょっと悪質なところは、注意書きで「社会保険料は会社負担分も加えている」と小さく記載しているところにあります。そもそも会社負担分は給与から控除されるわけがないのですからわざわざ含めて算出する必要性がありません。最初から会社負担分を除いて提示すればいいだけのことです。会社負担分を含めることで%の比率が大きく見えるような内容にしてクリック数を稼ごうとする意図が垣間見えますね。

②税金が給与を基に計算されているように見える

給与計算をされたことがある方、まさに今の時期ですが年末調整など税務に関わったことがある方なら当然わかることだと思うのですが、社会保険料は給与を基に計算されるのに対して、税金は所得を基に計算されます。
ただ上記記事の表現は月給に対して15%の税率がかかるように見える気がします。
税金というのは給与に対してではなく所得に対してかかるものです。(これを課税所得、課税対象額などと言います。)そして所得というのは収入から控除を引いたものになります。控除にもいろいろあるのですが、基礎控除、給与所得控除、配偶者控除、そして上記の社会保険料控除などがあります。
さすがに納めた社会保険料に税率をかけるのはおかしいよねってことで認められています。
なので、独身の会社員の方でも、基礎控除、給与所得控除、社会保険料控除は収入から引いてから税率をかけなければいけません。その控除して算出した額を給与所得の源泉徴収税額表の表に当てはめて計算します。ちなみに住民税はだいたいどこも同じで10%という認識でOKです。(市区町村民税6%、都道府県民税4%)

ですので、 全員が税金(所得税+住民税)15% と簡単に決めるのは少し無理があるような気がします。(結果は合っているのでいいのですが。)

では正しい負担率は?

記事の通り、月給30万円の43歳男性に42歳の専業主婦がいるという例で計算してみます。

①厚生年金保険は18.3%で変わらないので2万7450円でいいでしょう。
②健康保険は加入している保険者によって差はあるものの東京都の協会けんぽ所属と仮定するし9.84%として折半額の4.92%とみなして、1万4760円。
③介護保険の第2号被保険者に該当するので、1.8%の折半負担率0.9%をかけて2,700円。
④雇用保険は現在料率を引き上げるような案が出ていますが、いきなり1.95%になることは考えにくいため、仮に1.8%とし従業員負担分を0.6%とすると1,800円。
となり、4万9410円となり、年収360万円の場合59万2,920円となります。

お次に税金ですが、こちらはあらかじめ計算しておいたのでそのまま引用します。
基礎控除48万円
給与所得控除116万円
配偶者控除38万円
社会保険料控除59万2,920円
収入360万円から261万2920円を引いた98万7,080円が所得になります。
ここに所得税5%、住民税10%をかけて14万8,062円となります。

よって年収360万の人が2023年に負担するであろう社会保険料及び税額は74万982円となり、年収に占める割合は約20%となります。
税率の予想や私の計算ミスもあるかもしれないのですが、少なくとも50%を超えることはありません。

まとめと私見

健康保険料、介護保険料及び雇用保険料は確かに上がる可能性はあります。
ただし、健康保険料の場合、厚生労働大臣が都道府県における健康保険事業の収支の均衡を図るうえで不適当であり、協会が管掌する健康保険の事業の健全な運営に支障があると認めるときは協会に対し相当の期間を定めて当該都道府県単位保険料率の変更の認可を申請すべきことを命ずることができるとし、協会が前期の期間内に申請しないときは社会保障審議会の議を経て適切な保険料率にすることが法律上定められています。(健康保険法160条10項及び11項)。つまりいきなり保険料が急激に上がるとは考えにくいのです。

今回はあまりに広がっていた問題に乗っかる形となりましたが、大切なのは、誰が書いてその根拠はどこにあるのかを冷静になってみることです。
これは今回の話題だけに限りません。CMや新聞等だけで判断する方もいますが、今はインターネットがある時代です。調べようと思えばいつでも調べられる時代にあります。
めんどくさがらずに気になったことはまず冷静になって考え、そこから疑問を作り出しそれに対して回答を見つけるという習慣を身に着けたほうがいいです。国がやってくれるから、会社がやってくれるからと誰かに任せきりではいけません。自分のことは自分でできるようにしましょう。

それでは本日もご覧いただきましてありがとうございました。

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