【平均賃金】日本の賃金はなぜ上がらないのか?(前編)

お金・金融

こんばんは、kanariyaです。

本日は、近年よく言われている日本の賃金の動向について考えてみたいと思います。
ここ最近は法改正や社会保険関係のトピックを多く扱ってきましたが、今回は少し変わって私たちの日常生活にダイレクトに影響を与えることお金について今後どうなっていくのか気になりますよね。
新型コロナウイルスの影響もあって、ここ数年のわが国のニュースも何だか暗い話題が多いような気がします。

その中で先日、景気回復をテーマとしたドキュメンタリー番組を偶然目にしました。だいぶ前の記事になりますが、2021年10月から変わる身の回りの出来事でも述べた通り、さまざまなものが値上がりしています。具体的にはガソリン代や電気代、小麦、マーガリン、コーヒーなど、年間4万6000円の負担が増えるとも試算されています。じわじわと広がる物価上昇が、景気回復の妨げになろうとしているということです。この番組では日本の現状の賃金についても少し取り扱っていたので私なりに考えてみました。

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日本の最低賃金は?(復習)

さて、ここでみなさまに問題です。
現在のわが国の最低賃金はいくらでしょうか。(全国加重平均額でも、お住まいの都道府県の地域別最低賃金額でもOKです。)

正解は930円です。最低賃金についてはこちらの記事でも取り扱ったので参考にしていただきたいのですが、ここ20年間の平均を見ても一度も前年を下回ったことがないんです。東京に至ってはすでに1,000円を超えていて2021年10月からは1,041円となっています。私は普段からいろいろな企業の求人票を見ることが多いのですが、毎年10月1日から一斉に変わります。もし前年の1,013円のままの求人場や、お勤め先の時間単価が変わっていなかったら要注意です。(お勤め先で反映されていなかったら周りにご相談してくださいね。)

さて、最低賃金だけ見ると毎年上がっているので、ここだけ見ると一見景気が良くなっているのではないかと思ってしまいますよね。
地域別最低賃金は全国的な整合性を図るため、毎年中央最低賃金審議会から地方最低賃金審議会に対し金額改定のための引上げ額の目安が提示され、地方最低賃金審議会ではその目安を参考にしながら地域の実情に応じた地域別最低賃金額の改正のための審議を行っています。
主に、(1)労働者の生計費、(2)労働者の賃金、(3)通常の事業の賃金支払能力を総合的に勘案して定めるものとされており、「労働者の生計費」を考慮するに当たっては、労働者が健康的で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮することとされています。

企業物価指数と消費者物価指数

最低賃金は上がっているのに、景気が良くなったの感じないのは別のところに原因がありそうです。
そのわかりやすい原因の一つが物価の上昇です。

みなさんは企業物価指数と消費者物価指数という言葉をご存じでしょうか。
企業物価指数(Corporate Goods Price Index、略してCGPIとも言います)とは、企業間で取引される商品の価格に焦点を当てた物価指数のことを言います。商品の需給動向を敏感に反映する取引価格の動向が調査されるので景気判断に活用することが大変多いものになります。企業物価指数は日本銀行が算出し毎月公表しています。
一方、消費者物価指数(Consumer Price Index、略してCPIとも言います)とは、消費者が購入するモノやサービスなどの物価の動きを把握するための統計指標であり、こちらは総務省から毎月発表されています。
この2つの指数ですが、企業物価指数(国内)は昨年の11月の数値と比べて9%も上昇しています。伸び率は第2次石油危機の影響が残る1981年1月以来、約40年ぶりの大きさとなっています。これは世界的な資源価格の上昇と円安の進行が幅広い製品の価格を押し上げていると言えます。一方で消費者物価指数は前年と比較してほぼ横ばいとなっています。
つまり、原材料の高騰化により、企業が仕入れすることが難しくなり、仮に仕入れをすることとしても消費者の購買が増えないという循環に陥っていると言えます。
原材料の高騰化によるモノの価格やサービスは本来は最終的に消費者に転嫁されるのが一般的ですが、値上げしてしまうと消費者が購入をためらうので、結局は企業自らが負担しているという選択をとらざるを得なっているのが現状です。

平均賃金の推移

景気を回復するためには、原材料が上がった分は値上げをして利益を出し、その分賃金も上げるサイクルを作ることがどうしても必要になります。しかし、わが国の賃金は欧米諸国が上昇傾向にあるにも関わらずこの30年ほとんど上がっていません。このアンバランスが消費者の購買意欲を喪失させ、消費よりも貯蓄にシフトしているという傾向が見られるようになっています。
ちなみに、30年前というと、ちょうどバブル期が終焉を迎えたくらいになります。そのときからわが国の平均賃金がほとんど変化してないってなんだかとても不思議というか奇異に感じます。

製造メーカーの現状

日本のものづくりはとても評判がいいことはよく耳にしますよね。ただ、そのものづくり大国の工場機械が軒並みストップしているというのです。単価の安い部品は東南アジアで製造しているらしいのですが、その東南アジアが新型コロナウイルスの影響によりロックダウンしたことで輸入できない、今年の2月頃に発生したアメリカテキサス州の大寒波により、化学工場がダウンし樹脂が届かなくなった、中国の電気不足による工場の稼働停止といったことが起こっており、モノを作りたくても作れないというのです。
特にいま世界的に半導体の不足が騒がれています。新型コロナウイルスの影響により、テレワーク、リモートワークという言葉が当たり前になりました。外出禁止や渡航制限、総務省によるテレワークの推奨によりパソコンなどの製品の需要が増え続けています。部品が届かず出荷ができなければ、せっかくの業績を伸ばせる機会を失うことにつながります。

ところで、メイドインジャパンの製品は自国だけにとどまらず、海外からも評判がよく一時期は「爆買い」という言葉がトレンドに上がるほど、外国人による買い占めが起こるほどでした。
「高かろう良かろう、安かろう悪かろう」、日本にはこんなことわざがあります。意味は文字通り、価格が高いものは高品質だろうし、価格が安いものは粗悪だろうということですが、わが国では高品質のものを低価格で販売しよう、いわゆる「安かろう、良かろう」正義とする企業が多いです。日本の製品って安心で安全なモノが非常に多いですよね。故障が起こりにくいことに加えメーカーによる保障も手厚い。外国の方が日本にの商品を見て、高品質なモノが低価格で手に入ることに驚くこともよくあることのようです。
しかし、高品質なモノを低価格で販売すると、その分大量生産が必要になり、結果原材料の不足にもつながります。その品質にあった適正な価格で販売することでそのモノの本来の価値を消費者が実感できる機会が得られると思います。これについては個々の企業だけの判断だけではなく業界全体で考え直す機会がないと難しいと思いますが、過剰な供給は賃金の上昇、ひいては景気の改善にはつながらないと考えます。

人材・労働分野の変革

今でこそ転職という選択を採る人が増えていますが、わが国では未だに年功序列制度が残存しています。人口が多い団塊ジュニアの世代が中高年期になることで、企業にとって人件費の無駄なコストの部分を削減しようという考え方にシフトしながら終身雇用制にお別れをし、人材の流動化が図られることはいい傾向だとは思います。転職=悪だと決めつけない社会になってほしいと願っています。

ただ、日本はいまだに新卒一括採用をしている会社が多くありますよね。新卒一括採用が開始された理由は、終身雇用、年功序列などに見られるような長期雇用が前提での働き方と深く結びつくものです。大手企業のように各部署を数年経験して他部署に異動するジョブローテーションや、OJTやOFF-JT、社内で資格や検定を取得させる制度、eラーニングなど、企業による教育があって成り立つものです。

わが国の多くの企業が、バブル崩壊後あたりから経営悪化を恐れ人材に投資をすることを控えはじめ、内部留保等に回すことが増えました。在籍年数や年齢により賃金が上昇する企業では、人件費に回すことが困難になり、早期退職制度を募るところもあります。

新卒一括採用、終身雇用制、年功序列制は、本来人件費に余裕のある大企業や職人を育てる教育環境が整っている製造業などがとるべき人事戦略のため、小売業やサービス業等で採る方法としてはよほど基盤が安定していないと難しいように思います。

現在、ジョブ型雇用への移行を進める企業も増えています。ジョブ型雇用とは、職務の内容で給与が決まり、職務内容は原則変わらない、その職務には人数の上限があるというようなものです。私はジョブ型雇用にメリットはあると思っています。労働者の目線では、専門の仕事に集中しやすいことでその分野のスキルを磨きやすい、自分の得意分野に集中しやすいというのがメリットである一方、企業側からしても専門分野に強い人材を採用できたり、新しく雇用する予定の人材を育てていきやすいことがメリットとして挙げられます。デメリットとして、自社よりいい条件の会社に転職される可能性があるということです。ただこれに関しては、企業側の評価基準によるので一概にデメリットとは言えないのかなとも思います。企業が企業なりにその人を評価をした上で、その労働者が自分で選択した結果、今の環境に留まることになるのか、それとも別の企業に行く結果になるのか、どちらにしてもそれはそれでいいと思います。ジョブ型雇用の難しいところは人事評価制度の構築にあると思います。ジョブ型雇用については今後別の機会にお話ししたいと思います。

ちょっと長くなってしまったので・・・

私の主観ですが、日本の現状の景気はとてもよくなっているとは感じていません。スーパーに買い物に行っても、価格が上がったなーとか、価格は変動ないけど明らかに量が減ったよなーとか感じることがかなり増えました。自分にとって本当に必要なものだけを購入するようになったのでムダ使いが減ったのは私にとっていいようにとらえていますが、固定費などの見直しなども検討しなけれななりません。

次回は、主に人材・労働面での続き(雇用形態、職場環境、生活環境等の変化)に考えていきたいといきたいと思います。

それでは本日もご覧いただきましてありがとうございました。

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