こんばんは、kanariyaです。
本日は、今まで解説してきた年金法改正について、私なりに感じたことを書いてみようと思います。
以下前回までの年金法改正シリーズ全4回分です。
・年金法の改正(2022.4~)① 適用編
・年金法の改正(2022.4~)② 在職老齢年金編
・年金法の改正(2022.4~)③ 支給の繰下げ編(繰下げ支給の老齢厚生年金)
・年金法の改正(2022.4~)④ 確定拠出年金編
公的年金について
年金法改正① 適用範囲の拡大
年金法改正①は適用範囲の拡大について取り上げました。これは、短時間労働者(パートタイマー、アルバイト)の対象範囲を段階的に広げていくというものでしたね。従来は継続して1年以上使用される見込みであったところを継続して2か月を超えて使用される見込みとされるものは初めから社会保険に加入させるといいうもので、このタイミングに合わせて事業所常時500人超のところ常時100人超をいきなり適用の拡大をしています。加えて2年後の2024年からは常時50人とさらに範囲を広げていく予定としています。
現在のわが国では非正規雇用の労働者の割合が全体の労働者の約37%(2,090万人)となっています。(内訳はパートタイマーが約1,000万人、アルバイトが約450万人、契約社員が約280万人、派遣社員が約138万人、嘱託社員が約116万人、その他約85万人。)
この数字はここ10年でほとんど変わっていません。ではなぜこのタイミングで被保険者要件を拡大したかについて、雇用状況が不安定な非正規労働者にも厚生年金の対象を広げて老後の年金資金を確保してもらうことが狙いというのと同時に、現在の年金財源を加味しての判断だと思います。
以前も申し上げましたが、第一次ベビーブームに産まれた団塊の世代が現在71歳から74歳あたりになっており、年金を繰り下げていたとしてもすでに受給権がある方々はほぼ全員年金を受給しており、後期高齢者になっていく時期になります。
つまり、年金財源に加え、医療財源も枯渇してきており、支え手となる現役世代からの負担をどうしても増やさざるを得ません。厚生年金保険料は保険料水準固定方式により18.3%とすることにしたものですから保険料率はこれ以上上げられません。2021年9月から厚生年金保険の標準報酬月額等級を1段階引き上げたのも、経済的に余裕のある方から保険料をいただくことにするしかなかったわけです。
ちなみに、非正規労働者の割合はここ10年間横ばいと言いましたが、非正規労働者の65歳以上の割合は年々増加傾向にあります。2017年8月から受給資格期間が25年必要だったところ10年以上あれば老齢年金を受け取ることができるようになりましたが、その年金だけでは生活できず、年金を受給しながら非正規として働いている方が多いということが伺えます。
少し逸れますが、今回の改正で2024年からは常時50人以上が対象になると述べましたが、 この人数制限が別のところにも影響が出てくるので今後取り上げたいと思います。(主に事業主の方要注意です。)
年金法の改正② 在職老齢年金
年金法の改正②では在職老齢年金について触れました。主に60歳から64歳までの方で年金をもらいながら報酬を得ている人はある金額以上受けとっていると年金の支給が一部または全部停止になるというものでした。その金額の条件が緩和されて、65歳以上の年金受給者と同じ上限額となり、働き方に多様性を見出すことができるようになったということです。
これは近い将来、年金の受給開始年齢が70歳から段階を踏んでいき、最終的には75歳になるのではないかと思っています。根拠としては、健康寿命があがってきていることです。
わが国は時代が進むにつれて医療の発展も進化を遂げています。平均余命は全国トップクラスにいるのも納得がいきます。ですので、まだまだ働けるうちは年金に頼らずに働きながら社会とつながりを持ちつつ更に長生きしてくださいというメッセージです。確かに、今までバリバリ働いていた人が退職後急にやることがなくなってしまうというのは私の周りでもよく聞きます。かといって体力の低下は否めないし毎日働くのもなーということで非正規でも例えば週に2、3日働くのは双方にとって良いことだと思っています。
在職老齢年金の改正は現役世代の我々にとってあまり関わることのないことではありますが、そもそも自分が掛けた保険料なのに停止されるっていうのはなんとなく理解できない気がしなくもないですよね。
昭和36年4月2日生以降の方は特別支給の老齢厚生年金を受給することができないのでこの改正も今回の改正の中では比較的重要度が低いものになりますが、みなさまの周りの方で対象の方がいらっしゃったら教えてあげてください。
年金法の改正③ 支給の繰下げ編(繰下げ支給の老齢厚生年金)
年金法の改正③では支給の繰下げについて触れました。個人的にはこの改正が一番注目してほしいものになります。これは従来の繰下げ可能年齢の70歳が75歳まで可能になるというもので、1年間で0.7%の増額率が適用されることになるというものでした。
これも上記の在職老齢年金と同じく、労働可能のうちは少しでも会社からの報酬で生活していただいて、退職したら増額率が適用された年金で生活してくださいという狙いがあります。増額率は今後変更になる可能性はありますが、現在の定期預金の円預金金利が0.002%であることを考えると、とんでもない利率であることになります。これらを見てしまうと、バブル期の定期預金の金利が8%って今では考えられないですよね。単純に1億円預け入れたら年間800万円の金利が付くわけですからそれだけで暮らしていけた人もいたようで、その時代に生まれていたらどうなっていたんだろうと思います。
働くことに疲れた人もたくさんいる一方で、老後は自分なりに社会貢献したいと思う方も結構いるようです。働き方の多様化で、朝の満員電車や嫌な上司と顔を合わせなくてもお金を稼ぐ方法が増えました。現役時にたくさん知識を得た方はそのノウハウを活かして収入を得ることも比較的に容易になりました。今の労働社会では社内教育はおろか研修すらまともにできないところも多く見かけます。昔と比べて人材に投資するのではなく社内留保にする傾向がありますので仕方のないことだとは思います。なので、自分の身体が元気なうちは、今までやったことのない分野にチャレンジして自らの価値を高めていくことが求められているのかもしれません。
私的年金
年金法の改正④ 確定拠出年金
上記3つは公的年金、いわゆる厚生年金保険(健康保険)に関するものでしたが、最後は私的年金の改正でした。私的年金とは掛金を納める方が自らの責任で運用の指図をし給付額を決定するというもので近年政府が大々的に推進しているものでもあります。「iDeCo」というフレーズで浸透しているものです。
私的年金は公的年金と違い、性質がかなり違うのでお国が勝手に徴収して、お知らせしてくれて、振り込んでくれてというものではなく、自分から主体的に運用に携わらなくてはいけません。掛金にも上限があり、株やFXとは異なり自由度は少ないですが、自分の掛けたお金がどのように動いているかを確認するのには適しているといえます。
また、これはいつも思うのですが、わが国はお金に関することを義務教育で学ぶ機会はほぼゼロだと思います。私はむかしに簿記の勉強をはじめてから会社のお金の流れや、もっと身近な例では普段自分の支払っていた税金、保険料がどのような仕組みなのか、どのように活用されているのか関心を持つきっかけとなりました。私なりのお金に関する考え方はいつか記事にするかもしれないですが、確定拠出年金についてはただ何となく徴収されてという考えは捨てていただく必要があります。iDeCoについては情報もたくさんありますので調べてみるといいと思います。
年金改正法に関するまとめ・私見
さて、ここまでいろいろと見てきましたが、現在のわが国は新型コロナウイルスの影響により、景気の悪化、賃金が上がらない、消費が増えない、企業が儲からない、賃金が・・・の負のスパイラルに陥っている状況です。加えて、物価の上昇といわゆるスタグフレーションのような状況になっており、今まで通りも生活をすることすら難しくなっています。
一時期は新型コロナの影響が緩和されたらリバウンド消費を期待する声もありましたが、先日になってオミクロン株という新たな変異株が発見され、国民の財布の紐も硬くなってしまいそうです。
わが国が現在のような状況になっているのは「少子高齢化」です。上記法改正の背景はすべてこれにあります。わが国に限らず少子高齢化の国は多いのですが、高齢社会、超高齢社会になる速度が他国と比較して圧倒的に早いです。また、ここ20年の平均賃金の推移をみても、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスは上昇傾向にあるのに対して、日本はほとんど上昇していません。これは新型コロナウイルスの影響がなくても同じだったでしょう。
3、4年前の厚生労働白書にはよくこれからの時代は公助(行政の役割)だけではなく共助(ともに支えあう)ことが必要になってくると医療・介護や社会保障関連の項目において多く記載がありました。ただ、この流れだと共助どころか自助がメインになりつつあるのではないでしょうか。社会保険というのはみんなから集めた保険を国が必要に応じて配分するという共助(+公助)の性質を持っています。
しかし、上記改正において特に確定拠出年金がそうですが、国の制度に頼らず自らの責任で運用する制度を推奨していることから自助の流れへと変化しているようにも思えます。
いずれにしても、他人任せにせずに、普段から自助努力をすることをやめないことが必要だと思います。ただ、少子化の対策をしない限り、社会保障はどんどん脆弱になっていくと思われます。少子化に関しては自助だけではどうしようもありません。
社会保障と少子高齢化は必ず表裏一体の問題にあります。若者が高齢者を支える仕組みだからです。ですので、被保険者の要件を拡大をしても、高齢者が労働できる環境を整備したとしても、年金の繰下げ可能年齢が緩和されたとしても、安心して子育てができる環境が整わない限りは根本的な問題は解決できないように思います。厚生労働省は2040年には合計特殊出生率は1.43になると見込んでいるようですが今後どのような政策を打ち出していくか注目したいところです。
それでは本日もご覧いただきましてありがとうございました。
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