不動産は金融資産と比べて、個別性が強く、法律の適用、価格の決め方、課税方法、譲渡をした際の取り扱いなどやや煩雑になります。金融資産運用の章と同様に難しい分野となりますが、次章の相続と合わせて学習すればわかりやすい分野ともいえます。
完全に理解できなくてもどんどん先に進み、あとで再度復習する時間を設けましょう。また、不動産の取引と不動産の譲渡時の税金は頻出事項ですので、優先して学習しましょう。
注意
※合格に必要なところだけをピックアップ。とにかく試験に合格したい方向け。(主に学科対策。)
※2021年10月1日時点の法令を根拠とする。
不動産の見方(重要度★★★★☆)
不動産登記
法務局によって管理されている土地や建物についての情報を集めたもの。一般に公開されており、登記事項証明書は誰でも取得が可能。
不動産登記簿
表示の登記 | 表題部 | 土地・建物の物理的現況(所在地、地番、家屋番号、地積、面積※等) |
権利の登記 | 甲区 乙区 | 所有権に関する事項(買戻特約、差押え、所有権登記・移転等) 所有権以外に関する事項(抵当権、根抵当権、地上権等の物権) |
※分譲マンション(区分所有)の場合、登記簿の表題部に記載される床面積は内法面積であり、通常の面積(壁芯面積)とは異なるのが一般的。
内法面積:壁の内側部分のみで測定した面積のことであり、実際に居住するスペース。
壁芯面積:壁の厚さの中心部分を結んだ線で測定した面積。
不動産登記簿の登記事項は頻出。(表題部、甲区、乙区の入れ替え等)
公図
不動産登記法第14条では「登記所は、地図及び建物所在図を備え付けるものとする。」と定めており(14条地図)、この地図は正確な測量で作成しなければならないので、この地図が備えられるまでこれに代えて地図に準ずる図面を備え付けることが必要となり、その1つが公図。公図は旧土地台帳法によって保管されていた土地台帳附属地図であり、明治の地租改正に起源を持つ図面のため、正確性に欠ける。
登記の効力
対抗力はあるが公信力はない。
対抗力
自分の権利を第三者に対して主張できる権利。
公信力
登記された内容を信じて取引された者が法的に保護される権利。(つまり、登記の内容を信用して取引をしても権利を取得できない可能性がある。)
仮登記
登記すべき物件の変動は発生しているが、登記に必要な書類等が提供できない場合に、将来の登記上の順位を保全することを目的としてあらかじめ行う登記手続のこと。なお、仮登記のみでは所有権の移転を第三者に対抗することができない。
土地面積の確定方法による売買
実測売買
実測面積を用いて取引金額を確定させる方法。いったん、登記面積に基づき契約の履行がなされた後で実測した面積との差異により売買代金を精算する。
公簿売買
登記面積を用いて取引金額を確定させる方法。実測面積と登記面積とが相違してもその差異に基づく売買代金の精算はしない。
現況有姿売買
現状のままの状態で売買する方法。
不動産に関する民法上の権利
物権
物を支配する権利。所有権、抵当権、地上権等。その対象の物に対する絶対的な権利なので譲渡も可能。
債権
人に何かを請求できる権利。不動産に関するものでいえば賃借権が該当する。土地の賃借権の場合、地主(債権者)から土地を借りて使用する権利があるということになる。物件とは違い絶対的な権利ではないので、その権利を譲渡する場合は地主の許可が必要。
不動産鑑定基準
更地
建物等の定着物がなく、かつ使用収益を制約する見地の付着していない宅地。(抵当権はついていてもOK。)
底地
宅地については借地権の付着している場合における当該宅地の所有権(借地権設定者の権利)。
建付地
建物等の用に供されている敷地で建物等及びその敷地が同一の所有者に属している宅地。
不動産の価格(重要度★★☆☆☆)
土地価格の調査
公示価格 | 基準地標準価格 | 相続税(路線価)評価額 | 固定資産税評価額 | |
実施目的 | 一般の売買の目安 | 公示価格の補完的役割 | 相続税・贈与税を算出するための根拠となる指標 | 固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税を算出する際の基礎 |
決定機関 | 国土交通省(土地鑑定委員会) | 都道府県 | 国税庁 | 市町村(東京23区のみ東京都知事) |
評価基準日 | 毎年1月1日 | 毎年7月1日 | 毎年1月1日 | 前年1月1日(3年に1度評価替え) |
公表時期 | 3月下旬 | 9月下旬 | 7月上旬 | 3月1日(基準年度は4月1日) |
対公示価格の価格水準 | 100% | 100% | 約80% | 約70% |
代表的な不動産価格の鑑定評価の手法
原価法
現在、対象の不動産と同じものを創設した場合にいくらになるのかという再調達原価を求め、これに減価修正をして現在の評価額を求める方法。
取引事例比較法
対象不動産の近隣・類似地域で、過去に実際に取引された価格と比較して評価額を決定する方法。
収益還元法
対象の不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の価格を求めることにより収益価格を算出する方法。DCF法など。
※DCF法(Discounted Cash Flow):割引キャッシュ・フロー法ともいわれ、資産が生み出すキャッシュ・フローの割引現在価値をもってその理論価格とする方法。
建物の代金には消費税はかかるが、土地取引には消費税法上の非課税取引に該当するため、土地代金は非課税。
不動産の取引(重要度★★★★★)
不動産の取引について
手付金
不動産の売買契約時に買主が売主に渡す金銭のこと。
相手方が契約履行の着手前であれば、買主は手付金を放棄することで契約の解除が可能。一方売主は手付金の倍額を買主に支払うことで契約を解除できる。(手付倍返し)
手付金は売買代金の2割が上限。
履行の着手とは、「客観的に外部から認識出来るような形で、契約の履行行為の一部をなしたこと、または履行の提供をするために欠くことの出来ない前提行為をしたこと」と解釈されています。(最高裁判決昭和40年11月24日)
(例:「買主が代金の用意をして売主に物の引渡しをするように催告したこと」、「売主が他人の不動産を取得して登記を得たこと」などがあります。)
危険負担
危険負担とは、売買等の双務契約が成立した後に、債務者の責めに帰することができない事由(地震や津波の天変地異)で目的物が滅失・毀損等してしまったことにより履行不能(後発的履行不能)となった場合において、そのリスクを当事者のいずれが負担するかという問題のことをいう。
特定物に関する物権の設定又は移転を目的とする双務契約(不動産売買契約等)については例外的に債権者主義を採っています(民法567条)。
よって、買主は債務の履行(売買代金の支払い)を拒むことができる。
契約不適合責任
売主が、契約の内容に適合しない不動産を買主に引き渡した場合、買主はそれを知った日から1年以内に通知することで修補や代金の減額等を請求することができる。ただし、買主の責めに帰す場合にはこの限りではない。
借地借家法
賃貸人に比べ立場の弱い借家人や借地人を保護するために、民法の特別法として制定された賃貸借契約に関する法律。土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは(借地権の登記がなくても)土地を借りている権利を第三者に対抗できる。
借地権
建物の所有を目的として土地を借りる権利のことで、地上権と土地の賃借権の総称。
普通借地権
・賃貸人からの更新拒絶にや解約の申入れには正当な理由が必要。
・契約期間は30年以上(契約期間を定めなかった場合や、30年未満で契約した場合は30年とみなされる。)
・契約更新は1回目が20年以上、2回目以降は10年以上。
普通借地権は契約期間が30年、更新1回目が20年、さらに更新する場合は10年と10年刻みとなります。
定期借地権
・契約が終了すると契約は更新されず、地主に土地が返還される「土地を借りる権利」。更新はない。
一般定期借地権 | 建物譲渡特約付借地権 | 事業用定期借地権等 | |
期間 | 50年以上 | 30年以上 | 10年以上50年未満 |
契約方法 | 書面(公正証書等) | 規定なし | 公正証書に限る |
利用目的 | 制限なし | 制限なし | 事業用に限る (居住の用に供するものを除く) |
終了時の措置 | 原則更地で返還 | 建物付で返還 (地主が建物を買い取る) | 原則更地で返還 |
借地権が地上権である場合には、賃借人は土地所有者(借地権設定者)の承諾なしにその地上権を譲渡できる。これは、借地上の建物を譲渡する際に地上権も同時に譲渡できるようにしなければ、借地人が建物を自由に処分することができなくなるからである。
一方、賃借人が賃借権を第三者に譲渡・転貸する場合には賃貸人(土地所有者)の承諾が必要になる。
賃貸住宅事業や社宅等の居住を目的とする場合には事業用定期借地権は設定できない。
借家権
建物の賃貸借のこと。街の不動産屋さんでマンションやアパートを借りるときをイメージするとわかりやすい。
普通借家契約
・大家から更新の拒絶や解約の申入れの通知には正当な理由が必要。
・契約期間は1年以上(1年未満の契約は期間のない定めのない契約とみなす)。
定期借家契約(定期建物賃貸借契約)
・契約で定めた期限が到来すると必ず契約が終了する。ただし、貸主と借主双方が合意すれば再契約は可能。
・契約期間の制限はないが、必ず書面(公正証書でなくてもよい)で契約する必要がある。
・定期借家契約について、(賃貸借契約期間が1年以上である場合に)賃貸人は期間の満了の1年前から6ヵ月前までの間(通知期間)に、その終了を賃借人に対抗できない。
宅地建物取引業法(宅建業法)
宅地建物取引業(宅建業)とは
・自らを当事者として、売買・交換を行う(賃貸を除く)。
・他人間の契約を媒介して、売買・交換・賃貸を行う。
・他人間の契約を代理して、売買・交換・賃貸を行う。
媒介契約の種類
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
依頼者が他業者に重複して依頼 | できる | できない | できない |
自己発見取引 (自ら取引相手を見つけること) | できる | できる | できない |
依頼者への方向義務 | なし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
指定流通機構(レインズ)への登録義務 | なし | 7日以内に登録 | 5日以内に登録 |
契約の有効期間 | 規制なし | 3ヶ月以内 (これより長い期間を定めた場合は3ヶ月となる) | 3ヶ月以内 (これより長い期間を定めた場合は3ヶ月となる) |
専任媒介契約と専属専任媒介契約の違いは自己発見取引が認められているか否かということです。
宅地建物取引業者の報酬制限
媒介契約によって得られる報酬の上限額は国土交通大臣が定めている。
取引額の区分 | 報酬額の区分 | |
売買・交換 | 400万円超 200万円超400万円以下 200万円以下 | 代金額×3%+6万円 代金額×4%+2万円 代金額×5% |
賃貸 | 取引額は不問 | 賃料の1ヶ月分 |
重要事項の説明(35条書面)
・宅地建物取引業者は、(買主が宅地建物取引業者でない場合)宅地・建物の売買の媒介をする場合、契約前に買主への重要事項を説明しなければならない。
・この説明は、宅地建物取引士が署名捺印した書面を交付して、宅地建物取引士証を提示した上で行わなければならない。
住宅の品質の確保の促進等に関する法律
この法律は、①住宅の品質確保の促進、②住宅購入者等の利益の保護、③住宅に係る紛争の迅速かつ適正な解決を図ることを目的として制定されたものである。この法律では、新築住宅を建設する請負人及び自ら売主となり新築住宅を販売する宅建業者に、住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵について完成引渡日から10年間の瑕疵担保責任を義務付けている。
※構造耐力上主要な部分とは、住宅の基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材、床版、屋根版、横架材のうち、当該住宅の自重若しくは積載荷重、積雪、風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の震動若しくは衝撃を支える部分です。これに雨水の浸入を防止する部分を加えたものが瑕疵担保責任の対象となります。
都市計画法(重要度★★☆☆☆)
都市計画法とは
都市計画に基づいて、その内容や手続、開発許可などの規制を定め、都市の健全な発展等を目的とする法律。
都市計画区域
国土は都市計画区域と都市計画区域外に分けられる。都市計画区域の指定は原則都道府県が行い、複数の都府県に跨って指定する場合は国土交通大臣が行う。
都市計画区域はさらに、市街化区域、市街化調整区域及び非線引区域に分かれる。
市街化区域
すでに市街地を形成している区域及び、おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域。
市街化調整区域
市街化を抑制すべきものとして指定されている区域。
非線引区域
市街化区域と市街化調整区域の区別がされていない区域。
用途地域
市街化区域内に定められる地域であり、都市全体の土地利用の基本的枠組みを設定する地域。住居系、商業系及び工業系に分類される。
住居系
用途地域 | 内容 |
第一種低層住居専用地域 | 低層住宅にかかる良好な住居の環境を保護するため定める地域 (教育施設、公共施設、福祉施設、神社など) |
第二種低層住居専用地域 | 主として低層住宅にかかる良好な住居環境を保護するため定める地域 |
田園住居地域 | 農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅にかかる住居の環境を保護するため定める地域 |
第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅にかかる良好な居住の環境を保護するため定める地域 |
第二種中高層住居専用地域 | 主として中高層住宅にかかる良好な居住環境を保護するため定める地域 |
第一種住居地域 | 住居の環境を保護するため定める地域 |
第二種住居地域 | 主として住居の環境を保護するため定める地域 |
準住居地域 | 道路の沿道としての地域の特性にふさわしい実務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域 |
商業系
用途地域 | 内容 |
近隣商業地域 | 近隣の居住地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するため定める地域 |
商業地域 | 主として商業その他の業務の利便を増進するため定める地域 (カラオケボックス、パチンコ店など) |
工業系
用途地域 | 内容 |
準工業地域 | 主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するため定める地域 |
工業地域 | 主として工業の利便を増進するため定める地域 (自動車整備工場、診療所など) |
工業専用地域 | 工業の利便を増進するため定める地域 |
用途地域ごとの建築制限
・診療所や保育所はどの用途地域でも建築可能。
・住居や老人ホームは「工業専用地域」以外であれば建築可能。
・病院や大学は「(第一種・第二種)低層住居専用地域」、「田園住居地域」、「工業地域」、「工業専用地域」以外であれば建築可能
・ホテルは「第一種住宅地域(床面積3,000㎡以内)」、「第二種住宅地域」、「準住居地域」、「近隣商業地域」、「商業地域」に建設することができる。
・カラオケボックスは「第一種住宅地域」、「第二種住宅地域」、「工業地域」、「工業専用地域」については条件付きで建設可能。それ以外では「近隣商業施設」、「商業施設」、「準工場地域」では条件なしで建築可能。
工業地域 | 工業専用地域 | |
公衆浴場、診療所、保育所、神社、寺院、教会、派出所 | 〇 | 〇 |
住宅、老人ホーム、図書館 | 〇 | × |
ホテル、旅館 | × | × |
幼稚園、小・中学校、高校、大学 | × | × |
カラオケボックス | 〇 | 〇 |
開発許可制度
開発行為とは、建築物や特定工作物を建てるために行う土地の造成等のことで、都市計画区域または準都市計画区域内でこれを行うには、原則として都道府県知事に許可が必要になる。しかし、以下の場合には許可は不要。
・市街化区域内で行う1,000㎡未満の開発行為
・非線引の都市計画区域内で行う3,000㎡未満の開発区域
・市街化調整区域内で行う農林漁業用建築物(サイロ・温室など)または、農林事業者の住宅を建築するためのもの
・公共的施設(鉄道施設、公民館など)、公共事業など(国・都道府県等が行う開発行為や、非災害の応急措置・都市計画事業等のための開発行為にかかる建築物)
場所 | 小規模 | 農林漁業用 | 公共的施設・公共事業など |
市街化区域 | 1,000㎡未満は許可不要 (300㎡まで引き下げ可) | 1,000㎡未満は不要 (300㎡まで引き下げ可) | 許可不要 |
市街化調整区域 | 許可必要 | 許可不要 | 許可不要 |
非線引区域 | 3,000㎡未満は許可不要 | 許可不要 | 許可不要 |
農地法
・農地を売却するときは農業委員会の許可が必要。
・農地を宅地にするときは(本来は都道府県知事の許可が必要だが)市街化区域内の農地の場合、事前に農業委員会に届け出るだけで足りる。
・一定の市街化区域内の農地を他の用途に転用する目的で売却するときは(本来は都道府県知事等の許可が必要だが)農業委員会に届け出るだけで足りる。
建築基準法(重要度★★★★☆)
建築基準法とは
建築基準法とは、国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低基準を定めた法律のこと。
道路に関する規制
建築基準法上の道路
原則:幅員4m以上(特定区域では6m以上)の道路
例外:幅員が4m未満であるが、建築基準法の適用前に道路として機能しており、特定行政庁の指定した道路(2項道路)。この場合は道路の中心線から2m後退(セットバック)した線が道路境界線とみなされる。セットバック部分は、建蔽率、容積率を算定する際の敷地面積に算入することができない。
2項道路とは建築基準法第42条2項のことです。
接道義務
都市計画区域内、準都市計画区域内の建物の敷地は、建築基準法上の道路(幅員4m以上)に2m以上接していなければならない。
建蔽率と容積率
建蔽率
敷地面積に対する建築面積の割合のこと。
建蔽率=建築面積/敷地面積
地域により30%~80%まで定められているが、下記の条件を満たした場合、緩和(プラス)することができる。
条件 | 緩和率 |
特定行政庁が指定する角地 | 10%緩和 |
防火地域・準防火地域内にある耐家建築物等 | 10%緩和 |
上記の両方に該当する場合 | 20%緩和 |
建蔽率が80%の地域内でかつ防火地域内にある耐火建築物等 | 建蔽率の制限なし |
※なお、建蔽率の異なる地域に跨って建物が建っている場合、それぞれの地域の「面積×建蔽率」を合計すれば最大建築面積が求められる。
容積率
敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合のこと。
容積率=建築延べ床面積/敷地面積
※なお、容積率の異なる地域に跨って建物が建っている場合、それぞれの地域の「面積×容積率」を合計すれば最大延べ面積が求められる。
前面道路幅員による制限
敷地の前面道路の幅員が12m以上の場合は、用途地域に定められている指定容積率が適用される。12m未満の場合は、その前面道路の幅員の数値に次の乗数を乗じたものと指定容積率を比較して厳しい基準(容積率が低くなる方)が適用される。
地域 | 乗数 |
住宅系用途地域 | 10分の4 |
住宅系用途地域以外 | 10分の6 |
敷地の前面道路の幅員が12m未満の場合は、「指定容積率」と「前面道路の幅員×法定乗数」のいずれか小さい数値を敷地面積に乗じて求める。
用途に関する制限
用途地域内の建築物は一定の用途制限を受ける。また、敷地が2つ以上の用途に跨る場合は、過半の属する地域の制限を受ける。
規制 | 対応方法 |
建蔽率・容積率 | 加重平均をする |
用途地域の規制 | 面積の大きい方(過半の属する地域)の規制を受ける |
防火規制 | 厳しい方の規制を受ける (防火地域>準防火地域>無指定地域) |
防火地域
地階を含む階数が3階以上または延べ床面積が100㎡を超える建築物。この建築物は耐火建築物としなければならない。
準防火地域
地階を含む階数が4階以上または延べ床面積が1,500㎡を超える建築物。この建築物は耐火建築物としなければならない。
日影規制
住宅地における日照を確保するための規制。住居系の用途地域に加えて、近接商業地域、準工業地域が対象。(商業地域、工業地域、工業専用地域には適用されない。)
また、その区域外の建物でも、「高さ10m超」かつ「冬至日に日影規制の対象区域内に日影を及ぼす」場合は、対象区域内にあるとみなされ、規制の対象となる。
その他重要事項
絶対高さの制限
第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域または田園住居地域内における建築物の高さは原則として10mまたは12mの高さ制限がある。
北側斜線制限
北側隣地の日照の悪化を防ぐための法規で、建築物の高さと斜線の角度が制限される。第一種低層住宅専用地域内、第二種低層住宅専用地域内、田園住居地域、第一種中高層住宅専用地域内、第二種中高層住宅専用地域内の建築物には原則として適用される。
区分所有法(重要度★★★☆☆)
区分所有法とは
1棟の建物を区分して所有する形態の建物(マンション等)について、その所有関係を定め、建物や敷地等の共同形態について定めた法律のこと。
専有部分と共有部分
専有部分
区分所有建物のうち、個々の住戸所有者の所有権の目的となる部分。分譲マンションの家など。
共有部分
区分所有建物のうち、専有部分以外の建物の部分。法定共用部分と規約共用部分に分けられる。
法定共有部分
法律上、当然に共用となる部分。(階段、廊下、エレベーターなど)
規約共有部分
規約の定めのより共有となる部分。(管理人室、集会場など)
共有部分の持分割合か、各共有者の専有部分の床面積の割合により決定する。
集会の決議
区分建物に住んでいる人の意思決定は、集会の決議によって行われる。
普通決議 | 過半数の賛成 | 軽微な変更などの一般的事項 |
特別決議 | 4分の3以上の賛成 5分の4以上の賛成 | 規約の設定、変更、廃止、共有部分の変更 建替え |
不動産取得時・保有時の税金(重要度★★★★☆)
不動産の取得時の税金
不動産取得税
不動産を取得した者に、不動産の所在地の都道府県が課税する税金。(地方税)
不動産取得税の内容
課税対象
売買・交換・贈与・建築(増改築を含む)などにより、土地や建物を取得した者。有償・無償、登記の有無は関係ない。ただし、例外として相続、遺贈、法人の合併などによる取得の場合は課税されない。
課税標準
固定資産税評価額。
税率
原則4%(ただし、現在は特例で土地、住宅については3%)。
課税の特例
住宅を取得した場合の課税標準の特例(新築住宅の不動産取得税の軽減の特例)
1997年4月1日以降に建設された住宅において、一定の条件(床面積が50㎡以上240㎡以下等)を満たす住宅の場合、課税標準から一定額(新築の場合最高で1,200万円)が控除される。
不動産取得税額=(固定資産評価額-1,200万円)×3%
(例:床面積がマンション等の共同住宅(賃貸住宅)にあっては、独立区画1つ当たり40㎡以上240㎡以下のものでなければならない。)
住宅用土地を取得した場合の税額軽減
土地を取得し、一定期間内に特例適用住宅(床面積50㎡~240㎡)を取得した場合、土地取得にかかる税金が軽減される。
住宅借入金特別控除(住宅ローン控除)
個人が住宅ローン等を利用してマイホームの新築、取得または増改築等をし、一定条件を満たす場合に、居住開始後10年間にわたり住宅ローンの年末残高の1%相当額を各年の所得税額から控除できる。
登録免許税
不動産を受けることに対して国が課税する税金。(国税)
課税対象
不動産登記を受ける者。相続や法人の合併による所有権移転登記も課税される。ただし、表示の登記については非課税。
課税標準
固定資産税評価額。(抵当権の設定登記の場合は債権価格。)
税率
登記の種類により異なる。
個人が新築または建築後使用されたことがない住宅用家屋を取得した場合
建物の所有権保存登記の税率が0.4%から0.15%(特定認定長期優良住宅及び認定低酸素受託は0.1%)に軽減される。軽減を受ける場合は市町村等に証明書等を添付する必要がある。
本則税率 | 軽減税率 | |
所有権保存 | 0.4% | 0.15% |
所有権移転(売買・競落) | 2.0% | 0.3% |
所有権移転(相続・合併・共有物の分割) | 0.4% | – |
所有権移転(贈与・交換・収用等) | 2.0% | – |
抵当権設定 | 0.4% | 0.1% |
消費税
売買・譲渡 | 貸付 | 仲介手数料 | |
土地 | 非課税 | 非課税(ただし、貸付期間が1ヵ月未満の場合は課税) | 課税 |
建物 | 課税(売主が個人の場合は非課税) | 住宅以外(事業用):課税 住宅建物:非課税(ただし、貸付期間が1ヵ月未満の場合は課税) | 課税 |
印紙税
領収書や契約書などの課税対象文書に印紙を貼り、国に納付する税金。(国税)
2通作成する場合には2通とも印紙の貼付が必要。
不動産保有時の税金
固定資産税
固定資産税の内容
課税対象
1月1日に固定資産を保有する個人または法人
課税標準
固定資産税評価額。3年に1度評価替えがある。
標準税率
1.4%。(各市町村は条例によってこれと異なる税率を定めることができる。)
課税標準の特例
・住宅用地の課税標準(税率を乗じる価額)の軽減
小規模住宅用地(200㎡以下の部分):固定資産税評価額×6分の1
一般住宅用地(200㎡超の部分):固定資産税評価額×3分の1
⇒固定資産税(200㎡以下の部分)=固定資産税評価額×6分の1×標準税率1.4%
税額軽減の特例(新築された住宅に対する固定資産税の減額)
上記の公式で求めた税額について、床面積50㎡~280㎡の新築住宅は、居住部分120㎡までの部分に対する税金が3年間(新築の中高層耐火住宅は5年間)2分の1に軽減される。
都市計画税
課税対象
1月1日に市街化区域内に土地・建物を保有する個人または法人。
都市計画税の課税対象となる土地及び家屋の所在する区域は市街地区域内に限定される。
課税標準
固定資産税評価額。
小規模住宅用地(200㎡以下の部分):固定資産税評価額×3分の1
制限税率
0.3%。(これを上限に各市町村が条例により定める。)
不動産譲渡時の税金(重要度★★★★★)
不動産の譲渡所得(第4章の復習)
長期譲渡と短期譲渡
長期とは:譲渡した1月1日における所有期間が5年超の場合。
短期とは:譲渡した1月1日における所有期間が5年以下の場合。
税率
・長期譲渡所得の税率:20%(所得税15%、住民税5%)
・短期譲渡所得の税率:39%(所得税30%、住民税9%)
※所得税には別途復興特別所得税(2.1%)がかかる。
譲渡所得金額、所得税額の計算
課税譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費-譲渡費用)
所得税額=課税譲渡所得金額×税率
取得費
譲渡した資産の取得に要した金額+その後の設備費・改良費-償却相当額。取得費が不明な場合は譲渡価額の5%を概算取得費して計上できる。
譲渡費用
資産譲渡に直接要した直接経費、仲介手数料、印紙代、立退料、建物取壊し費用などの費用。(固定資産税や修繕費は含まない。)
譲渡費用は必要経費とは異なるので注意。
借地契約をした際の対価として支払いを受ける借地権利金
その額が土地の価額の2分の1を超える場合、その金額は譲渡所得の対象となる。また、権利金が土地の価額の2分の1以下の場合は不動産所得となる。
相続税の取得費加算の特例
相続により取得した土地・建物などを譲渡する場合に、支払った相続税額のうちその譲渡資産にかかる部分の額を譲渡資産の取得費に加算することができる特例。本特例の適用を受けるためには、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡することが要件。
マイホーム売却に関する4つの課税の特例
居住用財産の特別控除
マイホームの土地・建物等を譲渡した場合、譲渡所得の金額の計算において譲渡益から3,000万円が控除される。
要件
・所有期間や居住期間、受贈者の所得制限は不問。
・3年に1度しか適用できない。
・配偶者、直系血族などへの譲渡は対象外。
・居住しなくなった日から3年目の12月末までに譲渡すれば適用できる。
・下記軽減税率の特例と併用できる。
軽減税率の特例(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例)
所有期間が10年を超える居住用財産を譲渡した場合は、長期譲渡所得の税率:20%(所得税15%、住民税5%)よりも低い税率が適用される。
・6,000万円以下の部分:税率14%(所得税10%、住民税4%)
・6,000万円超の部分:税率20%(所得税15%、住民税5%)
※所得税には別途復興特別所得税(2.1%)がかかる。
居住用財産の買換特例(特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例)
所有期間が10年超かつ居住期間が10年以上の居住用財産を(1億円以下で)譲渡して譲渡益が発生し、床面積が50㎡以上のマイホームを買い換えた場合、新たに購入した居住用財産を譲渡するときまでに譲渡益に対する課税を繰り延べることができる。「居住用財産の特別控除(3,000万円)の特別控除」と「居住用財産の軽減税率の特例」との併用ができない。
・譲渡価格≦買換価格の場合:譲渡時の値段以上の物件を購入した場合、譲渡益に対する課税は全額繰り延べることができる。
・譲渡価格>買換価格の場合:譲渡資産と買換資産との差額分だけ譲渡所得の対象になる。
特定の居住用財産の譲渡損失の繰越控除の損益通算及び繰越控除
譲渡した年の1月1日時点において、所有期間が5年を超え、一定の居住用財産の譲渡で損失が発生した場合、損益通算した後に残るマイナス金額は、その年及び翌年以降3年間にわたって他の所得と損益通算できる。なお、この特例を受けるには繰越控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下でなければならない。
要件
・譲渡した1月1日において所有期間が5年超。
・控除する各年末に住宅ローン残高があること。
・床面積が50㎡以上
・新たに購入した居宅用住宅について10年以上の住宅ローンを有すること。
所有期間 | 居住期間要件 | 特例の併用 | |
居住用財産の特別控除(3,000万円) | なし | なし | 軽減税率の特例と併用可 |
軽減税率の特例 | 10年超 | なし | 居住用財産の3,000万円の特別控除と併用可 |
居住用財産の買換特例 | 10年超 | 10年以上 | 他の特例と併用不可 |
居住用財産の買換等の場合の譲渡損失の繰越控除 | 5年超 | なし | 住宅ローン控除と併用可 |
不動産の譲渡所得の特例は間違えやすい項目なので、過去問をひたすら繰り返しをして少しずつ着実に覚えていきましょう。
不動産の有効活用(重要度★★★☆☆)
土地を有効活用する代表的な方式6つ
自己建設方式
土地所有者自らが土地有効活用を企画し、建設会社に工事は発注し建物完成後の管理・運営を行う方式。
事業委託方式
デベロッパー(不動産開発者)が次号のパートナーとなり、土地活用の調査・企画から、建物の建設・施工、建物の管理・運営までの一切の事業を受託して行う方式。
土地信託方式
信託銀行などに(信託という形で)土地の名義を移転し、信託銀行が資金調達をして、建物を建設、賃貸等の事業を行う方式。信託期間終了後は土地・建物が返還され、登記上の名義も土地所有者に戻される。
等価交換方式
土地所有者が土地を出資し、デベロッパーがその上に建築する建物の費用を出資し、各々の出資割合に応じて土地・建物を分け合う方式。資金調達の負担はないが、土地の一部を手放さないといけない。
定期借地権方式
土地に定期借地権を設定して土地を貸す事業方式。
建設協力金方式
入居予定のテナントから建設協力金を集め、それを元手に土地所有者が建物を建築しその建物を賃貸することで賃料収入を得る方式。スーパーやコンビニエンスストア、ガソリンスタンド、ファミリーレストランなどでよく用いられる。
不動産投資
不動産投資の利回り
不動産投資をして採算が合うかを判断するために投資利回りを計算する必要がある。
単純利回り
諸経費を考慮しない簡便な方法。年間賃料収入を投資額で除す方法など。
単純利回り=年間賃料収入/投資額×100
純利回り(NOI利回り)
営業純収益と不動産価格の比率のこと。Net Operating Incomeの略。NOI利回りが大きいほど収益性が高いことを表す。営業純収益は不動産の賃貸収入などから管理費などの諸経費を差し引いた額となる。
純利回り(NOI利回り)=(年間賃料収入-年間諸経費)/投資額×100
なお、純利回りでは不動産投資物件の収益率を客観的に表すものであるため、減価償却費や借入金利子は諸経費に含めない。
内部収益率 (IRR:Internal Rate of Return)
投資から得られる純利益の現在価値の総和と投資額の減税価値の総和が等しくなる割引率のこと。投資資金をどれくらいの期間で回収できるかを考慮し投資の効率性を測る指標であり、最終的に同じ金額を回収できる投資でも、短い期間で利益を得られるほどIRRは高くなる。つまり、この値が大きいほど有利な投資と言える。
上場不動産投資信託(J-REIT)
投資家から集めた資金を不動産に投資し、そこから得られた賃料収入や不動産の売買益を投資家に分配する。流動性、換金性が高い。
不動産の証券化
不動産投資において、投資対象となる不動産の利回りよりも低い金利の借入金を資金調達に組み入れると、レバレッジ効果によって、自己資金に対する投資利回りを上昇させる効果がある。
レバレッジ効果が働くとは、借入金の金利よりも不動産投資の収益率が上回っている場合に、自己資金に借入金を加えることにより、自己資金に対する収益率が上昇することです。
例えば、不動産の収益率が5%、借入金利が3%だったときに、自己資金1,000万円のみで不動産投資をする場合と、借入金2,000万円を合わせた3,000万円を不動産投資する場合を比較すると、以下のように不動産から得られる収益率と借入金利の差によって、自己資金に対する収益率が上がることがわかります。
・自己資金のみ場合
収益額:1,000万円×5%=50万円
自己資金に対する収益率:50万円÷1,000万円=5%
・借入金を併用した場合収益額:3,000万円×5%-2,000万円×3%=90万円
自己資金に対する収益率:90万円÷1,000万円=9%
この章の復習
問題
国土交通省がの土地鑑定委員会が公示する公示価格は、毎年1月1日を価格判定の基準日としている。(2017年1月学科)
⇒〇(公示価格が国土交通大臣。「こ」がつく。)
問題
相続税路線価は、時価公示の公示価格の( )を価格水準の目安として設定されている。
1)70%
2)80%
3)90% (2020年9月学科)
⇒2)(なお、固定資産税の公示価格の70%を目安として設定されている。)
問題
アパートやマンションの所有者自ら当該建物の賃貸を業として行う行為は、宅地建物取引業法で規定する宅地建物取引業に該当しない。(2016年1月学科)
⇒〇(例:アパートの大家が賃貸業を行う場合。)
問題
建築物の敷地が建蔽率の限度(指定建蔽率)の異なる地域にわたる場合、敷地全体について、敷地の過半の属する地域の指定建蔽率が適用される。
⇒×(建蔽率の異なる地域に跨って建物が建っている場合、それぞれの地域の「面積×建蔽率」を合計する。敷地が2つ以上の用途地域に跨っている場合は、敷地の過半の属する地域の制限を受ける。)
問題
不動産取得税は、生前贈与により不動産を取得したときには課されない。(2018年9月学科)
⇒×(相続や法人の合併などによる不動産の移転のケースでは課税されないが贈与は課税対象。)
問題
固定資産税における小規模住宅用地(住宅用地で住宅一戸当たり200㎡以下の部分)の課税標準については、当該住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の5分の1の額とする特例がある。(2019年9月学科)
⇒×(小規模住宅用地に該当する固定資産税は、200㎡までの部分に相当する税額が6分の1に軽減される。)
問題
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」の適用を受けるためには、譲渡の年の1月1日現在において、譲渡資産の所有期間が5年以上でなければならない。(2015年1月学科)
⇒×(「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」に所有期間の制限はない。)
問題
「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」の適用要件の1つとして、譲渡資産の所有期間は譲渡の年の1月1日で( )を超えていなければならない。
1)3年
2)5年
3)10年 (2014年5月学科)
⇒2)(譲渡損失の繰越控除が認められるのは、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年超の居住用財産の限る。)
問題
土地・建物を譲渡した場合の譲渡所得の金額の計算上控除することができる取得費には、取得の日以後譲渡の日までに納付した固定資産税が含まれる。(2013年9月学科)
⇒×(土地・建物の維持管理にかかる固定資産税等のランニングコストは「取得費」、「譲渡費用」のいずれにも含まれない。)
問題
不動産への直接投資は、上場株式への投資と比較した場合、相対的に流動性が高いとされる。(2010年9月学科)
⇒〇(流動性リスクとは、換金したいときにすぐ売れなかったり、即売却すると金額が安くなってしまうリスクのこと。)
参考
FP3級ドットコム:ホームページ
試験にでる内容だけ! 】スッキリわかる FP技能士3級 2021-2022年 (スッキリわかるシリーズ) 単行本:商品リンク
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