お金を稼ぐ力が身に付きそれをうまく活用して運用しただけでは金融資産管理としては十分だとは言えないでしょう。なぜなら資産には「税金」がかかるからです。
正しくは収入から必要経費等を差し引いた「所得」に対して課税がなされます。
この章では、その所得に対してかかる税金を学習し、資産を守る対策を考えていきます。
「収入」、「所得」、「控除」の3つのキーワードを正確に理解し税金のしくみを頭に入れていきましょう。
注意
※合格に必要なところだけをピックアップ。とにかく試験に合格したい方向け。(主に学科対策。)
※2021年10月1日時点の法令を根拠とする。
- 所得税のしくみ(重要度★★★☆☆)
- 給与所得と退職所得(重要度★★★★☆)
- 事業所得(重要度★★☆☆☆)
- 不動産所得(重要度★★☆☆☆)
- 利子所得と配当所得(重要度★★☆☆☆)
- 譲渡所得(重要度★★☆☆☆)
- 一時所得・雑所得(重要度★★★★☆)
- 山林所得(重要度☆☆☆☆☆)
- 所得税における非課税所得(重要度★★☆☆☆)
- 所得税における損益通算(重要度★★★★☆)
- 生命保険料控除・地震保険料控除(重要度★★☆☆☆)
- 社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除(重要度★★☆☆☆)
- 医療費控除(重要度★★☆☆☆)
- 配偶者控除・配偶者特別控除(重要度★★☆☆☆)
- 基礎控除・扶養控除・障碍者控除・勤労学生控除(重要度★★☆☆☆)
- 税額控除(重要度★★★☆☆)
- 所得税の申告・納付(重要度★★★★☆)
- この章の復習
所得税のしくみ(重要度★★★☆☆)
わが国の税制
国税 | 地方税 | |
直接税 | 所得税、法人税、贈与税、相続税、登録免許税 | 固定資産税、事業税、不動産取得税、住民税、自動車税 |
間接税 | 消費税、酒税 | 地方消費税 |
所得税に関する用語
歴年単位課税
所得税は、個人が1月1日から12月31日までに得た所得に対して課税される。
累進税率
所得税は、所得が多くなるにつれて税率も階段的に上がる。(5%から45%の7段階の超過累進課税率。)
申告納税方式
納税者自ら申告して納税する方法。納税地は原則としてその納税者の住所地の管轄の税務署。
源泉徴収制度(源泉分離課税)
個人に給料や報酬、利子などを支払いする法人等が納税すべき税金を天引きして、本来の納税者に代わって納付する制度。確定申告不要。
(例:銀行の利子所得など)
総合課税(原則)
様々な所得の金額を合算してから金額に応じた税率(超過累進税率)をかけて計算する方法。
(例:給与所得、事業所得、不動産所得、一時所得など)
分離課税(例外)
総合課税とは別に、個々について税率を適用し課税する方法。
(例:不動産や株式を売却した際の譲渡所得、退職所得、山林所得など)
復興特別所得税
2011年の東日本大震災の影響を受けて、復興のために必要な財産を確保するために創設された。
2013年1月1日から2037年12月31日までの25年間その年の所得に対し2.1%分が課税される。
確定申告不要制度
課税所得のない事業者や年末調整を受ける会社員、副業の所得が一定以下の人、公的年金の確定申告不要制度対象者などは確定申告をしなくてもよいとする制度です。
上場株式等に係る配当等の課税関係は、大口株主等(上場会社等の発行済株式等の3%以上を保有する人)を除き、確定申告をしないで源泉徴収で済ませる確定申告不要制度を選択できます。ただし、この制度を利用すると配当控除や源泉徴収額の控除を受けられません。(下記「配当所得」でも触れる。)
累進税率と比例税率(課税標準の大小に関係なく、その一定割合を適用するときの比率)の違いに注意しましょう。
個人が受け取った非上場株式の配当は、1銘柄について支払いを受けるべき金額が年換算で10万円以下であれば確定申告不要制度を申告できる。
所得税における課税財産の範囲
・日本国内に住所がある者または1年以上居所を有する者(居住者)は、国内外で得たすべての所得に対して課税される。
・居住者以外の者(非居住者)は、国内で得た所得については課税されるが、国外で得た所得については非課税とされる。
その他
少額預金の利子所得の非課税制度(マル優)
身体障害者手帳の交付を受けている者、障害基礎年金、障害厚生年金の受給者、遺族年金を受給している妻等は、所定の申請をすることにより他の金融機関と共通で元本350万円までの預貯金の利子等が非課税になる
給与所得と退職所得(重要度★★★★☆)
給与所得
所得金額の計算
給与所得の金額=給与収入-給与所得控除額(最低でも55万円は控除対象)
給与に通勤手当が含まれている場合、1ヵ月15万円まで非課税。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額の算式 |
162万5,000円以下 | 55万円 |
162万5,000円超180万円以下 | 収入金額×40%-10万円 |
180万超360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
360万円超660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
660万円超850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円(上限額) |
退職所得
所得金額の計算
退職所得の金額=(収入金額-退職所得控除額)×2分の1
退職所得控除額
①勤務20年以下の場合:40万円×勤続年数
②勤務20年超の場合:800万円×70万円×(勤続年数-20年)
※800万円とは40万円×20年のこと。
注意点
・1年未満の端数は1年に切り上げる。
・退職手当の支払いを受ける人は会社に「退職所得の受給に関する申告書」の提出義務あり。これを提出し、退職手当から所得税の源泉徴収がされていれば確定申告の義務はない。
・退職金を一時金で受け取った場合は退職所得だが、年金形式で受け取った場合は雑所得になる。
退職所得の計算方法は必ず覚える。退職所得控除額を求める計算式に2分の1は用いない。
事業所得(重要度★★☆☆☆)
事業所得の必要経費について
・事業所得における必要経費:仕入にかかる費用、人件費、減価償却費等。人件費については親族に支払ったもの原則必要経費にならない。
・減価償却費において、使用期間が1年未満または取得金額が10万円未満の減価償却資産は全額を一括で必要経費にできる。1998年4月1日以後に取得した建物・建物附属設備・構築物の減価償却は定額法しか認められていない。機械・装置について、償却方法を所轄税務署長に届出していない場合には定額法により計算する。また、土地、骨董品などの資産は減価償却資産に該当しない。
・事業所得における商品の売上原価は「期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高」で求める。詳細は日商簿記3級で。
不動産所得(重要度★★☆☆☆)
不動産所得とは
土地や建物などの貸付けによる総収入金額から、その収入に関する必要経費を差し引いたもの。
独立家屋5棟以上、アパート等10室以上であれば事業的規模に該当するとして扱われる。(事業所得ではなく不動産所得となる。)
収入に計上するもの
家賃、地代、礼金、更新料、保証金・敷金のうち返還を要しない部分の金額。収入の計上時期は原則契約における支払日。
必要経費に計上できるもの
管理費、仲介手数料、減価償却費、租税公課(固定資産税、不動産取得税、登録免許税)、借入金の利子等。
必要経費にならないもの
所得税・住民税、罰金、生計を一にする親族に対する家賃、借入金の元本返済額等。
利子所得と配当所得(重要度★★☆☆☆)
利子所得
公社債や預貯金の利子、公社債投資信託の収益分配などが該当する。
所得金額の計算
利子の支払いの際に20.315%(所得税15.315%及び住民税5%)が源泉控除される。
※特定公社債(国債や地方債、外国債、上場公社債など)の利子は源泉徴収が行われた上で申告分離課税(20.315%)の対象になる。ただし、申告不要制度を利用すれば受け取り時の源泉徴収をもって課税関係を終了することもできる。
配当所得
株式の配当や株式投資信託の分配金などが該当する。
所得金額の計算
税率は原則20.315%。NISA口座における配当や分配金は非課税。なお、借金をして株式などを購入した場合の配当所得は「収入金額-負債の利子」となる。
個人の株主(大口株主(発行済株式総数の3%以上)を除く)が受ける上場株式等にかかる配当等は、所得税の確定申告不要制度を選択することができる。(配当所得の確定申告不要制度)
注意点
配当所得の課税方法は、
①総合課税で確定申告、②申告分離課税で確定申告、③申告不要制度の適用
の3種類から選択できるが、配当控除の適用を受けるためには①総合課税を選択し、他の所得と合わせて所得税の確定申告を行う必要がある。
上場株式等の配当所得に関しては銘柄ごとに申告方式を分けることはできず、配当所得を全部まとめて総合課税か申告分離課税のいずれかを選択しなければならない。上記の通り、総合課税を選択すれば配当控除を受けることはできるが、申告分離課税を選択すれば同じく申告分離課税を選択した上場株式等の譲渡損失と損益通算できる。
譲渡所得(重要度★★☆☆☆)
譲渡所得
資産の譲渡(売却)による所得のこと。土地や・建物の譲渡は分離課税。貴金属や骨董品、ゴルフ会員権などを譲渡した場合は総合課税。
譲渡所得の分類
譲渡物の種類 | 所有期間 | 課税分類 |
土地・建物・株式以外 (金・ゴルフ会員権等) | 5年以内 5年超 | 総合短期譲渡所得(総合課税) 総合長期譲渡所得(総合課税) |
土地・建物 | 5年以内 5年超 | 分離短期譲渡所得(分離課税) 分離長期譲渡所得(分離課税) |
株式等(公社債、投資信託を含む) | – | 株式等にかかる譲渡所得(分離課税) |
土地・建物の場合、取得日から譲渡日までの属する年の1月1日までの期間で判断し、それ以外の場合は取得日から譲渡した日までの期間で判断する。
所有期間5年と総合課税or分離課税は特に重要。
譲渡所得の求め方
所得金額の計算
譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)
総合短期譲渡所得、総合長期譲渡所得は特別控除(短期と長期の合計が50万円が限度)がある。
また、総合長期譲渡所得は他の所得と総合するときに2分の1をかける。
一時所得・雑所得(重要度★★★★☆)
一時所得
本業ではないことで一括で(一時的に)受け取ったお金。
例:懸賞の当選金、生命保険の満期金・解約返戻金、死亡保険金(契約者=受取人)
一時払変額個人年金保険(確定年金)等の保険期間が5年以下のものまたは保険期間が5年超で5年以内に解約した場合は源泉分離課税の対象になる。(2018年1月保険)
所得金額の計算
一時所得の金額=総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(50万円)
なお、確定申告の際に総所得金額に含めるのは、この一時所得の金額の2分の1の金額となる。
雑所得
本業とは異なるさまざまな所得で複数年にわたって受け取ることができるもの。
(例:公的年金、生命保険契約に基づく年金、退職金を年金形式で受け取っている場合(一時金で受け取っている場合は退職所得)等。)
給付補填金の取扱い
毎回一定の掛金を満期まで金融機関に払込み、満期日に利息を加えた給付交付金を定期積金(スーパー積金)というが、この給付交付金と払込総額の差額(給付補填額)は利子所得ではなく雑所得とみなされる。ただし、総合課税ではなく20.315%(所得税15%、住民税5%)の源泉徴収課税の対象となる。
外貨預金の取扱い
外貨預金では、預入時より円安になれば為替差益が、円高になれば為替差損が生じるが、外貨預金における為替差益と利息の課税関係は為替予約(満期時に円換算するレートをあらかじめ決めておくこと)の有無によって決まる。
当初から為替予約あり | 為替予約なし 途中から為替予約を設定 | |
利息 | 利子所得 源泉分離課税(20.315%) | 利子所得 源泉分離課税(20.315%) |
為替差益 | 利子所得 源泉分離課税(20.315%) 利子の一部とみなされる | 雑所得として総合課税 |
所得金額の計算
公的年金等:公的年金等の収入金額-公的年金等控除額
公的年金等以外:公的年金等以外の収入金額-必要経費
山林所得(重要度☆☆☆☆☆)
申告分離課税の対象。ほぼ出題されないので割愛。
所得税における非課税所得(重要度★★☆☆☆)
給与所得における非課税所得
1ヵ月あたり15万円までの通勤手当、出張手当。(通常必要であると認められる範囲に限る。)
譲渡所得における非課税所得
家具や衣類などに必要な生活用動産の売却益。(ただし、1つ30万円を超える美術工芸品などは課税対象。)。
譲渡所得・配当所得における非課税所得
NISA口座内で生じた売却益、配当金など。
一時所得における非課税所得
宝くじの当選金、賠償金、損害保険料、慰謝料、医療保険の保険金、火災保険の保険金など。
雑所得における非課税所得
遺族年金。(老齢基礎年金、老齢厚生年金は課税対象。)
所得税における損益通算(重要度★★★★☆)
損益通算とは
ある種類の所得で生じたマイナス金額を別の所得で生じたプラス金額と通算すること。(所得(収入-必要経費)がマイナス状態。)
(例:給与所得者が不動産所得で損失を出した場合、損益通算をすることにより合計課税所得が減る。)
損益通算の対象となる所得
他の所得と通算できるのは、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得(総合課税)の4種類。
損益通算の手順
①総合課税の譲渡所得はまず同じ総合課税の譲渡所得内で内部通算し譲渡所得の金額を算出する。
②譲渡所得金額がマイナスだった場合には、一時所得(2分の1を乗じる前の金額)と損益通算。
③それでも損失が残る場合は不動産所得と事業所得と損益通算。
④それでも損失が残る場合には山林所得と損益通算。
注意点
・不動産所得の損失のうち、土地を取得するために要した借入金の利子は損益通算の対象外。(建物に係る借入金の利子は他の所得と損益通算できる。)
・生活に通常必要とされない資産(別荘、投資用マンション、ゴルフ会員権等)の売却による損失は損益通算の対象外。
・不動産、株式等の譲渡は損益通算の対象外。(申告分離課税)
・雑所得でマイナスが出た場合は所得ゼロの扱いとなる。
上場株式等 | 特定公社債等 | |
上場株式 公簿株式投資信託 ETF など | 国債・地方債 外国債 公募公社債 公募公社債投資信託 外貨建てMMF | |
配当金 収益分配金 利子 | 配当所得 | 利子所得 |
譲渡、償還解約の損益 | 上場株式に係る譲渡所得 | 上場株式に係る譲渡所得 |
※配当所得、利子所得については申告分離課税を選択した者に限る
上記表内の配当所得、利子所得及び上場株式に係る譲渡所得と損益通算できる。
生命保険料控除・地震保険料控除(重要度★★☆☆☆)
会社員の場合、年末調整によって適用を受けることが可能。
生命保険料控除
区分 | 所得税 | 住民税 |
一般生命保険料控除額 | 最高4万円 | 最高2.8万円 |
個人年金保険料控除額 | 最高4万円 | 最高2.8万円 |
介護医療保険料控除額 | 最高4万円 | 最高2.8万円 |
合計限度額 | 最高12万円 | 最高7万円 |
地震保険料控除
支払金額の全額が所得控除額となる。(上限は所得税5万円、住民税2.5万円)
社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除(重要度★★☆☆☆)
社会保険料控除
本人または生計を一にする配偶者その他親族の負担すべき社会保険料(例:国民年金基金等)を支払った場合、その金額(給与等から控除された金額)の全額を所得から差し引くことができる。
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済や個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金(上限あり)等を支払った場合、その全額を所得から差し引くことができる。掛金は必ず加入者本人の口座から引き落とされるシステムになっているため、掛金を配偶者その他親族のために支払ったものであっても、実態を問わず加入者本人の小規模企業共済等掛金控除対象となる。
社会保険料控除と小規模企業共済等掛金控除の説明文の入れ替えによるひっかけ問題には注意。
医療費控除(重要度★★☆☆☆)
医療費控除の原則
本人または生計を一にする配偶者その他親族の医療費を支払った場合、一定金額(最大200万円)が所得から控除される。
控除額の算出方法
医療費控除額=(医療関連費-保険金等で補填された金額)-10万円
※総所得金額が200万円未満の場合は「総所得金額×5%」が最低となる。
医療関連費
・治療や回復の目的で、医療機関等に支払った費用、通院のための交通費など。(ただし、自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金は控除の対象にならない。)
・助産師による分娩の介助の代価も控除の対象。
・健康診断費用等の予防的要素の強いものは公助対象外。(ただし、その健康診断によって病気等が見つかり、その後に治療した場合は治療の一環とみなせるため控除の対象となる。)
セルフメディケーション税制(特例)
スイッチOTC医薬品(元々医療用であった薬などが市販薬になったもの)を購入した金額が1年間に12,000円を超えるときは、その超える部分(88,000円が限度)について所得控除の対象になる。
原則の医療費控除とセルフメディケーション税制の併用は不可。
配偶者控除・配偶者特別控除(重要度★★☆☆☆)
本人(世帯主)の合計所得金額が1,000万円以下でなければ控除の対象とならない。
配偶者控除
生計を一にしている配偶者(その年分の合計所得金額が48万円(給与収入のみである場合103万円)以下)がいる場合は、本人(世帯主)は38万円(26万円または13万円)の配偶者控除が受けられる。さらに、その配偶者の年齢が70歳以上であれば、老人控除対象配偶者となり、最大で48万円の控除が受けられる。ただし、その配偶者が青色事業専従者、専業従事者の場合は公助の対象とならない。
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | 一般の控除対象配偶者の控除額 | 老人控除対象配偶者(70歳以上)の控除額 |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
配偶者特別控除
生計を一にしている配偶者(その年分の合計所得金額が48万円超133万円(給与収入のみである場合103万円超201万円)以下)がいる場合は、その配偶者の所得に応じて一定の額を本人の所得から控除することができる。
「所得」と「収入」と違いはしっかり理解しておく必要があります。
基礎控除・扶養控除・障碍者控除・勤労学生控除(重要度★★☆☆☆)
基礎控除
原則48万円が控除できる。なお、個人の合計所得金額が2,400万円超2,450万円以下の場合は32万円、2,450万円超2,500万円以下の場合は16万円、2,500万円超の場合は0円となる。
合計所得金額 | 控除額 |
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
扶養控除
生計を一にする16歳以上の扶養親族(配偶者を除く)の合計所得金額が48万円以下の場合、1人あたり38万円控除できる。19歳以上23歳未満の特定扶養親族は63万円控除できる。
また、老人扶養親族(70歳以上)の控除額は48万円であり、老人扶養親族のうち「納税者またはその配偶者の直系尊属で常に同居している者」の扶養控除額は58万円である。
扶養控除の原則38万円は必ず覚える。その上で特定扶養親族は25万円の上乗せ、老人扶養親族は10万円の上乗せ、さらに老人扶養親族と同居している場合は10万円上乗せするというしくみを覚えておけば金額の暗記は不要となる。
障碍者控除
納税者本人、控除対象配偶者、扶養親族が障碍者である場合には障碍者27万円、特別障碍者40万円、同居特別障碍者75万円が控除できる。
勤労学生控除
学生が自分の勤労により得た合計所得金額が75万円以下で、給与所得以外の所得金額が10万円以下の場合、27万円が控除される。
税額控除(重要度★★★☆☆)
税額控除とは
税額控除とは、所得控除を差し引いて税額を計算したあとさらに税額そのものからマイナスできる制度のこと。所得の控除ではなく税額そのものの控除であることから節税効果がある。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)
要件等 | 概要 |
借入金要件 | 完済まで10年以上の分割返済によるものであること。 金融機関からの借り入れであるということ。 |
取得住宅等の要件 | 受託を取得した日から6ヵ月以内に床面積の2分の1以上の居住の用を供すること。 床面積が40㎡以上であること。 中古住宅の場合は築20年(耐火建築物は25年)以内であること。(ただし、新耐震基準に適合している場合は築年数要件は不要。) |
本人の所得要件 | その年分の合計所得金額が1,000万円以下(床面積が50㎡以上の場合は3,000万円以下)であること。(=合計所得金額が3,000万円を超える年分については適用できない。) |
控除額の計算 | 住宅借入金等の年末残高(4,000万円が限度)×1%(10年目まで適用) ※2019年10月~2022年末までの入居については11~13年目まで減税が適用される。11年目以降は「建物購入価格×2%/3」と「10年目までと同じ計算方法で計算した額」のいずれか少ない金額となる。 |
確定申告の要否 | 必要。ただし、給与所得者の場合、適用初年度だけ申告をすれば2年目以降は年末調整で控除することが可能。 |
住宅ローンについては「第5章.不動産」でも触れます。
配当控除
株式等の配当や剰余金の分配を受け、総合課税を選択した場合に受けられる税額控除。(申告分離課税、申告不要を選択した場合は控除の対象外。)確定申告が必要。法人税と所得税の二重課税を軽減するためのしくみでもある。
配当控除額
課税総所得金額が1,000万円以下の場合
控除額=配当所得の金額×10%
課税総所得金額が1,000万円超となる配当所得の場合
控除額=配当所得の金額×5%
J-REIT(上場不動産投資信託)の収益分配金は、上場株式の配当と同様に配当所得として行われるが、分配金は配当控除の適用を受けることができない。(投資法人が法人税を支払う前の利益を分配しているため二重課税の問題が生じないから。)
寄附金控除
納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、「特定寄附金」を支出した場合に所得控除を受けることができる。代表的なものはふるさと納税。
寄附金控除額
控除額=下記のいずれか低い額-2,000円
①その年に支出した特定寄附金の額の合計額
②その年の総所得金額等の40%相当額
ふるさと増税ワンストップ特例制度
ふるさと納税をした後に確定申告をしなくても寄附金控除が受けられる制度。ワンストップ特例制度が適用されると、控除される全額が翌年の6月以降に支払う住民税から自動的に控除される。
利用可能な対象者
・もともと確定申告をする必要のない給与所得者等であること。(年収2,000万円以下の所得者)
・1年間の寄付先が5自治体以内であること。(1つの自治体に複数回寄付をしても1カウントになる。)
・申込みの都度自治体へ申請書を郵送していること。(複数回申し込んだ自治体には同一自治体であってもその都度申請書を提出する必要がある。)
・寄附金の合計額の多寡は不問。
寄附金控除は余裕のある方だけ覚えてください。
所得税の申告・納付(重要度★★★★☆)
源泉徴収制度
給与所得、退職所得、配当所得、利子所得などについて、その支払者が支払い時に所得税を徴収して、納税者に代わって納税する制度。その所得の支払者は原則として翌月10日までに納付しなければならない。
確定申告
原則
毎年1月1日から12月31日までに生じた所得について税額を計算し、翌年2月16日から3月15日までの間に申告・納付する制度。
給与所得者の多くは、年末調整によって納税が完了するので確定申告の義務はないが、給与等の金額が2,000万円を超える者、給与、退職以外の所得の合計額が20万円以上の者、2ヵ所以上から給与を受けている者などは確定申告が必要となる。
寄附金控除、雑損控除、医療費控除は年末調整の対象外のためこれらの控除を受ける者は確定申告が必要となる。
給与所得者の確定申告義務は「2」がつく。「第1章.ライフプランニングと資金計画の『健康保険の任意継続被保険者』」、「第6章.相続・事業承継の『贈与税の配偶者控除』」と併せて覚えよう。
e-Taxを利用すると初回の申告に限り、最大5,000円の税額控除を受けられるほか、添付書類の省略、還付金の振り込みが早いなどメリットがあります。
準確定申告
確定申告をする必要がある納税者が死亡した場合、その相続人は相続の開始があったことを知った日から4ヵ月以内に所得税の準確定申告書を提出しなければならない。
青色申告
事業所得、不動産所得、山林所得を生ずる業務を行う者は、その年の3月15日まで(1月16日以降に新規開業をする場合は業務開始の日から2ヵ月以内)に「青色申告の承認申請書」を所轄税務署長に提出し承認を受けることにより、青色事業専従者給与の必要経費の算入など、税法上のさまざまなメリットが受けることができる。
青色申告特別控除
事業所得、不動産所得、山林所得の場合、青色申告の承認を受けることができれば、青色申告特別控除として10万円を控除できる。
事業所得、不動産所得(事業的規模に限る)の場合、正規の簿記(複式簿記)の原則に従って日常の取引を記帳し、これに基づいて貸借対照表、損益計算書などを作成して確定申告書に添付した場合、10万円に代わって55万円(電子帳簿保存またはe-Taxによる申請(電子申請)をした場合は65万円)が控除できる。
純損失が生じた場合、翌年以降3年間、各年の所得から控除できる。
帳簿書類については原則7年間保存しなければならない。
個人事業税
個人事業税は、地方税法で定められている事業を営み、事業所得・不動産所得を得た者に対して課税され地方税。
個人事業税の計算式
個人事業税=(事業所得・不動産所得+青色申告特別控除額-繰越控除額等-事業主控除額)×税率
事業主控除額は、年間290万円であり、290万円に満たない場合は個人事業税は0円となる。事業を行った期間が1年に満たない場合は事業を行った月数で月割りをする。
白色申告
白色申告は青色申告と異なり申請が不要で複式簿記によらず控除を受けられる制度である。
白色申告をしている事業主と生計を一にしている配偶者その他親族がその事業に従事している場合、事業専従者とみなして所得金額に応じて計算される金額を必要経費として計上できる。
要件
①白色申告者と生計を一にする配偶者その他親族であること。
②その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
③その年を通じて6月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事していること。
控除額
控除額は次のいずれか低い方が適用される。
①配偶者86万円、配偶者以外の専従者50万円
②事業専従者控除前の事業所得の金額を専従者の数に1を足した数で除した金額
白色申告はほぼ出ませんので余裕のある方だけでいいと思います。
この章の復習
問題
退職手当等の支払いを受ける居住者がその支払いを受けるまでに「退職所得の受給に関する申告書」を支払者に提出している場合、その支払われる退職手当等の金額に20.42%の税率を乗じた額に相当する所得税及び復興特別所得税が源泉徴収される。(2018年5月学科)
⇒×(「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合は退職所得控除も反映した正確な税額が源泉徴収される。
問題
上場株式等の配当所得について申告分離課税を選択した場合、その税率は所得税及び復興特別所得税と住民税の合計で( ① )であり、上場株式等の譲渡損失の金額と損益通算することができる。この場合、配当控除の適用を受けることが( ② )
1)①14.21% ②できる
2)①20.315% ②できない
3)①20.42% ②できない (2020年1月学科)
⇒2)上場株式の配当所得について申告分離課税や申告不要制度を選んだ場合、税率は20.315%で上場株式等の譲渡損失との損益通算は可能だが、配当控除は適用されない。
問題
所得税において、山林所得、土地・建物等に係る譲渡所得、株式等に係る譲渡所得等は( )の対象になる。
1)申告分離課税
2)源泉分離課税
3)総合課税
⇒1)なお、特定口座を開設した株式の譲渡所得は申告不要とすることも可能。
問題
納税者の合計所得金額が800万円で、その配偶者の合計所得金額が60万円である場合、( )の適用が受けられる。なお、他の適用要件は満たしているものとする。
1)配偶者控除及び配偶者特別控除
2)配偶者控除
3)配偶者特別控除
⇒3)配偶者の合計所得金額が48万円超133万円以下のため配偶者特別控除の対象となる。
問題
所得税において、配当控除は、所得控除に該当する。(2016年9月学科)
⇒×(配当控除は税額控除である。)
問題
個人が、相続、遺贈または個人からの贈与により取得するものは、所得税においては( )である。(2019年9月学科)
1)非課税所得
2)譲渡所得
3)雑所得
⇒1)(これらは相続税または贈与税の対象となるため、所得税においては非課税所得になる。)
問題
居住者が個人に対して時価の2分の1未満の価額で資産を譲渡したことにより生じた損失は、所得税法の損益通算の対象にならない。(2009年9月学科)
⇒〇(所得税法第59条2項参照)
次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。
- 一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)
- 二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)
問題
個人が一時払養老保険(10年満期)の満期保険金を受け取った場合、金融類似商品として、満期保険金と正味払込保険料との差益が源泉分離課税の対象となる。(2013年1月学科)
→×(一時払養老保険はその保険期間によって受取金の課税関係が異なる。原則として保険期間が5年超の一時払養老保険や一時払損害保険の満期保険金や解約返戻金は、払込保険料との差額が一時所得となり、各種所得を合計した総所得金額に超過累進課税を乗じる総合課税の対象になる。一方、保険期間が5年以内(途中解約した場合を含む)の一時払養老保険は、税法上「金融類似商品」に位置付けられ、その差益は源泉分離課税の対象になります。このときの税率は受取金と払込保険料の差額に対して20.315%になる。本問では源泉分離課税ではなく一時所得として総合課税の対象となる。)
参考
FP3級ドットコム:ホームページ
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