【メンバーシップ型】わが国における働き方に対する考え方の変化②【ジョブ型】

ビジネス・マネジメント

前回はジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の基礎編として、それぞれの特徴と日本の人事、採用はどうなっているのかを解説しました。(【メンバーシップ型】わが国における働き方に対する考え方の変化①【ジョブ型】

今回はこの2つの考え方だけではなく、新たな視点から日本が目指すべき雇用環境についてご紹介したいと思います。

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ジョブ型雇用の限界

メンバーシップ型雇用のデメリットが大きいのであればジョブ型雇用に切り替えればいいのでは?と素直に考える人もいるでしょう。
現在、ジョブ型雇用を標榜しあるいはジョブ型雇用を目指している企業は、日本という枠組みを越えて人材の獲得・活用を一元化したいグローバルな企業や、専門性が求められる分野が多く、よりよい人材を求めている技術系の企業がメインと言えます。

しかし、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて以降、テレワークやサテライトオフィス勤務等の導入により、遠隔における社員を管理する人事マネジメントが求められ、ジョブ型雇用に関心を持ち始めている企業も多く存在するのも事実です。
今までは型にはまった雇用システムを運用していた企業が、これを機にジョブ型雇用に関心を示し始めているケースも多いですし、新型コロナウイルス感染症の影響によりジョブ型雇用という言葉を知る機会を得た人も多くいるでしょう。

ただしジョブ型雇用の導入はそうそう簡単にはいきません。

給与設定と状況に応じた適正な配置

担当する「職務」を前提とするジョブ型雇用では、すべての職務を詳細に調査し「職務記述書(ジョブディスクリプション)」を整備し、その都度見直し更新をし続けなければなりません。
また、職務内容と給与(多くが職務給)が直結しているため、誰をどの職務につけるのかの配置や人事評価にも多くの時間とコストを要します。採用の段階で職務の範囲がややぼんやりしているメンバーシップ型雇用と比べ、ジョブ型雇用では職務を明確化させる必要がありその人材の評価にかかる負担が大きいといえます。

解雇が困難な日本において馴染みにくい

ジョブ型雇用の場合、その職務が必要となくなるときがいずれ発生しうることもないわけではありません。そうなったときにその人にどの職務を担当させるべきか、最悪の場合任せる仕事がないといったケースも想定されます。この場合にその人の能力を発揮させる場所がない場合、その人をどうするかが問題になります。

わが国には「労働基準法」というものが存在し、その第二章の労働契約という項目に解雇制限などについて記載があります。また、この解釈について多くの判例や裁判例があり、使用者と労働者との間で非常にトラブルが多く発生する問題でもあります。そうなると、そこまでの手間やリスクを負ってまでジョブ型雇用を導入することはやはり難しいのではないかといった結論になってしまうことがあります。

業種が限定化されやすい

テレワークやサテライトオフィス勤務の導入が比較的しやすいIT業や広告業など、今般の新型コロナウイルス拡大の影響をさほど受けなかった、あるいは柔軟に対応できた業種にはジョブ型雇用もマッチしやすい業種といえる一方で、実際に職場や現場などに赴かなければならない飲食業、製造業、接客娯楽業等はなかなか評価の基準を設けにくいといった不具合が発生しやすいといえます。
また、どのお客さまやクライアントであったとしても、だれが接客・応対したとしても同じ内容でなければならない行政サービス系の業種もあてはまります。

メンバーシップ型雇用×ジョブ型雇用の組み合わせ

このように、ジョブ型雇用を導入するには企業としても大きな選択をしなければなりません。エンジニア系の職種であったとしても、企業としてはやはりテレワークも導入しているけれど、勤務態度も人事評価をする一つの項目としたいと考えたり、完全にジョブ型雇用を導入することには抵抗があるといった考えがあるのは最もだといえます。

そこで、日本的雇用の本質である「人材」を念頭に置くという考え方を残したまま、職務内容を明確にし、今いる社員の「役割」を明確にするといった「ロール(role)型雇用」も注目されています。

ロール型雇用は、リクルートグループが1960年代の創業以来採用してきた雇用形態のひとつです。ロール型雇用では、その人に与えられた役割の難易度や重要度、そして仕事の成果に応じて評価決定をします。
メンバーシップ型雇用とは異なり、各々の社員の役割や評価の基準が明確化しているため、テレワークなどの環境においてもマネジメントのしやすさや評価の合理性を担保できます。ロール型雇用は、メンバーシップ型の利点である長期雇用と、ジョブ型の特徴である成果主義をどちらも実現します。

また、詳細な職務記述書(ジョブディスクリプション)を作成する手間がないため、成果主義を実現できる一方で、従来のメンバーシップ型雇用をとり続けてきた企業でも比較的導入しやすいというメリットがあります。

年功序列制や継続勤務年数制による非効率な給与形態の見直しなどを改善しつつ、日本企業にフィットしやすい雇用形態であることに加え、社員の専門性向上やテレワークの導入や効率化といったジョブ型雇用のメリットを享受できる点は魅力的に思います。

このようにメンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の間のニュートラルな立場にあたることから、いきなりジョブ型雇用を導入することは困難であっても。徐々に雇用形態をシフトしていくことも十分に可能です。

メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用、そしてロール型雇用、名称の云々やどの形態がいいのか正解はありません。大切なのは、現在の社会情勢や経済の動向をリアルタイムで把握し、定期的に自社にあった人事システムを見直しあるいは改善し、または新しいこと取り入れていくことが必要とされていているのではないでしょうか。

人も企業も日々変化していくものだと認識しなければならないのかもしれません。

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