【法改正】職業安定法 施行2022年10月1日~施行

法改正

2022年度における法改正は以前にこちらの記事にてご紹介しました。

今回はその中の職業安定法の改正について簡単に解説していきたいと思います。

求人・求職活動におけるインターネットの利用が拡大するなか、2022(令和4)年10月1日に施行される改正職業安定法は、多種多様な求人メディアを法律上に位置づけ、ルールを整備するとともに、求職者情報を取扱う事業者に対しては届出制を導入するなどの改正を行われます。さらに労働者の募集を行う求人企業側に対しても募集情報の的確表示などの義務を課すという内容となります。

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メインはインターネット上の求人メディアに対する法整備

 厚生労働省によると、求職者の入職経路のうち約3割(29.5%)をインターネット求人メディアが占めており、ハローワーク(21.7%)や職業紹介事業者(8.3%)を上回っているようです。

このほかにも、インターネット上の求人情報を収集して求職者等に提供するアグリゲーター、求職者の情報をデータベース化して求人企業等に提供する人材データベースなど、さまざまな類型のサービスが広がっているのが現状です。

一方、職業安定法はこうした求人メディア等を「募集情報等提供」と位置づけ、指針で募集情報の的確表示や個人情報の適正な管理などを求めてきました。

ところが、これまでの想定を超えたさまざまな類型のサービスが登場してきており、法規制が実態に追いついていなかったのが実態です。雇用仲介事業として存在感を増す求人メディア等に対し、求職者保護の観点から守るべきルールの整備が求められ、実態把握や指導監督を行う規制の整備も課題とされていました。

募集情報等提供定義を4類型拡大

こうした状況を踏まえ、募集情報等提供の定義を拡大し、これまで該当しなかった求人者・求職者以外の者に対して情報を提供することや、求職者や求人者等から依頼を受けずに自ら情報を収集し、求人者や求職者等に提供することを定義に追加し4つの類型に整理することにしました。(職業安定法4条6項)

改正前求人者等の依頼を受けて求人情報を求職者に提供すること、または求職者の依頼を受けて求職情報を求人者等に提供すること。
改正後①求人者等または職業紹介事業者等の依頼を受けて、求人情報を求職者または職業紹介事業者等に提供すること
②求人情報を求職者の職業の選択を容易にすることを目的として収集し、求職者や職業紹介事業者等に提供すること
③求職者や職業紹介事業者等の依頼を受け、求職情報を求人者や職業紹介事業者等に提供すること
④求職情報を求人者の必要とする労働力の確保を容易とすることを目的として収集し、求人者や職業紹介事業者等に提供すること
表⑴ 募集情報等提供に定義の拡大

また、これまで指針上のルールだった募集情報等の的確表示(43条の5)や個人情報の保護(5条の5)、苦情処理体制(43条の6)などの守るべきルールを法律上に規定。行政の指導監督の規制も整備し、現行の助言・指導に加えて募集情報等提供事業者に対して改善命令や立入検査等を行うことが可能になり、違反には罰則も適用される。さらに、求職者に関する情報を収集して募集情報等提供事業を行う者については、求職者保護の観点から「特定募集情報等提供事業者」と規定し、事前の届出制を導入。あわせて事業の実施状況等を記載した事業概況報告書の提出も求めることになっています。

事業開始の届出事項
氏名または名称、住所、連絡先、職業紹介事業者または派遣事業者の場合には許可番号または届出番号
様式記載事項
サービス名称、サイトURL、事業類型(表⑴①~④参照)▶厚生労働省の「人材サービス総合サイト」に一覧として掲載し、利用者の選択の参考情報とする
添付書類
住民票の写し(個人)、登記事項証明書(法人)
届出方法
原則オンラインで届出をする
表⑵ 特定募集情報等提供事業者の届出制

求人企業に求められる募集情報の的確表示

募集情報の的確表示に関しては、①虚偽または誤解を生じさせる表示の禁止と、②最新かつ正確な内容に保つための措置を講じなければならないことなどが新たに改正されました。(5条の4)

この対象となるのは、ハローワーク、募集情報等提供事業を行う者などすべての雇用仲介事業者のほか、これらの事業者に労働者の募集情報を提供する求人企業も含みます。義務に違反し、違反の是正を求める勧告等に従わずに公表された企業は、求人不受理の対象にもなります。

虚偽または誤解を生じさせる表示の留意事項

・関係会社が存在している場合に、実際に雇用する予定の企業が関係会社と混同されることのないようにすること
・労働者の募集と、請負契約の受注者の募集が混同されることのないようにすること
・賃金形態、基本給、定額の手当、通勤手当、固定残業代等に関する事項について、実際の賃金等よりも高額であるかのように表示しないこと
・職種・業種等について、実際の業務の内容と著しく乖離する名称を用いないこと

また指針では、労働者の採用にあたって明示が必要となる労働条件を、募集情報の提供の段階からできる限り含めることが望ましいと求めています。

一方、募集情報を②最新かつ正確な内容に保つための措置として、具体的に求人企業に求められる対応は、次のことが指針で示されています。

募集情報を最新かつ正確な内容に保つための措置

・労働者の募集を変更または終了した場合には、その募集情報の掲載を速やかに変更または終了すること。また、掲載を依頼した募集情報等提供事業を行う者に対して、掲載を変更または終了するよう依頼すること
・労働者の募集に関する情報の時点を明らかにすること
・募集情報等提供事業を行う者から、不適正な募集情報や正確な記載ではない募集情報の訂正や変更を依頼された場合には、速やかに対応すること

なお、募集情報の的確表示に関しては、募集情報等提供事業を行う者に対しても、情報を提供されている求人企業・求職者等から、掲載の中止や内容の訂正の依頼があった場合に速やかに対応するとともに、正確かつ最新の情報でないことを自ら確認した場合、速やかに内容の訂正の依頼または掲載を中止しなければならないことが省令で規定されています。

さらに募集情報等提供の類型(表⑴参照)ごとに、下記表⑶のいずれかの措置を講じなければならないとされています。

類型措置内容(いずれかの措置が求められる)
●募集者等に対し求人が充⾜したときや内容を変更したときには、速やかに通知するよう依頼する
●求人に関する情報の時点を明示する
●求人に関する情報を定期的に収集・更新し、その頻度を明確にする
●求人に関する情報を収集した時点を明示する
●求職者に対し情報を正確かつ最新の内容を保つよう依頼する
●求職者に関する情報の時点を明示する
●求職者に関する情報を定期的に収集・更新し、その頻度を明確にする
●求職者に関する情報を収集した時点を明示する
表⑶ 募集情報に的確表示に関する措置

個人情報は収集・保管・使用の目的を明示

求人企業等に求められる求職者等の個人情報の取扱いについては、今般の法改正において、求職者等の個人情報を収集し保管しまたは使用する目的を明示することが追加されました。(5条の5)

目的の明示の方法としては、インターネットの利用その他の適切な方法と省令で定められています。

参考

令和4年職業安定法の改正について
第342回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 資料

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