今回は前回の続きになりますので、まだご覧になられていない方は先にこちらを読んでいただくことをオススメします。【名目手取り賃金率】マクロ経済スライドについて(前編)【物価上昇率】
それでは改めて2022年度の年金額の詳細について解説していきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
①2022年の年金額は▲0.4%
1月22日、総務省により「令和3年平均の全国消費者物価指数」が公表されました。これを踏まえた結果、以前の記事でもお伝えした通り、▲0.4%となると申し上げました。
・老齢基礎年金(満額):▲259円
・老齢厚生年金(夫婦二人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額):▲903円
参考:【2年連続引き下げ】年金支給額が来年度も減額へ【今年度比▲0.4%】
年金額ベースでは
780,900円×0.996(0.4%)=777,776円(50円以上100円未満を100円に切り上げ)→777,800円
となり、これを12月で割ると月額6万4816.666・・・円となります。
改定の詳細
改定率の改定に係るデータを見ると、
・名目手取り賃金変動率:▲0.4%
・物価変動率:▲0.2%
となっており、名目手取り賃金変動率が物価変動率を下回っています。この場合、新規裁定者、既裁定者ともに名目手取り賃金変動率と用いるのでしたね。
※名目手取り賃金変動率=①前年の物価変動率×②3年前の年度の実質賃金変動率×③3年前の可処分所得変化率
①2021年の物価変動率▲0.2%×②2018年度~2020年度の実質賃金変動率▲0.2%×2018年の可処分所得変化率0.0%=▲0.4%
②マクロ経済スライドの発動
既にお気づきの方もいると思いますが、マクロ経済スライドによ調整は名目手取り賃金変動率と物価上昇率を勘案した結果、プラスに改定される場合にのみ発動すると申し上げました。ですので、2022年度においてマクロ経済スライドは発動されません。
ですので、①2021年度のスライド調整率(繰越分)▲0.1%+②2022年度のスライド調整率▲0.2%=▲0.3%が翌年度以降に繰り越されることとなります。
※マクロ経済スライド調整率=①公的年金被保険者数変動率×②平均余命の伸び率
2022年度の場合、
①2018年度~2020年度の公的年金被保険者数変動率0.1%×②平均余命の伸び率▲0.3%(固定)=▲0.2%
2021年度のマクロ経済スライド調整率は▲0.1%だったため、
▲0.1%(2021年度分)+▲0.2%(2022年度分)=▲0.3%が翌年度以降繰越し
③2022年度国民年金保険料(おまけ)
年金額の説明は以上にして、最後に国民年金保険料のお話を軽くいたします。
国民年金の保険料は、2021年度以降で1万7000円となっています。この額に保険料改定率(改定率ではないことに注意)を乗じて改定されます。
保険料改定率とは、毎年度、当該年度の前年度の保険料改定率に名目賃金変動率(名目手取り賃金変動率ではないことに注意)を乗じて得た率になります。
※名目賃金変動率=①2年前の物価変動率×②4年前の実質賃金変動率
2022年度の保険料改定率は0.976ですので、1万7000円×0.976=1万6590円となります。
なお、国民年金保険料は厚生年金保険料と違って2年前納制度がありますので、上記の式からわかるように、2023年度の保険料もすでに決まっています。(2023年度の国民年金保険料は1万6520円です。)
④最後に
さて2回にわたって年金額の仕組みについてお伝えしてきましたがいかがでしたでしょうか。
今回は結構数字を使ったので頭を動かすことが多かったのではないでしょうか。
これは私の予想ですが、今後はマクロ経済スライドが適用されるケースは少なくなると思います。
理由は3つ考えられます。
1つ目は物価が上昇しているのに賃金が上がっていないことです。マクロ経済スライドによる調整は名目手取り賃金変動率と物価上昇率を勘案した結果、プラスに改定される場合にのみ発動すると申し上げました。過去の例を見てもデフレ期に発動することはありませんでした。今後すぐに景気が回復するとは考えにくいです。というより現在のわが国はデフレというよりスタグフレーション気味な気もしするのでなんとも言えないのですが・・・
2つ目は被保険者要件の拡大です。今後短時間労働者も加入対象となるため、名目手取り賃金変動率が鈍化傾向になるからです。
3つ目は平均余命が上昇しているからです。わが国は世界でトップクラスに位置し、2021年公表時点で男性が81.64歳、女性は87.74歳と過去最高を更新しています。団塊ジュニア世代が65歳になる2050年には年金財政はどうなっているのでしょうか。
やはり、世代間扶養の制度とはいえ、自分が納めた保険料ですからある程度は還元してほしいなあとは思います。とはいえ、少子高齢化の事実は避けられないので、これからも自助努力はしていかなければなりませんね。
それでは本日もご覧いただきましてありがとうございました。
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