【ビジネス】生産性が高い人の共通点はイシューをつかむ力【生産性モンスター】

キャリアアップ

日々なんとなく電車に乗り、なんとなく職場につき、なんとなく仕事をして、なんとなく就業時間を迎え、ときにはなんとなく残業し、なんとなく帰宅する。

こんな人生を送っている人はとりわけ日本には多いように感じます。言われたことさえやっていれば、定時まで座っていれば、上司のご機嫌さえ取っておけばある程度決まった日にある程度決まった金額が給料として得られるでしょう。

でもそれを繰り返し行うことで、何を生産しているのでしょうか。

また、一部の企業では年齢が上がるにつれて給料が上がり、さらに年齢が上がるにつれて給料が下がる不思議な制度。

今回はそんな疑問を抱いているときに出会った本、私の人生を変える一つのきっかけとなった安宅和人氏の著書である「イシューから始めよ」を紹介したいと思います。

イシューの定義については後ほど触れますが、イシューがない人は社会人としてかなり危険であると言えます。危険とは誰か直接害をもたらすことではなく、自分自身に影響を及ぼすということです。

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イシューとは

著者によるとイシューとは本当に取り組むべき課題だと述べています。
もう少し掘り下げると、2つ以上の集団の間で決着のついていない問題、根本に関わるもしくは白黒がはっきりしていない問題を指します。

生産性の高い人

この本の表紙に「知的生産のシンプルな本質」と書いてあります。著者はこれについて、生産性が高い人はひとつのことをやるスピードが10倍も20倍も速いわけではないと指摘します。

戦術的アプローチ

戦い方を考えること、きびきび動くこと、タイピングを早くすること、提案資料を素早く提出するなどといった問題を素早く解こうとする行為を戦術的アプローチといい、著者はこのような小手先のテクニックでは高い生産性は発揮できないとしています。

戦略的アプローチ

一方、これに対するこたえとして、まず戦う前に考えること、戦わずして成功する、そもそも解くべき問題を見極めること、すなわち戦略的アプローチこそがバリューのある仕事ができることにつながるとと指摘しています。

バリューのある仕事と犬の道

著者はバリューのある仕事を「イシュー度」と「解の質」の二つによって成り立っているとしています。この「イシュー度」と「解の質」とは下記の定義によって位置づけられ、双方の質が高いほどバリューのある仕事といえます。

イシュー度

自分がおかれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さのこと。

解の質

イシューに対してどこまで明確に答えを出せているかの度合いのこと。

著書の中ではこの二つの考えを下記のようなグラフで表現しています。

イシュー度と解の質

生産性を上げていくうえでNGとなる行為

この二つのレベルを上げていく過程で気をつけなければいけないことがあります。

悩んでばかりいて考えないこと

「悩む」ということと「考える」ということについて下記のような定義をしています。

悩む

答えが出ないことが前提の行為。考えているフリをしている状態。

この悩む行為を完全に否定しています。著者は本当に取り組むべき課題(イシュー)を重視していますので、答えのあることについて行動しないと意味がないとします。究極に言えば疲れるだけ。

考える

答えが出ることが前提の行為。故に、答えが出たとしても方向性が間違っていたらなばその後どれだけ努力しても無駄であることが多いとする。

決して通ってはいけない犬の道

悩むことより考えることを重視していることを理解した上でもう一つ重要なことを指摘しています。それは、答えのクオリティ(解の質)を上げることよりもイシュー度を上げる方(より良い課題の設定)が大事だとしていることです。

さらに、答えのクオリティ(解の質)を極めても無意味どころか決して進んではいけないルートだと言いきっています。

この道は体力だけ失う絶対に進んではならない犬の道と例えています。ただ時間をかけて頑張っても無駄であり、方向性が間違っているとお金を使って努力しても価値の低い仕事になってしまう、まずは何をすればいいのかを考えること(イシューの設定)こそが物事を取り組む上で重要だとしています。

大人になったら努力したこと自体に意味はなく何を努力したのかが重要であり、イシュー度の高い問題から手をつけること。今自分が取り組むべき課題が見つかったらその課題から手をつける。その際に解きやすさ、自分が好きなこと、取り組みやすさに惑わされないこと。イシューは一つに絞り、ここで努力することでより良い成果が出るをしています。

例:英語の成績が悪いのであれば英語から勉強すること。得意分野は後回しでOK。50点から80点を目指すことは、80点から100点を目指すより簡単。

闇雲に仕事量を増やすことは犬の道へ

イシューの設定方法と落とし穴

さて、ここで本書における主要な言葉や考えについてはひとまず説明しました。ここからは、実際に仕事を行う際に当てはめてみたいと思います。

設定(株式会社kanariya ビバレッジの商品開発)

例えば、私が某飲料メーカーの企画部にいると仮定します。

T部長
T部長

おい、kanariya君、この商品(kanariyaウォーター(仮))の売り上げがイマイチなんだけど、何とかしてくれないかね。

kanariyaさん(平社員)
kanariyaさん(平社員)

・・・

こんなムチャぶりをしてくる上司は意外と多いですよね。このような場合に大切となってくるのがイシューの設定です。

よくあるイシューの設定として、商品のブランドイメージをどのようにリニューアルしていくか、そのために若者をターゲットとしていたところを、高齢者にも買ってもらえるようなブランドにリニューアルしてみようといった考えがあります。ところがこれが間違っている可能性があります。

例えば、仮に高齢者向けの広告を用意して売り上げが上がったとしても、そもそもこの商品の売り上げが良くなかった原因が何なのか追及していない場合があるからです。

スタートライン(イシュー)の設定

このkanariyaウォーターの売り上げが良くなかった原因が何なのか解明していない場合、仮に売り上げが一時的に上がったとしても根本的な解決にはなりません。

仮にこの商品が高齢者層に人気が上がったことで売り上げが上昇するのでしょうか、同種の飲料における日本国内での市場の規模はどうなのでしょうか。

こういった要因をきちんと検討したうえで上記のイシューを設定していればいいのですが、上司がこの商品の売り上げが壊滅的だと言っていたとしても、これが自社に限らず同業他社も含めた市場全体として売り上げが衰退していれば、どのようなテコ入れをしたとしても売り上げが回復することはありません。

ここで最も重要なことは、上司が売り上げ回復のためにブランドを刷新してほしいと依頼してきたとしても、売れなくなっている本当の原因を突き止め、必要であれば別のイシューを設定する必要があります。これにより仕事のパフォーマンスが一気に上がるのです。

例えば、高齢者層をターゲットとしていたものを若年者向けの購買意欲を高めてみるのはどうだろうか、日本国内だけで販売していたものを諸外国でも販売してみたらどうだろうかなど、無限のイシューを設定することが可能です。

このように、最初のイシューの設定の仕方によって全く違うものになります。ですのでどんなに頑張って頑張って答えを出せて上司が納得したとしても全く意味のないことになってしまいます。

的確なイシューを設定できたのであれば、仮に答えの半分しか達成できていたなかったとしても仕事としては前に進んだことになります。すなわち、会社に貢献したと言えるのです。

ダメなイシュー

さて、上記の例を踏まえてイシューの設定に際してダメなパターンを二つ紹介します。

方向性が曖昧

ここで言う方向性が曖昧とは、白か黒か判断していないこと、仮説がないことがあげられます。

今回の設定で言えば、今後のkanariyaウォーターはどうなっていくのだろうかや今後のkanariyaウォーターをどうしていこうかなど、方向性が定まっていない目標はダメなイシューの典型例といえます。これは仮説や判断がないため、最初の準備段階がものすごく大変になってしまうからです。

仮説が立っているのであればその部分を徹底的に調査・分析をすればいいのですが、この時点で仮説がないと関連する情報を全て調べれなければならないため莫大な時間とコストがかかります。

仮にこの曖昧なイシューに答えが出たとしても、具体的なことが何も見つかっていないためその後の行動につながりません。すなわち行動につながらないと仕事が前に進みません。

常識的すぎる

常識というのは基本的にハズレにくいですし、世間的には素晴らしいものだと思いますが、イシューの設定としては誤りです。

それは、常識的なイシューに答えを導き出せたとしてもその後の行動に変化が生まれないからです。

設定の例で言えば、「kanariyaウォーターのブランドは上げていくべきなのだろうか」のようなイシューの設定です。

ここまで極端な提案をしてくる上司もこれに対して時間をかけて回答をする部下もなかなかいないでしょうが、このイシューのダメなところは答えが「YES」と決まっているからです。新しい商品を最初から企画するよりも、既存のブランド力は上げた方がいいに決まっています。

このイシューでは当たり前な答えしか出ないようになっています。先ほど答えが出ないイシューは無意味と言いましたが、このようなごく当たり前の答えが出たとしても、今後の部署の方針や現場での仕事に全く変化が生まれません。なぜならブランド力はあった方がいいと皆が思っていたわけですし、実際に上げようとしていたからです。それでも売り上げが停滞しているから今回のT部長の発言があったわけです。

このように、ダメイシューを設定してしまうと、体力を消耗する割に仕事が何も前進せず、何も変化していないという残念な結果に終わってしまいます。あんなに時間をかけたのに・・・

よいイシューの3つの条件

では良いイシューとは何なのかというと、これらの逆で方向性が明確(行動につながるもの)非常識なものであることです。私が感じた良いイシューは下記の3点になります。

本質的な選択である

その問題を解くことができるのであれば(仮説)、とても有益な成果につながるかということです。

先の例で言えば、「若年者層の消費者に買ってもらう」というイシューであれば、方向性がが明確であり本質的な選択であると言えます。

深い仮説があること

常識とは異なり賛否両論にはなってしまうかもしれないけれど、「やってみないとわからない」という問題であることです。

例えば、kanariyaウォーターが高齢者向けのパッケージとして販売されていたり、年齢を重ねるにつれて不足しがちな体にいい成分が入っているなどを謳い文句にしていた場合、若年層に流行りのアニメや芸能人を起用することで、目に留まりやすくなったり購入することに恥ずかしさがなくなったりと若年者層の購買へのハードルが下がり売り上げが伸びる可能性があります。

誰もが考えたらわかるようなこと、誰もが思いつくことに価値はなく、非常識だから価値があるといえます。

答えが出せること

最後にイシューに答えが出せることです。有益な成果を上げるための必須条件です。

せっかく考えたイシューが実際のところ実現できるものでなければ、机上の空論、夢物語で終わってしまいます。仕事ですから成果が出てナンボの世界です。

私自身、メーカー勤務ではありませんし、特別な調査をしているわけではないのでこのイシューが正しいかどうかはわかりませんが、仮にこの仮説が合っていて適切な答えが出せたのであれば、今後の会社の方針や現場の仕事は変化していくはずです。

「テーマとなる問い」×「答えを用意する力」によって「仕事の成果」は決まると思っています。

イシュー(取り組むべくこと)を見つける方法と見つけた後

先に結論を申し上げますと、情報収集をすることということです。著者は一次情報に触れることが大切であると言っています。

一次情報というのは、誰にも加工されていない生の情報、本人が直接的に体験から得た情報を指します。人から教えてもらった方法より実際に一次情報に触れて自分がが感じたことが需要。百聞は一見に如かずという言葉があるように、人から情報をもらうより一度実際に自分の目で見る方が良く理解できるといいます。

例えば上記の設定の場合、平社員のkanariyaさんは若年者の購買力を上げるために消費者の意見を直接調査するといったことが考えられます。またkanariyaウォーターを扱っている販売店の声もいいでしょう。

なぜ一次情報が大切なのかというと、適切な仮説を立てることができなくなるからです。加工された二次情報や三次情報は、その者の思惑や常識によって影響されてしまい偏見が生じてしまうからです。

例えば、インターネットニュースなどは一次情報どころか三次、四次情報になっていることが多く、極端なコンテンツが含まれている可能性もあり正確ではありません。これを基にイシューを設定してしまうと仕事のパフォーマンスを上げることができなくなってしまいます。

情報収集の注意点

著者は情報収集の大切さを述べていますが、過度に集めすぎるのは良くないとも言っています。情報を集めすぎると脳内が情報だらけになってしまい、逆に知恵が出てこなくなってしまうので情報は8割くらいでいい、それ以上集めてもアウトプットが遅くなったり動くが遅くなると指摘しています。取り組むべきことについてきちんとした肌感覚を持つことが重要です。

イシューは言葉にする

必ずしも必須ではないですが、イシューは紙や電子ファイルに言葉として表現することが効果的と言えます。というのもイシューを設定したものの答えを出していく過程で、イシューが何だったのか見失うことがあるからです。非常識な答えを導くことをするわけですから、ときどき振り返り、イシューを徹底して意識的に覚えておくようにすることが大切です。イシューが脳にインプットされてこそ今必要なものが見えてくるというのです。

本書では「人間は言葉にしない限り概念をまとめることができない。」と表現しています。

まとめ

最後に簡単にまとめます。

イシューに答えを出すには良い仮説を立てることが大切であり、今までのやり方と今から自分がすることは何が違うのかと自分に問いかけてみること。

ビジネスの場合、他の人と違ういい部分がなければ選ばれません。他の人と違う部分はどこかをしっかり考えておくことが重要でだれでもすぐにできるやり方(常識的すぎるイシュー)はNG。

取り組むべきことを見つけるときに意識しておくべきなのは、それを達成したら大きな成果が得られることだけに絞る。

この作業は本当に意味があるのか、今やるべきことなのかと感じたら一度立ち止まる。上司が言ったことであっても本当に今取り組むべきことではない可能性もある。

イシューを意識することを身に付けるとより短い時間でより成果の出る仕事ができる。

私見

この本を読んで「ドリルの穴」理論が思い浮かびました。これはドリルを買いに来た人が欲しいのは、ドリルではなく『穴』である」とするセオドア・レビット博士によるマーケティング論の中のひとつです。

顧客が言っていることは必ずしも求めているものとは同じではない、それを気づかせてあげるのが正しい方法なのだという考え方です。

ただ、仮にイシューの設定が間違えているとわかっていても、上司のような権限がある立場の人が使える考え方なのではないか、権限のない末端な人はそんなことを考えても意味ないし、上からも評価されないから言われたことだけやればいいよと思ってしまいますよね。怒られるのも面倒ですし、変に発言をするとカドが立ってしまい職場で浮いてしまうことは容易に想像できます。

このような反論があるとすればその通りです。末端のメンバーに経営権はありませんし、まず言われたことを行うのは確かに合っていると思います。

ただ、この考え方が市場の価値を下げているとも言えます。上司に言われたことをやりつつ価値ある提案をするべきであると思います。上司の表現が下手な場合もあるでしょうが、イシューを全く理解していないまま仕事をするより、その上司が本当に言いたいこと、つまりイシューを理解した上で仕事をするのでは全く違った成果物が出来上がると思います。

日本ではまだまだとにかく頑張ることが美徳であるとされている風潮は感じます。ただそれでは結果的に精神が病んでしまいます。何に取り組むのか冷静に考えることが重要で、ただがむしゃらに頑張るとか寝る間も惜しんで働くという根性に負けず、人間であれば頭を使い、まず動くより何に取り組むのはを考えてからが実行することが自分次便のためにもなります。

「犬の道」を通らずに爆発的に良い成果を上げて、心も体も健康な状態で働きませんか。

参考

安宅和人(著)イシューからはじめよ──知的生産の「シンプルな本質」

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