【経済】ここ最近のちょっと変わった円安傾向について

お金・金融

2022年5月1日現在、円相場が1ドル130円代に値下がりしました。130円代というのは2002年4月以来約20年ぶりの水準になるそうです。

さて、昨今急激なスピードで円安が進行していますがこの原因は何なのでしょうか。

スポンサーリンク

昨今の円安の原因

アメリカの利上げ

2022年3月22日、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)による利上げのペースが速まるとのことから円を売ってドルを買う動きが強まりました。※1

コロナ禍で2年間続けてきたゼロ金利政策を解除し、金融の引き締めへと転換することになります。アメリカは景気の回復に伴って雇用状況などが改善する一方、消費者物価の上昇率が40年ぶりの高い水準になっていて、FRBはこのインフレを抑え込むため景気の下支えのための緩和策から金融引き締めへと政策を転換することになります。

FRBのパウエル議長は、ゼロ金利政策を解除して利上げを決めた理由について「サプライチェーンの混乱は国内外の新型コロナの感染の波によって悪化し、幅広い分野で想定以上に長く大きく物価を押し上げている。高いインフレを定着させないよう取り組む」と述べ、長期化するインフレを抑え込む狙いを強調しました。そして、1回当たり0.25%として今回を含めて年内に合わせて7回と、極めて速いペースで利上げを進める見通しが示されました。

この利上げにより

この利上げにより、円を保有している投資家などは低い金利しかつかない円よりも高い金利がつくドルの方が良いと考えます。この流れで円を売ってドル買いが進行しているというワケです。

また、現状では0.25%×7回としていますが、これはまだ暫定的なもので利上げのペースが早まれば円安の進行は加速するでしょうし、7回以上利上げをする可能性も否定できません。

日本の金利政策は?

ではこのアメリカの動きを見た上で日本銀行の対応はというと、現状では慎重論を貫いています。

米国が利上げをするのであれば、日本も利上げをすれば金利の差はそこまで広がりませんよね。日本で円安が進んでいる背景には日銀が大規模な金融緩和政策を維持する一方で、アメリカの利上げのペースが速まるほど日米間の金利差が一段と拡大すると懸念されています。

何かあったときはドルを保有する傾向があるため

現在の世界情勢が、世界の基軸通貨であるドルが購入されやすい状況であるとういうことです。あまり詳しくは書きませんが、昨今のような「有事」が発生した場合、今後為替がどのように変動していくかわからないため、流通性や信憑性の高いドルを保有しておくことが安全という傾向になります。これを有事のドル買いと言ったりもします。

実質金利と名目金利

米ドルよりも金利が高い通貨はもちろんあります。ただ多くの人がそのような通貨を保有せずドル買いをするには理由があります。

それはインフレ率にあります。仮に15%の通貨を購入して15%の金利を受け取ったところで物価が15%上がったら実質的には意味がありません。例えば今1万円預金して1年後に1万1500円になったとしても、1年後に1万円の物が1万1500円になっていては意味がないということです。

このインフレ率の上昇が激しすぎる通貨は物価が上がるペースが速いので、どれだけ金利が高くてもインフレ率の影響で買われにくいというワケです。

このような場合、長期的な観点から言えば名目金利ではなく実質金利を重視することが大切です。

以前FP試験対策の金融資産運用で「実質金利=名目金利-インフレ率」だということについて触れました。

テキスト不要【FP3級】第3章.金融資産運用

名目金利というのは文字通り見かけ上の金利のことですのでインフレ率を考慮していないものです。先ほど触れたアメリカが利上げするというのはまさに名目金利のことです。

名目金利が2.0%、インフレ率が1.3%であれば実質金利は2.0%-1.3%=0.7%ということになります。仮に1万円預入れをした場合、200円は利息として発生するけれども、物価が130円分上昇しているから実質プラス70円ということになります。為替レートを考える上で注意するべきポイントはまさに実質金利が高い金利が買われて、実質金利が低い通貨は売られるという傾向にあります。円預金よりもドル預金の方が実質的に有利なのはこのためです。よって円を売ってドルを買う(=円安)になります。

では今の状況は?

日米実質短期金利差と円/ドルレート※2を見ると、実質金利差はマイナス6ポイントになっており、日本の方が実質金利が6ポイント高いということになります。

であるにもかかわらずドル買いが行われている結果、今までの傾向とは異なり円安になっているということです。

どうしてこうなるのでしょうか。

考えられるのはひとつとして実質金利差が実態を表していないからだと考えられます。上記の「実質金利=名目金利-インフレ率」の考え方を思い出していただきたいと思います。

利上げ(名目金利の上昇)がそこまでインフレ率に影響しない可能性が考えられます。また、日本の物価が上がり続けていることもあるでしょう。

今現在、ドル円の為替レートが大きく動いている本当の要因は、多くの投資家が、米国の名目金利の上昇、米国のインフレ率の低下、日本のインフレ率の上昇を見越していることが考えられるということです。(日本が利上げしないと予想しているから。)

円安のメリットとデメリット

ではこのまま円安が続いた場合、私たちの生活はどうなるのでしょうか。

メリット

輸出が有利になる

学校で習ったことがある方も多いと思いますが、円安は輸出有利の傾向になります。

同じ商品を1個100ドルで販売した場合、1ドル80円(円高)のとき売上は8,000円なのに対し、1ドル120円(円安)のときは12,000円となり、円安のときの方が円ベースでの売上・利益は大きくなります。

日本国内で生産されたモノは円安のうちに輸出するのが望ましいとされています。

海外からの観光客の増加

上記の例をそのまま引用しますが、100ドルを持って来日した外国人観光客が8,000円分しかお買い物できないのと12,000円分のお買い物ができるのではだいぶ変わりますよね。

よって、観光業をはじめ、サービス業、飲食業が潤う可能性が高くなります。

外貨建ての収入増加

円安の今現在、ドル建ての株式や債券、ファンドなどを持っている人は、配当金、利息。時価が増えていい思いをしているのではないでしょうか。

デメリット

一方、デメリットは以下の通りとなります。基本はメリットの裏返しと言えます。

輸入が不利になる

円安で一番身近に感じることはおそらくこれではないでしょうか。日本は食料品をはじめ、生活に必要なものの多くを海外からの輸入で賄っています。小麦の価格が高騰していることで、パンの値段が上がったり、原油価格の高騰でガソリンや値上がりし、付随して運送費が上がり、物価が上がるなどの連鎖が生じます。

私たちの生活コストが上がるので、今までと同じ生活水準であってもいつの間にか支出が増えているというのは円安の影響である可能性が高いといえます。

海外へのコストが増加

現在は移動制限も緩和されており、ゴールデンウィークに海外に行く方も多いと思いますが、きっととってもお金持ちなのでしょう。しばらくここまで円安になっていなかったので、海外に行った際に思いのほか金額が高いことに気が付くのではないでしょうか。

海外資産の購入コストの増加

100円で1株買うことができたものが130円支払わないと1株買えないことになります。これは資産形成をしていくにはとても不利に働きます。

個人的見解

よく円高よりも円安の方が景気が上向いている証拠だと聞いたものですが、私個人の意見としては現在の円安はデメリットの方が大きいように感じます。やはり、目の前のものが明らかに価格が上がっているのを見るとそう感じざるを得ません。また、値上げはしなくともサイズが小さくなっている、量が減っているという事実を見るのはなんだか悲しくなります。

また少子高齢化に伴い、生産年齢人口が減り、年金の受給額か減っていく見込みがなされているなかで個人の資産形成に影響が出るのもいただけません。2050年問題が大きく取り沙汰されているなかでこれから老後2,000万円準備していくのは困難になります。

普段あまり為替レートを意識していない人でも、為替レートが私たちの日々の生活水準や収入に影響していることは意識していきたいですね。

参考

※1:米FRB 0.25%の利上げ決定 インフレ抑制へ ゼロ金利解除
※2:「良い円安」と「悪い円安」

コメント

タイトルとURLをコピーしました