【BIGBOSS】監督としての新庄剛志のマネジメント力は?【コーチング】

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プロ野球日本ハムファイターズ球団は、2021年10月26日、同シーズンで限りで退任することになった栗山英樹監督の後任として新庄剛志氏が新たに監督としてに就任したと各スポーツ紙にて報じられました。

新庄氏といえばプロ野球に詳しくない人でも名前くらいは聞いたことがあるでしょう。

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新庄剛志と言う男

新庄氏は1989年ドラフト会議にて阪神タイガースから5位で指名を受けました。高校時代は甲子園にも出場していませんし、ドラフト5位というのは決して高い評価ではありません。現役時代は、外野手登録ながら投手に挑戦したり、突然の引退宣言をしたり、敬遠球に手を出しサヨナラヒットを打ったり、予想外のメジャーリーグに挑戦など何かと話題に尽きない人です。(ちなみに日本人の野手として初めてメジャーリーグの球団に在籍することとなったのはイチロー氏と同年ですが新庄氏が初めてとなります。)

その後3年間のメジャーリーグ人生を経た後、2004年に日本球界へ復帰を表明し日本ハムファイターズに入団します。入団後も注目は集まり、同年のオールスターゲーム出場選手として選ばれると、第2戦目でオールスター史上初となるホームスチールを決めます。(ホームスチールというのはキャッチャーのいる本塁に対して盗塁することです。)
またとある試合で9回裏に打席に立った新庄氏はホームランを打つも、前走者を追い越して幻のサヨナラ満塁ホームランとなる、スパイダーマンの変装をしてパフォーマンスをするなど、日本ハムでも人気を博しました。

2006年、同シーズン限りでの引退を表明し、10月26日が最終出場となりました。チームはパ・リーグでの優勝を決めており、日本シリーズにおいてセ・リーグ覇者の中日ドラゴンズを4勝1敗で日本一に導きました。日本ハムでの在籍期間は3年でしたが、入団会見で掲げていた「札幌ドーム満員」と「チームの日本一」の両方を実現しました。

現役引退後はタレントとして活動する一方で、会社を設立したり、バリ島へ移住するなどしていましたが、2019年11月13日、自身のInstagramにて現役復帰を目指す意向を示し約1年間トレーニングに打ち込みます。そして翌2020年12月7日に12球団合同トライアウトに出場しました。獲得する球団はありませんでしたが、その間独立リーグからのオファーがあったとのことです。(本人曰く断ったようですが。)

そして冒頭の監督就任へとつながります。2006年の現役引退から16年ぶりに日本球界への復帰を果たしました。

監督としての新庄剛志はどうなる?

現役時代からファンサービスには積極的であり今まで野球に興味がなかった層からの支持も得ていたようです。また、新庄氏のファンサービスなくして日本ハムの北海道での成功はなかったかもしれないという声も上がるほどカリスマ性には十分に備えていると言えるでしょう。

配置の変更

プロ野球では2月から各球団がキャンプインをし、練習試合やオープン戦などの対外試合を経て春の開幕を迎えます。キャンプ中はチームを2組に分けた紅白戦を行ったりもします。
ここで新庄氏は各選手の本来の守備位置や打順を大幅に入れかえたスターティングメンバーを組みました。本来守備位置がサードの選手をレフト、外野手の選手をサード、足の速い選手センターの選手を4番ショート、セカンドやショートがメインの選手を5番センター、レフトの選手をファーストと大胆なシャッフル起用を行います。(ガラポン抽選とも言うようです。)
そして2月8日、沖縄県宜野座で対外試合初采配を振るいました。相手は現役生活をスタートした阪神タイガース。ここでもシャッフル起用を敢行します。不慣れな打順、守備位置での起用にもかかわらず結果は6-2で日本ハムの勝利となりました。

ちなみに試合後の報道によると、各選手はスターティングメンバーを当日の場内アナウンスで知ったとのことです。新庄氏本人は、「毎日夜間練習をしている選手を選んで決めた」と言っていましたが、本音は「常に緊張感を持ってよっしゃ行くぞと思ってほしい」との思いを吐露しました。選手からは楽しかったと言われたようで、「プロ野球選手はどこのポジションだろうが打順だろうがいいプレーをしたいと思うものなのよ」と発言しています。

四球を出すくらいなら場外ホームランを

また、投手陣に対しても四球(フォアボール)を与えるくらいなら場外ホームランを打たれてもいいと言っています。2月13日の対楽天イーグルス戦では6点を失い試合には敗れるものの、与四球は1つもありませんでした。打たれることを避けていては課題は見つからないということから上記のような指示をしていたようです。
また、紅白戦を1死満塁の状況からスタートさせることを敢行。元メジャーリーガーの上原浩治氏からは「投手としてはたまったもんじゃないですよね。」と言われます。しかし、ここでもシャッフル起用の意図と同様に、常に緊張感をもって普段から慣れておくことでゲームを優位に進めることが狙いのように思われます。

選手の反応は?

このような通常とは違う練習の仕方について選手はどのように感じているのでしょうか。
とある外野手は19日の千葉ロッテマリーンズとの練習前の取材で、「慣れちゃっていますね。それが当たり前になりつつある。今日はどんな風に発表されるのかなって。」と少し楽んでいるような発言もあります。
新庄氏の考えでは、「野球を始めたときと同じ気持ちで」と常日頃から選手たちに言っているようです。このような一風変わった采配をすることで、意識しなくてもそんな気持ちになってしまうようで、少年時代のような日々を送れているとのことです。
また2月20日での練習ではサードの守備に就くシャッフルもあった同選手は、「プロに入って決まったポジションをやるのが普通になっていた。それが今までと違った形で行われているので見ているみなさんと同じようない気持ちだと思います。僕らも新鮮だし、真新しい気持ちで守れているのかなと思う。」と取材陣に対してこう応じています。

プロ野球以外のビジネスでも応用できるのか

新庄氏はチーム全体を指揮監督する立場でありながら、個々の選手と向き合っているように見えます。よく対人関係について書かれているビジネス本では、「傾聴」、すなわちまずは聴くことを重要視しているといいます。これは上司や部下の関係でも同じことが言えます。

まず相手に対して何か言いたいことがあった場合、先に相手の話を聞いてあげると相手との間に信頼性が生まれるといいます。そうすることで相手もこちらの話を聞いて実践してもらいやすくなります。

播磨早苗氏の著書、「目からウロコのコーチング なぜ、あの人には部下がついてくるのか? (PHP文庫)」では次のような記述があります。

「管理職は自分の業務に部下を利用することではありません。勇気を持って、自分より有能な人材を育成することなのです。」

また、同書では答えは本人の中にあって、その答えに気づかせることが重要で、相手自身が目標に向かって自ら答えを導き出すためのサポートに徹することがコーチとして重要な役割だとも説いています。新庄氏は監督と言う立場でありながら、選手の目線になってやりとりしている場面が多く見受けられます。

阪神タイガース時代の監督である、故野村克也氏は生前「もう少し、人間としての考え方を学んだ方がいい」、「お前は素質も抜群だし、スターの雰囲気を持っているけど、もう少し努力してもよかったな」とを述べています。一方で、野村氏は自身の哲学である「真面目な優等生は大成せず、不真面目な優等生は大成する」という思いがあったのか、新庄氏の行く末を見守っていました。一見するとちゃらんぽらんに見える新庄氏ですが、練習に対する真摯な態度を野村氏は高く評価していました。

私の個人的な印象では、新庄氏は素質は十分ありながら、一方で努力家の人間だとも思っています。人前ではスターを演じつつも誰もいないところではひたすらバットを振っている、そんな印象を受けます。それは新庄氏が監督に就任してから選手との関わり合いを見ていてさらに感じています。その一つのエピソードとして、2月16日、沖縄の北谷で行われた中日ドラゴンズとの練習試合の前の打撃練習中、今シーズンからともに監督に就任した立浪監督の元へ向かい、日本ハムのスラッガー清宮幸太郎選手の打撃についてアドバイスをお願いしていました。普通であれば他球団選手のアドバイスをすることはありませんが、ここでも新庄節といいますか、清宮選手の成長のためにひと肌脱いだ印象を受けます。一昔前の野球界であれば否定的な意見もあったでしょう。

また、2021年12月11日に行われた「野村克也さんをしのぶ会」に参列した新庄氏は「新庄剛志らしく、野村さんに教えてもらったことをやりつつ、新しい監督像を作りたい。野村さんも監督像を作られた方なので、野村さんとはまた違う形だけど、いいチームにして、いいシーズンでしたと報告したい」と発言しています。

ポジションや打順の変更は、一般の企業でいうとジョブローテーションのような運用に近いです。ただ、一度採用した人の職種を本人の意向や適正などを見定めた上で変更することはかなり難しいですし、本人が辞めてしまっては意味がありません。人材育成や人事マネジメントはどの分野においても難解だと言えます。

今シーズンの日本ハムファイターズという「組織」がどのように機能するのか、監督に就任してからの選手に対するマネジメントの面はもちろんのこと、「新しい監督像」が作るチームがどのような成績を残すのか、一野球ファンとしても楽しみにしています。

それでは本日もご覧いただきましてありがとうございました。

参考文献:目からウロコのコーチング―なぜ、あの人には部下がついてくるのか? (播磨早苗著)

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